エコアートプロジェクト  「森のさいばん」 脚 本

 この脚本は、絵本「森のさいばん」の原作者である津田明子さんが、今回の演劇のために作成されたものです。

 作者の意向により、この脚本を広く活用いただきたく、ここに掲載いたしました。
 
 なお、ご利用にあたっては必ず  com-com@mx.biwa.or.jp  までご連絡下さい。
 
場 面 設 定

1.森は、アミカの森。アミカホールすべてを森と想定する。
架空の森ですが、朽木や、湖北の山々になかの森のように親しみのある森。
また、ぶなやクヌギ、白樺などの木が美しい森。初夏の軽井沢のような明るい新緑の眩しい広々とした森をイメージしてほしい。

2.芝居は、アミカホールの前の広場からすでに始まっている。
ビワコ大なまず、もろこ以外の出演者は、三々五々集まってきたお客さんと混ざりながら、アミカの森へ集合する動物と確認し合う。

3.ロビーでブラスバンド演奏。ブラスバンドを先頭にホール内へ移動。ロビーもホール内もすべて森である。

4.舞台で演奏をしながら、客席とやり取り。この時、みんなで演奏するなどして、森に集まってきた参加者としての共通認識を持つ。
(3,4に関しては、確認がとれていないので変更もある。)

5.プロローグは、ビワコ大なまず、もろこが後ろ中央ドアから登場し、通路を移動しながら芝居を進める。


 キャラクター紹介


1 ビワコ大なまず

30〜40代 ♂ (演じるのは、男性)
琵琶湖の主といわれるぐらいなので、親分肌で親切。情にもろいところがあり、素朴。

2 もろこ

若い。♂(若い人、男女どちらでも良い。)
ビワコ大なまずの子分。漫才で言えば、ボケ役。 劇中、ウサギとからすと一緒に舞台回しをする重要な役。
性格は、温厚でのんびり屋。とぼけた事を言っては笑われる。

3 うさぎ

若い。♂(若い人または子ども。男女どちらでも良い。)
とぼけた性格で、かわいらしく素直。からす、もろこと一緒に舞台回しをする。

4 からす

若い。♂(演じるのは女性か、若い人または子ども)
知的で、オシャレで都会的。鋭い指摘をするが、いやみが無く、親しみが持てる。うさぎ、もろことともに舞台回しをする。

5 ふくろう

熟年層。♂(演じるのは、大人男性)
温厚でゆったりしているが、結構いいかげんなところがある。
親しみの持てるおじさんタイプ。

6 ねこ(黒猫)

おとな。♀(演じるのは、女性)
気ままで、言いたい事を言うが、鋭い。女性問題の視点から、新たに加えた。

7 いぬ&人間

おとな。♂(演じるのは大人男性。)
犬の性格は、少し、おっちょこちょいなところがある。人間が大好きで、人間の肩を持つ。劇中、人間に変装する。
人間の時は、いばって自信満々に振る舞うが、それも人間を信頼している心から出ている。

8 小犬&子ども

こども。♂(演じるのは、子どもか、中高生。)
おとなしく、じっと考えている。父犬が、猫にバカにされた時は、うなったりする。
人間の子どもになる大事な役だが、大人が流ちょうに演じてほしくないところだ。


9 むし(てんとうむし)

おとな。(演じるのは、男女どちらでも良い。小さい子どもが出演するとしたら、劇中に、ぞろぞろと出てきても良い。)
素朴な感じで、ぼそぼそと話す。おとなしい。ちょっと、ローカルな雰囲気を出して。

10 ちょう1

おとな。♀ピアノを演奏してほしい。

11 ちょう2

子ども又は、中高生で女性。
ピアノに合わせて、踊る。

12 えび

おとな。♂(男女どちらが演じてもよい。)
はにかみ屋で、内気。とぼけた感じもする。

13 木の精霊

おとな。♀(男女どちらが演じてもよい。)
よく通るどっしりした声でゆっくり語る。何百年も生きているので、風格がある。
劇に重みを持たせる存在。

14 トナカイ

おとな。♀(演じるのは女性)
やさしいお母さんタイプ。あまり低音で語るとコワイので、高温でやさしく話す感じ。

15 ゴリラ

おとな。♂(演じるのは男性)
大らかで、のんびりしている。おどおどと話す。ゴリラは、絶滅の危機にある動物なので、猛獣ではないがライオンなどといっしょのグループで登場させた。本来やさしい動物なので、あまり勇ましく振る舞わない。

16 とら

おとな。♂(演じるのは男性)
肉食獣独特の迫力のある、声。どっしりとして貫禄がある。
人間で言うと、大会社の重役さんタイプかな。

17 ライオン

おとな。♂(演じるのは男性)
とら同様、貫禄のあるムード。


18 きつね

おとな。♂(演じるのは、女性か子ども)
インテリで、エリート社員タイプ。少し神経質そうにしゃべる。
重みの無い語り口の方が嫌味が無いと思う。

19 うなぎ

おとな。♂(男女どちらが演じてもよい。)
ひょうきんで、とぼけた性格。江戸っ子っぽいしゃべり方で、時代劇に出てくる、かごかきのような感じ。

20 ナレーター

女の子。森の妖精。


場 面 (1)  
                    <プロローグ>

             客席のドアから、ビワコ大なまず、もろこ、登場

もろこ:兄貴〜、ずい分と歩いたですねー。わしもォ、しんどうてかないませんわ。
     この辺で一 息 入れまへんか?

び わ:おまえなあ、腹ん中に時計でも隠してんのんとちゃうか?10分おきにおんなじ事いう とるがな。

もろこ:そおやったかいなー。なんかこぉ、甘〜いもんがほしいてほしいて。(独り言のようにつぶやく)

び わ:あかん。こいつにつきおおてられんわ。さっき、うばがもち17個も食うといて。

び わ:おまえにはな〜、デリカシ言うもんがないんか?

もろこ:なんでんねんそのお菓子?

び わ:あほ。デリカシ言うのんは、つまり感じやすい乙女心みたいなやっちゃ。

もろこ:は〜は〜、兄貴の言いたいのんは、デリカシイのことやな。

び わ:そやそのそれや。…。いいか、わしの心はこの旅の間、ず〜っと、冬の琵琶湖の様にブルーやった。   生まれてこのかた、離れた事もなかった琵琶湖から上がって、はるばる行ったのんが九州は有明海。   この目でみたんは、なんとも哀れな情景やった。
   海水をせき止められて、パリパリに干上がってもおた干潟。その、白―なった砂のあちこちに、
   干からびてカリカリになった、かにやら貝やらの死骸。

もろこ:そやったな〜。何でも、台風や洪水から人間を守るための防波堤やとかいうて、海に大きい壁をこさ  えて、水、止めてしまいよった。ほんま残酷なことしよんで。海水せき止めて生殺しやなんて。地獄やで。

び わ:助けたろ。思て一生懸命水まいてくれはった人間もおったそうやけど、そらあかんわな。
    焼け石に水やで。

もろこ:かわいそうに、むつごろおはんのお葬式かて、何やこ〜、ぱあっとせんかったなあ。

び わ:あほ、結婚式とちゃうねんど。不謹慎なやっちゃ。

もろこ:へ〜、すんまへん。…そらそうとなんやらもろてきたけど、ちょっとあけてみまひょか。

び わ:勝手にせい。

もろこ:あ、なんや。塩ですやん。やっぱりむつごろうはん、海水が恋しかったんやなあ。

び わ:それは御清めや!体に振り掛けるやっちゃ。

もろこ:は〜、なるほどこんな具合でっか。

(びわこおおなまずにふりかけようとする。)

び わ:こ、こら、塩づけにする気か。わしは淡水魚じゃ!

もろこ:すっ、すんまへ〜ん!(舞台へ逃げる。)

び わ:そらそうと、アミカの森て、なかなかいいとこやのう。

もろこ:きれいでんな〜。いやほんま。(舞台のセットを誉める。)

び わ:こらこら、あんまりさわったらおこられんで。

もろこ:へ〜。すんまへん。あ、兄貴。ちょっと見てみなはれな。何や、にぎやかな森でっせ。

び わ:ほ、ほんまや。こ、こんにちは。…。ごきげんさん。(客席とやり取り。)

もろこ:今日は、またなんでんねん。町内会の集まりかなんかでっか?(客席と。)

び わ:ァ、ほれ、見てみ。むこでもなんかしゃべってんで。


場 面 (2)

犬 :だから〜。さっきも言った様にですね、人間は、そんなに悪い生き物じゃないんです 。

小 犬:(尊敬のまなざしで父を見る。)

きつねj:いえ。いいか悪いかではないんですよ。

きつねy:そ。問題は、彼らが我々にとって、非常に迷惑な存在だ。ということなのです。

からすk:そうは言っても、一緒にやっていくしかないんだからさ。カ〜。

からすh:ま、適当に仲良くやれば?

虫 :ほか弁の残りは、うまかろうさ。

うさぎ :ほか弁って、あの緑色の、食べられないギザギザの葉っぱの入ったお弁当の事?

犬 :そ、そうそう!そうなんだよね〜。あれ、僕もさ、前に食べそうになっちゃってさ…。
        (嬉しそうに話してる途中でからすがしゃべり出す。)

からすh:そりゃ、人間はホントうまいもんを食べてるよ。えびだろ、うなぎだろ、キャビアだろ〜。クア〜なんだかおなかすいてきちゃった。

ね こ:ほお〜んとリッチよね、世界中の御馳走を食べてるって話よ。グルメブームっていうんだってさ。

からすk:キャットフードだってグルメじゃないの〜。カッカッカッ!

ふくろう:それに比べて、最近のわしの食事ときたら。

きつねy:まったくですよ。森がどんどん無くなっていくお蔭で、私たちも困っているんですよ。

きつねj:りすや、テンや小さな生き物もみんなどこかへ行ってしまいましたからねぇ。

うさぎ :それって、それって、…。(ナイフとフォークをもって食べ物を意味する。)

からすk:それがさ、捨てられるったって,ホント、まだまだ食べられるものばかりなんだよ。

からすh:ソッ。新聞にものってたけどさ、世界中には栄養失調で死んじゃう子供たちがいっぱいいるって言うのにね。

きつねj:えぇ〜?

きつねy:からすが、新聞? きつねj:ですかぁ?

からすh:ごみ箱の、ハンバーガーと新聞で、からすの一日は始まる。

からすk:常識さぁ〜!

うさぎ :すごいね。漢字なんかもやっぱり、飛ばさずに読んでる?

ふくろう:都会もんは、いいのう。わしら田舎育ちのもんは、住みにくくっていかんよ…。

ね こ:にゃ〜ん。全く、みんなどうしたのよ。ここに集まったのは愚痴を言うためじゃないでしょう。何とかしなきゃ、私たち生き物に未来はないって、あんたが呼び出したん じゃない。(ふくろうをつつく。)

ふくろう:いや、まあそうなんじゃが、とりあえず状況分析をしてじゃのう。それから、かかる事態にどう対処すべきかをじゃなあ、…。

ね こ:にゃん!まったくもう、回りくどい事いってないで、はっきりしなよ。

犬 :ともかく、人間に僕たちの気持ちを伝えよう。誠意をもって訴えれば、みんないい人ばっかりだよ。
      (ちんちんのポーズ)

ね こ:ち、ちょっと、…。しっぽ振りながらしゃべんないでよ。だからあんたたちは、人間になめられんのよ。

犬 :な、何だと〜!(勝手がってにしゃべる。)

           *びわこおおなまず・もろこが、話の輪に加わる。

び わ:いや、お話し中すんませんな。さっきから、聞いてたんやが、ほんま同感ですわ。

        (みんな振り向く。)

ね こ:にゃによ、あんた。

うさぎ :なんか顔、恐い…。

び わ:いや、わしらは、いま旅の途中でしてな、有明海のむつごろおはんの葬式行ってきょりましたんや。
    琵琶湖にすむ、おおなまずです。

もろこ :へ〜、弟分のもろこでおま。

び わ:ほんま、このままでは、地球の未来はお先真っ暗ですわ。何とか人間にわしらの気持ちを伝えたいもんですなあ。

からすk:そうなんだ。それで今日こうして集まったんだけどさ。カ〜。

からすh:なかなか話が進まないんだよ。

きつねy:人間に気持ちを伝えるなんて、おとぎばなしや、イソップじゃあるまいし…。

きつねj:そもそも不可能な事なんでしょうな〜。

もろこ :へ〜、そうでんな〜。芝居みたいにはいきまへんなあ。

ね こ:それよ!それそれ、芝居ってのはどう?

からすh:そうか!芝居か〜。

からすk:それなら、今日集まったみんなの気持ちも、伝える事が出来るね。か〜。

きつねy:それはそうだ。せっかくこうして忙しい中…。

きつねj:「アミカの森へ、万障お繰り上げのうえ、お集まり〜!」(おおげさに、おじぎ。)

きつねy:したんですからね。

うさぎ :なんだか面白そうだな〜。わくわく!

からすk:それじゃぁ…。

からすh・k:僕たちが、シナリオを考えてみよう。

全 員:よ〜し!さっそく行動開始だ!

うさぎ :ちょっと、待っててね。(会場に。)


場 面 (3)
               <森のさいばん・芝居始まり>
          
     静かな森、小鳥(orきりぎりす)が楽器を演奏している。
    (フルートでもバイオリンでも、または、アンサンブルでも良い。)

*ナレーション:ここは、アミカの深い森の中。
          今日は、いろんな動物たちが世界中から集まってきているという…。
          一体何が起こったのだろう。

うさぎ:たいへんだ、たいへんだあ。おくれる、おくれる−!

からすh:お〜い。うさぎく〜ん…。からすk:待ってくれよ〜。

うさぎ:やあ、からすくん、きみ、急がないと遅れるよ。

からす2:カーカッカッ!

からすk:きみ、裁判というと、あわてるんだね〜。

からすh:大丈夫だよ。ホラ、ちょうど、今から始まるようだぜ!   

ふくろう:静しゅくに。これよりさいばんを始める。  被告人、前へ。
      訴えによれば、被告、人間は、地球を汚し、人間以外の生物に対し、多大な迷惑を与 え、また、
     絶滅の危機にさらしている。これに相違ないかね。

人 間:とんでもありません。人類ほどこの地球の発展に尽くしたものはありません。
     まったく、なんで こんな裁判にかけられるのか訳がわかりません!

ふくろう:それでは、第一の証人、前へ。

      ―ビワコ大なまず、うなぎ、もろこ登場。

人 間:わあ、なんだ、こいつらは!

び わ:こ、こいつらとは何や!わしは、ビワコ大なまずや。

もろこ:もろこや!

うなぎ:う、うなぎでぃ!

び わ:だいたい人間のやる事はひどすぎるやないか。川とか海とか、琵琶湖とか(強調して)、 ゴミ箱かなんかと間違っとるんやないけ?

もろこ:ほんまでっせ。

うなぎ:そうともさ、何でもかんでも流しゃあ終わりと思ってるんだろうけどさ。おかげで水はすっかり汚れ、
    川や海の底はゴミやヘドロで息もできない。台所から流された合成洗剤や工場の汚れた水のおかげでなかまたちは病気になったり、死んでしまったり…。
        (シクシクとなく。)

び わ:まったくひどい話や。

もろこ:ほんまでっせ。

人 間:困りますなァ、かん違いをされては。
    汚れた水、つまり排水はですなぁ、きびしい規則をつくって、害のあるようなものは、きちんと取り除いたり、適当にうすめたりしていますよ。
 
からす2:カーッカッカ、カーッカッカ!うすめても毒は毒〜。
      うすめても毒は毒〜!カ〜ッカッカ〜!(はやしたてるように、踊りながら。)

人 間:ウッ、ウ〜ゥ、ゴッホン。あ−ぁ、なにしろ、人間は科学の力で不可能を可能にしてきたのですから。

エ ビ:そして、きけんなものは、よその国へすてるんだよね。
     よその国に工場をつくって、毒があるとわかっていても、そのまま、海や川へ流すんだよね。

うさぎ:な−んだって−!? し、信じられない。 

エ ビ:なぜって、きれいにしてから流すんじゃ、お金がかかるからさ。そのためにボクたちが、海の底で死のうと、腐ろうと、知らん顔でいる。

からすh:それどころか、そこの人間が、その毒のために病気になって死んだって、汚れた水を流しつづけて知らんぷり。カ〜。

からすk:自分たちは、お金もうけに、大忙し。カ〜。

もろこ:な、なんちゅうことしょりまんねん。        

人 間:ちょっと待ってください。病気などは、工場排水が原因かどうか、はっきりしませんよ。
     それに、よその国へ工場をつくると、その国の人たちが、その工場で働くことができるでしょう。
    つまり、貧しい国を助けてあげてるんですよ。

からすh:助けるだって〜?カッカッカッ!

からすk:安いお金で、こき使ってんじゃないの?カ〜。

うさぎ:ボクは好きだけど、・・・・ピカピカのお金。

もろこ:はぁ〜?あんさん、お金なんか、なにしはりまんねん?

え び:・・・・・うさぎに小判、とはよくいったもんだ。

うなぎ:ぶたじゃなかった?

び わ:猫ちゃいましたかいなぁ。

ね こ:にゃによそれ!ちょっと、どういうことよ!食っちゃうわよ!

(ワイワイ、とさわがしくなる。)

(ふくろうは、みんなが騒がしいので、めんどうくさそうに言う。)


ふくろう:証人はどんどん発言してよろしい。

人 間:なんて裁判だ!
    

場 面 (4)

*ちょうが、音楽に合わせて踊る。

ちょう:わたしたちにもいわせてください。
   お金をもうけることが、どれだけ大切なことか知りません。でも、その為に、森の木をふたたび元にもどせないほど切りつくすなんてあんまり勝手じゃあありませんか。

む し:そうです。そうして、切り倒した木は、紙になったり、いろんな製品になったりしますが、みんな、使い捨てられたり、燃やされてゆくのです。

ちょう:森の木の、一本一本にどれだけの生命がはぐくまれているか、森を失えばそこに生きるわたしたちは    どうなるか。人間は考えてもいないのでしょうか。

からすh:そして、豊かな自然が、どれほど人間に大切かも…。

からすk:あんたたち、忘れてんじゃないの?

む し:お願いです。どうか私たちの住みかを奪わないで下さい。

むし・ちょう:おねがいです。

 
場 面 (5)

 ―荘厳な音楽が響きわたる。

 ―能の舞台のような、木の精霊の登場。


木の精霊:まちなされ。ワシは木の精霊じゃ。

うさぎ :木の精霊って?

もろこ :なんか、偉い人みたいでんなぁ。
ね こ:にゃぁ〜。驚いた〜。
 木の精霊だって。何百年と生きている大きな木は、神様のようになるって聞いた事あったけどさ、ニャァ〜。 本物見んのは初めてよ。

―うさぎ、もろこ、近づいてそっと触ったりする。  

うさぎ :神様だって…。

もろこ :本物だって…。

間をおいて話しはじめる。)  

木の精霊:酸性雨というのを知っておるかな。

うさぎ :ァ、知ってる、知ってる!レモンみたいにすっぱい雨の事だよね。

木の精霊:そうじゃ、ヨーロッパの森には、その酸性雨という、硫酸や窒素酸化物という化学物質の混じった恐ろしい雨が降る。

うさぎ :りゅうさん?窒素…?

もろこ :化学物質…?(うさぎ、もろこ、手を取り合って首をかしげる。)

木の精霊:酸性雨は、すっぱいだけではない。そう、「恐ろしい雨」じゃ。
      そのおかげで、仲間はみな枯れていった。葉っぱから、根っこから、その恐ろしい毒を吸いとり、太い太い幹ごと、枯れていったのじゃ。今ではもう、森は墓場と同じじゃ。
      鳥も動物も虫たちも、みんな すみかを失い、食べものを失い、死んでいったのじゃ。

 ―木の精霊のことばに、みんなは下をむいてすすり泣きをはじめる。

木の精霊:木ばかりではないぞ。酸性になった湖には、一匹の魚もすんではいない。

び わ:魚がおらんて、ヨーロッパには、そんな湖おまんのか。

もろこ :ひぇ〜、コ、コワイはなしだんな〜。

木の精霊:酸性雨は人間がつくったのじゃ。
      酸性雨とは車の排気ガスや工場の煙突から出る有毒ガスが空のかなた上の方で雨と混ざりあったもの、鉄さえ溶かす恐ろしい液体じゃ。

ね こ:町の中にあるさ〜、銅像とか、あれ、ペンキでもかぶったみたいジャン。あれなんかも、酸性雨が犯人にゃの。

木の精霊:そうじゃ。しかし、人間は自分たちに災いが降りかかる、そのギリギリのところまで何もせずワシたちを見殺しにしているのじゃ。



場 面 (6)

 ―ラップランドの美しい自然を表現した音楽。

*ナレーション:ラップランド、雪と氷の世界。
   おおかみ、カリブー、渡り鳥たちの群れ。厳し い寒さと束の間の春を精一杯生き、わずかな恵みを分かち合いながら、つつましく生きるトナカイ。つつましく生きる人間。ラップランド、美しい白銀の大地…。

トナカイ:私の子どもは、放射能の毒で死にました。
     それもこれも、あの恐ろしいチェルノブイリ原子力発電所の事故のせいですわ。

うさぎ、もろこ:チェルノブイリ?

からすk:1986年、旧ソ連のウクライナで起きた、史上最悪の原子力発電所の爆発事故。

からすh:この時、上空に噴き出した、放射性物質は、世界中を震え上がらせたんだ。

ね こ:放射能の毒は、空気や食べ物から体の中に入って、恐ろしいガンや、白血病の原因になるのよ。

トナカイ:そう。
    見た事も聞いた事も無い遠いところにある、その恐ろしい建物が爆発を起こしたのです。その時、風に乗って恐ろしい死の灰が、私たちのすむラップランドにまでやってきましたのよ。仲間はばたばたと死にました。
    だって、空気ばかりか、私たちの食べ物の、コケも、水も、…。
    何もかもに、放射能の毒がまわっていましたもの。
   そしてとうとう、私の坊やも!こんな事が許されまして?

からすk:カ〜。おいらも見てた。カ〜。空の上から。

からすh:トナカイの子も死んだ。人間の子も死んだ。カ〜。

からすk:それなのに人間は、まだこんな事を、繰り返すつもりカ〜。

人 間:あ、あれは、不幸な事故でした。本当にお気の毒な事です。
(気分を変えて)しかし、あのように、失敗を繰り返しながら、科学は進歩していくのでして。

び わ:失敗を繰り返してたら、とり返しのつかん事になるんちゃうんか。

うなぎ :そうやってどんどんと、地球の環境を 壊しているんじゃないか!

うさぎ :そ、そ-だ、そ-だ!!よくわかんないけど、ひどい話だ。ウン。

もろこ :いや〜。ほんまでっせ。
    お気の毒ですんだらそらあんたはん、トナカイの坊やかて浮かばれまへんで。

からすh:戦争のための、恐ろしい核兵器や毒ガス、
    ひょっとしてあれも、科学の進歩って言うつもり?カ〜。


場 面 (7)

ゴリラ:こんな話も聞いた事があるぞ。
   人間ていうやつは、考え方や意見が違うだけで 何千、何万という人間を平気で殺すそうだ。

     (オ−・・・、と悲鳴などがおこる。)

うさぎ:それって、どういうこと?

きつねj:その国によって、信じている神様が違ったり考え方が違ったりしますよね。そうした事が原因で、いがみ合ったりするんですよ。

からすk:資源や土地の奪い合いとかもね。

ね こ:そう。人間には、血なまぐさい戦争の歴史がずーっと続いてるのよね。

もろこ:からすはんの言いはった、核兵器や毒ガスて、…せ、戦争のために使うて。

からすh:悲しいけれど、なぜか知らないけど、人間は戦争のための準備をやめないんだ。

きつねy:同じ人間同士で殺し合うなんて、私たち動物には考えられないほど、野蛮な行為ですよ。

 ―とうとう人間は、一言も口をきけず、小さくなってしまう。

と  ら:がお〜!
   こんな恐ろしい生き物を放っておいては、我われは一匹残らず殺されることになるにきまっておる。

きつねj:現に、人間のおかげで絶滅した動物だって、たくさんいるんですからね。

きつねy:そうそう。私たちが絶滅する前に、人間が、全部いなくなる方がいいんですよ。

ライオン:がお〜!
    そうとも、そうしたらオレたちは今まで通り、みんなで共存共栄、うまくやっていける。がお〜!  

うさぎ :共存共栄って、なんのこと?

からすh:ライオンがうさぎをたべるってことさ。

からすk:またの名を「弱肉強食」ともいう!カッカッ。

きつねj:コ、コホン!とーにかく、人間なんていない方が、地球は平和なんですよ。

きつねy:そうそう。平和なんですよ!

ゴリラ :そうだ−、死刑だ−!死刑だ−!

  ―全体が、なんとなく盛り上がってしまう。

ね こ:何てひどいことを言うのよ!
   それじゃあ人間と同じじゃないの!そんなことじゃ、また、同じようなボスが出てきて、
   失敗をくり返すだけじゃない。

からすh:50億以上もの人間を、絶滅させるつもりか〜?

からすk:つもりか〜?

ゴリラ:だ、だ、だって、こいつらが悪ものだから−・・・。

場 面 (8)

こども:まって!みんな 許して−!!

こども:ごめんね、ごめんね。
   人間を許して。大人たちは、一生懸命だったんだ。
   何とかして楽 しく暮らそう、便利に暮らそうって。そうすることが、みんなのためだって考えていたんだ。 
  それで、ただ働いて、働いて、・・・いつのまにか、時間とかお金とかの、奴隷になっていたんだ。もっと大   事なものがいっぱいあったのに。
  みんなを見て。ホラ、みんな、地球のなかまなのに!!ぼくがあやまるから、ネ、ごめん ね!ごめんね!

人 間:う・・・うわ〜ん、あぁ〜ん!!


人 間:そうです!私たちが間違っていたんです!!
    地球を壊しつづけていることは、とっくに気がついていたのに。
   争いや憎しみは愚かな事だって事も、ちゃんと知っていたのに。
   危険なんじゃないか・・・、って本当は思っていたのに。このままじゃいけないと、知っていたのに!!
   どうして何もしなかったんだろう、ほんとうに・・・ほんとうに・・・あぁ、・・・。

 ―今まで、まるで無表情だった人間が、ポロポロと涙をこぼしてなきだす。

      
 みんなは、もう、何もいえずだまってしまう。


場 面 (9)

   ―静かな音楽。

ふくろう:どうだね、皆さん。
    いろんなつらいこともあった。
   人間というのは どうしようもなくごうまんで、わしたちに迷惑ばかりかける、情けない生き物じゃからな。
   しかし人間とは長いつきあいじゃ。
   それにこうして心のなかでは、このままではいけない、何とかしなけりゃいけない、と思っている事もわかった。
  そして、こどもたちはわしたち動物や自然ともなかよしじゃないか。

からすk:いたずらもするけどね。カカッ!

ね こ:そうよ。
   人間にだって、やさしくって、がんばって生きてて、とってもかわいいやつらはたくさんいるジャン。

ふくろう:その人間たちが、地球をどうしてゆくのか、もう少し見守ってゆかんかね。

     「シッコウユウヨ」ということで。

こども・人間:はい、ありがとうございます!

うさぎ :ねぇ、ねぇ、オシッコ・・・ナントカ・・ってな−に?

もろこ :は〜。オシッコ…(つぶやくように)な、なんでんねん。それ?

ね こ:シッコウユウヨ!

び わ:シッコウ、ユウヨ…。

ゴリラ :もう許しちゃうってこと?

からすh:罰を与えるのを待ってあげるって事だよ。カー。

きつねy:そう。ちゃんと、反省してまじめに努力していればよし…。

きつねj:さもなければ〜。

ね こ:地球の未来はないって事ね。

び わ:なるほどなぁ!こりゃ大変や。あんさんら、責任重大でっせ。

ふくろう:ただし、時間はあまり残されておらんぞ。どうだな、やれるかな?

こども :ぼくたち、なんとか地球を守ります。きっと、もとの美しい地球にもどせるよう、がんばります!!

うさぎ :よかった!これで仲直りだね。ぼくは、暴力なんてイヤなんだよ。

もろこ :ほんまやほんまや。あっしらは、平和主義者なんや。

び わ:ほ、ほんまよかった、よかった。(泣く。)

ね こ:こわい顔して泣かないでよ。

からすk:そして、ぼうや。君のまわりの大人たちに教えてやりな。

からすh:地球を壊し続けて働いたって、何も豊かにならないって事をね。カ〜。


*ナレーション
人間って、いったい何だろう。
自分たちの便利さのために、何か大切なものを、見失っていないかい?
もしも、君たちのまわりに、そんな人がいたら、この森であった事、教えておあげ。
人間には、自分を見つめ直す、知恵があるんだ。


                                                   End.



*このシナリオは、絵本「森のさいばん」をもとに、コミュニティ・アートのイベント 「エコ・アート」のために、制作したものです。


 シナリオ制作・絵本原作 つだあきこ


 絵本出版元 自然環境センター



ゥにならないって事をね。カ〜。


*ナレーション
人間って、いったい何だろう。
自分たちの便利さのために、何か大切なものを、見失っていないかい?
もしも、君たちのまわりに、そんな人がいたら、この森であった事、教えておあげ。
人間には、自分を見つめ直す、知恵があるんだ。


                                                   End.



*このシナリオは、絵本「森のさいばん」をもとに、コミュニティ・アートのイベント 「エコ・アート」のために、制作したものです。


 シナリオ制作・絵本原作 つだあきこ


 絵本出版元 自然環境センター



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