まちづくりトーク記録集

2004年12月19日

 本記録集は、民主党(衆議院議員)の三日月大造さんと自民党(滋賀県連常任顧問)の上野賢一郎さんをゲストスピーカーとしてお招きして開催したまちづくりトークの発言をまとめたものです。 (タイトル・文責はまちづくり本舗)

▲三日月大造氏のHP▲

▲上野賢一郎氏のHP▲




 ● 開会挨拶


 本日は、お集まりいただきありがとうございます。
   只今より、まちづくりトーク リニューアル第2弾「NPOと政治との関係を考えよう!」を開催させていただきます。 

 私たちは、今年2月に前市長が就任わずか1年で収賄と公職選挙法違反で辞任・逮捕されたことに伴う出直し選挙に際して、NPOとして、また市民としてこれ以上パブリックな職務に対する無責任とミッション・能力無き人たちに地域の舵取りをまかせて置くわけにはいかないとの思いでNPO法人地域通貨おうみ委員会の有志を中心にして「まちづくり本舗」を結成しました。

 「まちづくり本舗」では、市長候補者の公募や毎夜のまちづくりトーク、市長立候補者による公開討論会を開催し、またそのなかで各候補者からマニフェストを提出いただくという取り組みを行ってきました。

 こうした活動を地域に定着をさせていくことによって、地域にとって本当に必要とされる人材を育て、また選出することを通じて、分権社会を担いうる責任主体としての自治体・市民を構築していきたいと考えています。

 前回のまちづくりトークでは、議員立法で成立したNPO法に国会議員として関わり、またNPOに造詣が深い辻元清美さんをゲストスピーカーにお招きしました。

 今回は、「NPOと政治との関係のあり方」を基本的なベースとしながらも、ローカルマニフェストやコミュニティ再生など、より具体的な課題を設定させていただきました。
  ▲(参考)ローカルマニフェスト関連HP▲

 時間が2時間と短いため、充分な討議ができるかどうか不安な面もありますが、ゲストのみなさまを始め大変お忙しい中おいでいただいておりますので、有意義なものとなりますようどうぞよろしくお願いいたします。



 ● 三日月氏 【自己紹介と問題提起】  

  私は、2003年11月の衆議院議員選挙で国政に送り出していただき、国会では国土交通委員会で日本の国土再生、特に公共事業や交通政策のあり方を見直していくことに携わっているが、常々こういう機会をもっとやっていただき地域の中で侃々諤々と様々なテーマについて論議していきたいと思っている。びわこ放送では、新春国会議員対談があるが、年に1回だけ選出議員が僅かの時間のなかで話すというのではなく、例えば月に1回程度それぞれの政党の議員が介護保険や年金等のテーマごとに論じ合う場があっても良いのではないか。そういう観点からも、今回の企画は有益だ。

 ここでは自己紹介や自分の考え、問題提起を4点お話したい。

 まず、第一点目は何故私が政治家を志したか。

 この国の政治文化を根本的に変えなければならないと思ったことが一番大きな動機。
 残念ながら草津市でも現職市長が逮捕されるという事件が起こったが、その原因が一部の業者への利権供与というものだった。この国の政治が一部の人たちの意見を代弁し、結果として一部の人たちだけが得をするという状態になっている。パブリックという点て大変危惧されるこうした状況を根本的に変えていかなければならない。具体的には、主権者である国民に政治を取り戻さなければならないということ。
 特に、納税者や消費者、弱い立場にある子どもといったところに、もっとパブリックという概念を向けていかなければならないということを志に掲げて政治に参画している。

 第二点目として1年間国会議員として活動してどうだったか。
 
 率直に言って、既得権益を自分自身で変えていくというのは難しいし、またできないということが年金問題をとってもはっきり分かった。また、本当に大切なことや必要なことがまだまだ語られていないし、国民の声が届いていない政治の状況を垣間見ている。 
 一例を挙げると、被災者生活再建支援法(震災などで家を失われた人たちを上限300万円で支援しようという制度)については、法律の不備が沢山ある。例えば床上浸水などの水害に使えなかったり潰れた家本体を立て直すことには使うことができない。このように災害で住宅を失われた人たちにとって使い勝手の悪い法律である。その理由は、公のお金を私的財産のために使ってはいけないという原則によるものだが、住宅こそ公共財の最たるものであるとの観点から民主党が改正を提案した。公明党も改正すべきだとの意見だったので本来は成立するはずだったが、自民党から「民主党の提案した法律に公明党が賛成して可決をしてしまえば、民主党の手柄になってしまう」との立場で、結局は住宅本体部分にかかる再建支援策の成立は見送られた。政党間の駆け引きやエゴがぶつかりあうことによって、必要な法律の改正がなされないという場面を実際に国会で目の当たりにして、政党政治の限界や弊害ということを一部感じた。   ▲被災者生活再建支援法の一部を改正する法律案はこちら▲

 第三点目として、こうした状況があるなかで今後どうするのか。

 公と民、特に国会と私たちの生活の距離をもっと縮めていくことに自分自身の役割を見いだしている。
 その方法の一つの主体としてNPOがあり、また企業・自治会・労働組合なども公と民を繋ぐ重要なセクターでありファクター・アクターでもあると思っている。そういうことに関心を持ちながら自分の活動を続けていきたい。
 取り分け、NPOについては政治家も自治体も何か困ったことがあれば引っ張り出されるようになっているが、まだまだNPOの本当の役割を自覚しながらそのことが語られているということにはなっていない。そういう意味でNPOが抱えている課題やこれからの可能性について語り合っていきたい。

 最後に、第四点目としてマニフェストについて。

 昨年11月の総選挙で大きなキーワードとなったが、これは画期的なことだ。これまでは「住みよい国をつくります」「豊かな社会・安心できる老後を約束します」といったきわめて漠然とした切り口でしか語られなかった政策が、具体的な政策を数字と期限を示して有権者に約束するというものになったからだ。
 このような政治文化の改革に期待し、それを担う一員にならなければならないと思っているが、ことローカルマニフェストということで課題を挙げると、実際にはまだまだというのが現実。
 「犯罪防止のため自治会の人たちにも協力いただきます」「学童保育については、保護者の方々にも入っていただきます」というように、行政だけでやるというのではない約束についても語るべきだ。
 何でもかんでも行政でやるという時代は終わりがきている。
例えば「環境問題についてはNPOにお任せしますが、一部公的な補助をします。それによって草津市全体でゴミの減量に努めていきます」というふうなローカルマニフェストの作り方が必要になっている。このようなローカルマニフェストづくりに、民主党としても参画していくべきだろう。

 ● 上野氏 【自己紹介と問題提起】

  2004年3月の草津市長選以来、主催者である「まちづくり本舗」と意見交換をしてきた。

 私は現在、自由民主党の滋賀第1区の支部長をしているが、以前は総務省の役人だった。その頃は、地方自治やまちづくりを中心にして仕事をしてきた。当時、岩手県庁に95年〜99年までの間約4年半に渡り県の企画課に赴任していたので、まずはその時の経験をもとにして問題提起していく。

 配布した資料は、増田知事と一緒に県政の改革を進めてきた当時の記事。  ▲資料記事はこちら▲

 少し古いが、本質的には今も同じ考え方なので参照願いたい。
 増田知事が当選されて私が県に赴任した時、県庁の雰囲気が前向きではなく、ポジティブな所が感じられなく何かに縛られているという閉塞感のある状況だった。こうした中で、県行政のあり方について知事や幹部と議論してきた。
 どうあるべきか、どういうふうに県行政を進めていくべきかを考えていく中で、まずやらなければならないこととして次の2点に絞り込まれた。

 第一に、徹底した住民参加を進めること。

 県庁の中だけで仕事をするのでは無く住民と一緒に仕事ができる風土を作り文化を変えていこうというもの。

 第二に、徹底した情報公開を進めていくこと。

 県の持っている情報を隠し立てするのではなく、それをすべてオープンにすることで住民と情報を共有化していくことが大切だということ。

 そして私が特に力を入れたのが、これから5年10年先の県をどうしていくのかということを示していく総合計画を作り直すことだった。
 その際に、過去の総合計画の作り方を調べる中で、県庁の机の上だけで行政マンが作文をしているという実態に気が付いた。
 これでは絶対駄目なので、マスタープランの作り方そのものを変えていくことにした。
 そこで、県の企画課の職員約40人が手分けをして、県内をくまなく回った。時には、10人位の座談会やパネルディスカッションなど、色々な形態で住民の方に加わっていただき最終的には約3万人に計画づくりに参加していただいた。これは、県内住民の50人に1人という割合だ。こうした中で、色々なことが分かってきた。例えば、岩手県の人は良く「無い」という言葉を使う。「うちには空港が無い」「新幹線も通って無い」と。
 その時「無いことを嘆くよりも有ることを探そう」「有ることをテーマにしよう」ということにしてはどうかとなった。有ることをテーマにすることによって、「地元学」という発想が生まれてきた。これは、地域にある資源をもう一度掘り起こして、地域の良さを見つけてそれを育てていこうという考え方。それが今でも岩手県の地域づくりの基本的な考え方になっている。

 「地元学」の例として、陸前高田市という人口2万人余りのひなびた漁村がある。そこはまさに何も無いところだが、何も無くてもあきらめないという若い人たちがいた。そうした人たちが地域の良さをもう一度見つけようと、10年程前から地域の伝統文化としてあった太鼓に目を付けて、「全国太鼓フェスティバル」を開催した。最初は町の人たちしか集まらない小さなお祭りだったが、これが人の心を揺さぶる本物の太鼓だったことから、今では「全国太鼓フェスティバル」は太鼓界の甲子園とも呼ばれるまでになり、陸前高田市は太鼓の町として全国でも有名になっている。
 ▲(参考HP)全国太鼓フェスティバル▲

 今まで、県の計画を作る時に業界団体の人など縦割りの中で色々と考えていくという習性があったが、広い主体の参加を図ることが大切でありその中心は県内のまちづくり団体であったので、是非計画づくりに参加してほしいと呼びかけをしたところ、いくつもの団体が手を挙げてくれた。そうした人達を中心に審議会を設置した。
今まで審議会というと特定の団体のお偉いさんだけが委員となり県の計画にお墨付きを与えるだけの存在だったが、実質的に計画づくりをしてもらうためにまちづくり団体の方や地域づくりのリーダーの方、子育てサークルやボランティアの方などで100人委員会というものをつくった。こうした中で、今までの行政の視点だけではなくて色々な主体の参加を求めていくことが基本だと考えるようになった。
 
 ところで、96年〜97年当時、改革派の知事と呼ばれる人達が出てきた。
 例えば、高知県の橋本知事、宮城県の浅野知事、三重県の北川知事。
 そうした知事達の横のつながりを作って色々な仕組みづくりを考えていこうということになって「地域から変わる日本」 を立ち上げた。 ▲参考HP▲
 
その時に思ったのは、日本全体が変わらなければならないが、日本全体が変わることがなかなか難しいというのであれば、それぞれの地域が変わっていくということ。地域の一つ一つが変わることによって、実は日本全体も変わっていくという考えに基づきバランスシートづくりや行政評価のしくみづくりについての議論をしてきた中で、平成15年の統一地方選挙で北川知事が呼びかけてローカルマニュフェスト運動が起こった。これがその年の総選挙におけるマニフェスト選挙につながった訳だ。
 地域が変わることによって日本全体が変わるきっかけとなるということが実際に実を結んだのだ。

 マニフェストは、基本的に目標を明らかにしていくことで、これまで「福祉を充実させよう」「教育に力を入れます」というような中途半端でぼやけたことしか示して来なかったものを具体的に示してその手段を明確にし、さらにそのためにいくらお金がかかりそれをどのように調達するのかという財源までもはっきりさせることだ。

 ローカルマニュフェストによって、今の政治が「首長は責任を問わない 役所は先延ばしにする 住民は無関心」という負の三角形から、「首長は責任を取り 役人はすぐに仕事をする 有権者は関心を持つ」という正の三角形に変えていくことにつながる。
 ローカルマニフェストは、首長が「〜こうします」と言えば当然結果が問われることであり、首長が責任を自覚することでもある。今までは、霞ヶ関に行って地方にお金を貰ってくるのが仕事だと思っている人が多かったが、こういう陳情型政治にある意味決別するきっかけにもなるだろう。これは、首長が地域経営というものを国に委ねるのではなく、自分の責任として「どういう地域をつくっていくのか」を有権者に約束することでもあり、そうした意味で首長の責任をしっかり位置づけるのもローカルマニフェストの持つ意味だ。
 その時に決定的に重要なことは、今後自治体経営は難しくなるが地方の自由度は高まることは間違い無い。しかし、お金が段々無くなってくるのも事実だ。これまでのように「あれもできます」「これもできます」ということはできない。
 「あれもこれも」というのではなくて、「あれか、これか」の選択に変わってくる。こうした中で、首長が「これはできるが、あれはできない」ということをはっきりさせるということを示すことがローカルマニュフェストの役割でもある。

 一方、有権者の側から見れば選挙において誰に投票するのかを決める判断基準にもなるし、判断基準だけではなく就任後4年間の任期の間にその人がどういう仕事をするのかを監視していく、また見守っていくという責任が発生する。
 こうしたことから、ローカルマニュフェストというのは、首長の責任を明らかにするだけでなく、有権者の責任をも問うものだ。首長と有権者の関係を見直すきっかけとして、これからの地方選挙において是非実現していくべきだ。

 まちづくり本舗では、自らのローカルマニュフェストを作り、公開討論会を開催されてきたが、こうした試みを候補者の側が行わない場合はNPO・市民の側が作っていくということがこれから求められていると確信している。

 実は、ローカルマニュフェストには問題もある。
 マニフェストは、基本的にイギリスの議院内閣制のように選挙に勝ったものが政権を担うことを前提にしている。政党政治の場合は万能だが、首長選挙の場合は違う。地方選挙で当選した首長がやりたいと思っても、議会が反対すればできないということが沢山ある。こうしたことから、ローカルマニュフェストはやや中途半端なものにならざるを得ない。しかし、これからどういうまちづくりを進めていくのか、そのありようを有権者に示していくというのはとても重要なことだ。
 佐賀県の古川知事はローカルマニュフェストを掲げて統一地方選で当選されたが、直接話しを聞いたところ「これからのまちづくりをどうやって進めていくのか、どういう政策をまじめにやっていくのかを候補者として有権者に対して示していかなければならない。そのために中途半端な性格にはなるが、私はマニフェストを作った。」とのことだった。
 
 マニフェストにとって重要なことは3つある。

 一点目は、まちづくりの理念やビジョンをハッキリさせることであり、そのことを示す能力があるかどうかが問われること。

 2点目は、マニフェストで当選した後にどうやって具体的な政策に落とし込んでいくのかということであり、行政の側が問われること。

 3点目は、その評価をしっかりやるということ。NPO・市民が実績を見極めていくことを是非やってもらいたい。

 以上の3点によってスパイラルのようにステージを上がっていくこと。これが、これからの地方自治をより良いものにしていく大きなサイクルだ。
 そういう中で、NPOの役割は大変重要になる。
 その役割の一つ目は評価をしていくこと。
 二つ目は政策の形成過程に入っていくこと。つまり、積極的に提言・提案をしていくことだ。
 NPOや市民団体がこうした意識を持って取り組んでいくことが地域を変えることにつながることを確信している。
 このような、ローカルマニュフェストに対するNPOの関わりを大いに期待している。

 最後に「協働」というのは綺麗だが、本当にその意味を理解し受け止めている行政がいかほどかるのか? カタチだけやるのではなく、本当にどういうふうにやるのかによって結果は大きく変わってくる。県や県内の市町村にも「協働」本来の姿勢で臨んでもらいたい。

 私は自民党という政党に属しているが、個人としても色々なNPOに加盟しており、これからも活動の幅を拡げていきたい。


 ● コーディネーター 杉原氏 【感想とテーマ設定】

 まず、発言していただいた内容に対する感想から。

 三日月氏が33歳、上野氏が39歳、そして私が52歳。
 マニフェストというのは、去年の統一地方選挙から出てきたもので、その時に8県程の首長がローカルマニュフェストを掲げた。マニフェストと言う言葉は、北川前三重県知事が使ったのが初めだがそれから僅か2年も経過していない。しかし前回の衆議院選挙ではマニフェストが出され、その定着の度合いについて非常に大きな関心を持っている。

 パネラーの2人は、マニフェストというものを当事者として実感を持って語られるのは当然のことだが、更にこれが政治のどのような変化を与えていくのかということが様々な角度から語られた。行政はもちろんのこと、国民に責任が問われるということも明確に話された。これがここ2年間の政治の変化の重要なポイントだ。
 2人に共通するのは、政治文化を変えるということが原点になっているということ。
私自身、30歳代の政治家というものを何人も知っているが、政治文化を変えたいと言う点では共通している。ここで言う政治文化とは「依存と分配」ということ。日本では、戦後からこうしたことがあるわけでは無い。過去、吉田茂・岸・池田・佐藤政権と続いてきたが、これらの政権を「依存と分配」であるという歴史的評価は無い。70年代の田中政権以降に依存と分配の政治文化となった。例えば、震災で大きな水害に見舞われた山古志村について、70年代当時の無理な土木工事が大きな要因になっていると言われているが、70年代以降日本の政治は質の違ったものになったのだ。そうしたことを変えるということは、当然「依存と分配」という政治文化を変えるということ。

 上野氏が最後で述べた負の三角形について、別の角度から言うと「政治が全く責任を負わない−行政は先延ばし−国民はそれに白紙委任をしてきたと」いうこと。こういう政治文化を変えようというのが2人の基本姿勢だろう。
 NPOは、そうした状況を変えていく道具の一つになるだとうと。
 ただ、日本のNPOの現状はその役割や責任を担えるのかどうかということは疑問。
 NPO法ができたのは、ちょうど6年前でそのきっかけとなったのが阪神淡路大震災。この時に必要に駆られてボランティア・NPOができた。現在約2万人弱のNPO法人が登録されているが、事実上活動をしていない団体や報告義務が守れていない団体などが非常に多いと言われているし、目的や目標が明らかになっていないものも多い。

 もう一つは、アメリカではNPOが社会の重要なアクターでありセクターになっており、GDPの3分に1にも達していると言われている。必ずしもアメリカの現状そのものが良いとは思わないが、経営主体としてNPOを見た場合まだまだ未成熟だ。

 こうしたことから次の議論として、政治文化を変えていくためにNPOが大きな役割を果たせるのではないかという点、また行政との関係で言えば財政が厳しく赤字予算しか立てられない(大阪府に至っては再来年位には予算が立てられない)という状況において、行政にすべてお任せというのでは成り立たないためNPOの地域での公益活動の役割は非常に重要だと思うので、更にそのことを議論して深めていただきたい。

 また、主催者からはコミュニティの再生とローカルマニフェストというテーマも与えられているので、その当たりから次の発言をお願いしていくことにする。
 ローカルマニフェストという点で言えば、増田知事が当選して初登庁した際に、県の幹部からマニフェストに基づく3つの案をすでに用意していたということで、増田知事自身が非常に驚いたそうだ。これが住民主権であり国民主権。もちろん2元代表制であるため議会との関係で難しい面もあるが、それだけ責任と権限が伴うものだということであり、日本の役人は相対的に優秀なので政治が正常化していけば日本の社会は必ず良い方向に回るはずだとの確信を持っている。

 では、コミュニティ再生とローカルマニュフェストについて、具体的問題に引きつけてご発言を。

 ● 三日月氏 【コミュニティ再生とは】

  まず、何をもってコミュニティが壊れているのか、またどういう状況になれば再生されたことになるのか。一つの切り口として、犯罪が多い町というのはコミュニティが壊れていて、仮に犯罪を少なくすることがコミュニティ再生と捕らえることができるだろう。

 「政治文化を変える」「コミュニティを再生する」ということについてNPOに期待している。しかし、NPOだけに期待している訳ではない。公(行政)と民とを繋ぐあらゆる主体がもっと頑張っていけば、自ずとコミュニティは良くなる。
 具体的に言えば、犯罪を無くすために自治会の防犯組織を強化するとか、青年会議所などが夜回りをするとか、そういうことに取り組める余地があり、行政はそういう活動に一定の補助や「人」「物」「カネ」の支援をしていくことができればと思う。

 自治会、労働組合、商店街組合などがNPOと何が違うのか。
 NPOは「環境」「育児支援」「福祉」といった特定のテーマでつながっているところが明確に違う点。そういうところで寄付をされる方、参加される方が選ばれていけばもっと活性化するのでは。そういう面では政党も同じようなところがある。

 ● 杉原氏 【NPOは行政の肩代わりではない】

 政党もノンプロフィットという面でNPOといえる。千葉県に我孫子市という町があり4期目になる福島氏が市長。15万人の人口で日本の基礎自治体としては平均的。福島市長が常々「NPOというのは、本来の役割としては決して行政の肩代わりをする存在ではない」と言っている。しかし現状では、行政が直接やるよりもNPOの方が効率的で、場合によっては無償で行政の肩代わりをするかた良いということに止まっている。これではNPOが限定された役割しか果たせないものになる。

 ● 上野氏 【ローカルマニフェストと政治のリーダーシップ】

  ローカルマニフェストについては、先ほどコーディネーターより発言のあった増田知事の初登庁時にいくつかの案を持ってきたという話しについて私も直接本人に聞いてみた。
 公共事業を200億円削減するというマニフェストについて土木部長が案を持ってきたとのことだった。つまり、これまでと大きく政策を変更するきっかけとしてマニフェストが利用された例だと言える。行政内部だけで政策変更しようとしても、色々な軋轢やしがらみがあって変わりたくても変われないという事例は沢山あるが、政治がリーダーシップを発揮して変えていくツールとしてマニフェストを有効に活用していくという一つの例が先ほどの話しの持つ意味だ。

 コミュニティの再生ということについては、NPOや各種まちづくり団体との関係を行政がしっかり認識し、つながりが持てるかどうかが問われている。今までは、学区単位で行政を進めてきたが、それではうまく行かない場合が多い。NPOのように特定の目的を持った人たちとの協働が行政の中で大きなウエイトを占めるようになるだろう。
 日本には「結い」というものがあり、農作業などをするときに村の人が出てきて協働作業をしていた。ただ、これは一方で村八分に象徴されるような管理システムであった。そして今必要なのは、古い意味での「結い」ではなくて21世紀型の「結い」だ。
 また、コミュニティとのつながりや地域を越えて目的を共有する人たちのつながりなど、多様なつながりを行政がどう受け止めるかが必要。


 ● 三日月氏 【コミュニティ再生と意識改革】

  コミュニティの再生は、そこに住んでいる人たちの意識の再生・変化が必要だ。例えば、私は3人の子どもを育てているが、車が多く犯罪も心配なので安心して遊ばせておくことはできない。また、自分が体を悪くしたときにこの町はどうだろうかと考えた時、車いすで生活しやすいかというと決してそうなっていない。そしてゴミも多く落ちている。そういう中で、自分たちが住んでいる町だから自分たちで良くしていこう、そのために出来ることから始めようというような意識改革が必要。政治・政党はそういう核に成り得るだろう。
 このような観点から、現在ポスターを作っている。
 普通のポスターは、政治家の顔が大きくでているものが多いがそれではこの国は良くならないと考えている。名前と顔も出すけれども「一緒に参加してください」ということを打ち出している。
 例えば、子どもの遊び場が少ないというのであれば、親同士が集まって安心して遊べる場所を作りましょうというふうなことをやっていければと考えている。
 もちろん国会で審議をするという本来の仕事もやりつつ、こういう活動の呼びかけ人として入っていければと思う。
 NPOも、そういう意味で一つのセクター・アクターだろう。

 ● 杉原氏 【依存と分配の政治文化を変える】

 政治文化を変えるということは、政党や政治家と有権者との関係のありようを変えていくこと。また、行政と住民の関係のありようを「依存と分配」というものから「自立と創造」の関係に変えて行かなければならない。そして政治家は、その責任に対してマニフェストという形で示し、それを検証する住民がいるという状況の中でNPOもセクター・アクターとしてあるという構図があるということが発言の中で出されたことだろう。

 ここまでの内容について、会場から質問・意見を。

 ● 会場より意見・質問 (1) 【地域コミュニティのあり方は?】
 
 地方制度調査会で、道州制の導入や地方自治体とNPO等のコミュニティ組織との連携を打ち出している。しかし、実際に政府が出してくるのは金がなくなったから、NPOやコミュニティ組織を利用するというようなものになっている。
 本当に地域を形成してきた歴史・文化やそれを担い地域を再生しようという人たちの意見が届いていない。そこで、地域コミュニティについての考え方をお聞きしたい。

 ● 上野氏 【コミュニティは住民自治の原点】

  お金が無くなるからコミュニティだ、行政にお金が無いからNPOにお願いするという発想は良くない。先程申し上げた「地元学」は、長い歴史に裏打ちされた文化や生活を大切にしていくことであり、できれがこれを磨いていこうというもの。そういう意味でのコミュニティ再生であれば良いが、負担の転嫁というのでは筋が違うだろう。
 地方自治の原点である住民自治の原点に立ち戻るということだ。

 ● 三日月氏 【コミュニティで大切なことは自己決定】

  コミュニティについて、行政区なのか自治会を指すのかによって大きく考えが変わっていく。その定義づけをはっきりすべしとのことだと思う。
 私は、学区・自治会単位の拡がりをコミュニティと捕らえている。その上に市町村の行政区があって、都道府県・国がある。そうした観点から、コミュニティでできることは自分たちでやろうというのは賛成であり、道州制にも自己決定ができるという点や全国一律で施策がなされているなかでの問題点を解消する意味でも、その可能性を見いだしている。

 ● 杉原氏 【地域のありよう変える地域再生論】

 例えば、大都市である東京でも遡れば江戸文化があり、それをどう継承するのかについては学者が言うのと政治家には大きな隔たりがある。
 今の政党は、都市論や地域再生論をマニフェストの中に入れたり、それを語ったりする政治家は非常に少ない。来年6月位に都議選があるが、東京を100年先にどういう都市のするのか、という都市論を政党自身が持つ必要がある。その時に、地域のありようを変えていく活動とは何かをもっと議論されなければならない。
 前回の羽曳野市長選に出た知人も、共産党と現職自民党との間の選挙の中で、羽曳野の歴史を踏まえてまちづくりをどうしていくのかというものは無かったので、その選択肢を出すために立候補した。そうした想いを持った議員や市長が出てこないと日本の再生はありえないだろう。地域の文化・歴史の継承ができる再生論を是非作る必要があり現状の政党には欠けている。ただ、欠けているということを自らが意識している議員が多くなってきたので今後に期待したい。

 ● 会場より意見・質問 (2) 【環境保全の立場からマニフェストづくりを!】

 自分の主張だけではなく、地域にとって本当に何が必要かということに落とし込んで、それを基本にまちづくりをしていかなければならないと思う。
 また、マニフェストの中で財政危機を克服するため本当に国守るために何を削減する覚悟があるのかを明確に示してほしい。例えば医療の場合だと、予防医学のように根本的な要因を克服することを謳ったマニフェストが出てきてほしい。また環境問題では京都議定書というすばらしいものがあるのにそれが活かされない状況は変えるべき。例えば農業も採算性のことだけではなく環境保全の観点から環境税が還元されるようなマニフェストを作ってほしい。

 ● 三日月氏 【最も基本的で大切なことを立場を越えた連携で実現】

 水・空気・食べ物・生命といった最も基本的で大切なものを、この国は軽視してきた。
 経済優先、利益・市場主義ではなく、生活のやり方や運営のやり方を根本的に変えようということを強く打ち出していくことが我々の仕事だろう。
 滋賀県は環境こだわり農業が行われているが、農薬を使わずに続けることが経営的に難しいという問題があるため大きく拡がらない。農業は作物を収穫すること以上に環境を守ることに寄与しているので、そうした事自身に資金が使われる制度を提案している。
これまでは、約1兆円の予算の大半が農業用の道路や水路など土木工事のために使われてきた。医療も含めて社会保障全体に言えることは、単に負担を引き上げて給付を引き下げるというのであれば政治家で無くてもできるので、ご指摘いただいた視点を国会にも届けていきたい。また、環境問題や災害対策などの基本的なことは政党の違いは関係無いので、そういうことで対立し合うのではなく政治家自身がつながっていかなければならない。

 ● 上野氏 【マニフェストづくりは既存の枠組みではなく担い手とのネットワークで】

 自民党の場合、マニフェストのつくり方がどうしても役所が積み上げてつくると言う形になってしまう。だからメッセージ性は無いし大きな政策転換ができない。これからは、環境を基軸にした国造りが基本となるが、マニフェストの作り手が既存の枠組みではなくて、今発言していただいたような方々との連携やネットワークが不可欠であり、それができるかどうかが政党に問われている。私自身もそうした担い手の方々と連携をしていきたいし、自分自身もその担い手として頑張っていきたい。

 ● 杉原氏 【NPOと政治の関係・NPOの可能性は?】

 マニフェストは出てきたばかりであり、決して完成したものではない。マニフェストの中身をどのように深めていくのかという点では、政権についた側に対してはその業績をチェックしていくことが大切であり、投票行為として表していくことになる。野党の側は地方選挙の際にもマニフェストの中身を深めていくことが重要であり、それがやりやすい立場にある。いづれにしても、マニフェストは固定的なものではなく進化させていくものであるということを前提としてとらえていくことが必要だろう。


 最後に主催者から提示されているNPOと政治との関係について議論していきたい。

 この論議では、NPOにどう政治が介入するしないと言うことは論じる必要は無いだろう。例えば教育基本法では、学校教育に特定の政党が関与してはいけないとされておりこれは当たり前のこと。しかし、同時に教育基本法には「良識ある公民たるに必要な政治的教養は、教育上これを尊重しなければならない」と明確に書いているが、ここのところはほとんど今まで議論されていない。NPO法においても、特定の政党がその目的のために利用してはいけないとされているが、政治やマニフェストに関する課題をNPOがどんどん扱っていくというのは必要なことであり、それが全く無さすぎる。 ▲(参考)教育基本法▲
 今回、政治文化を変えていきたいということが全体の共通点でもあるので、そのこととの関連でNPOと政治の関係や政治文化を変える上でのNPOの可能性についてお聞きしたい。

 ● 三日月氏 【マニフェストづくりに参画し、その評価を!】

 マニフェストづくりにもっともっとNPOの方がその専門性や活動内容を反映されるべきだし、政党の側もどんどんそれを聞きに行かなければならない。民主党の場合、政策マニフェストの作り方が現場・ボトムアップ型であり、それが良いところだ。
 NPOの中には政治色を出すことを嫌って、こうしたことに関わりたくないと考えている方もいるが、取り組まれている課題を実現しようと思えば政治力を使っていかなければ駄目でありマニフェストを評価し進化させていくことに関わっていくことによってNPOの存在感も高まっていくだろう。

 ● 杉原氏 【政策評価型NPOが必要】

 ハワイに友人が運営しているNPOがあるが、このNPOは男女の平等というテーマで活動している。そこでは、ハワイで出版されているものをすべてチェックして、内容を評価しその評価を政党に送るという活動を15年間続けている。
 このような評価をするNPOがもっと出てこないとマニフェストの意味が無くなる。

 ● 上野氏 【マニフェストの評価は決定的に重要だ】

 政策をつくる段階において、できるだけNPOなど多様な主体に参加いただきたいと考えている。自民党も、最近になってそういうことが大切だと気づきはじめて全国でNPOとの対話集会を開催している。それは単に選挙目的ではなく、よりよい政策をつくっていく上での必要性から。
 評価という点については、マニフェストの評価は決定的に重要。
ローカルマニフェストにおいても、自分一人ではできないことを掲げている例もあり、また具体的に何のためにやるのかが書かれていないものもある。こういうことを指摘し、本当に実現可能なのかを評価していくようなところでNPOやマスコミの力が必要。マニフェストが選挙直前で出される場合も多いが、もっと早めに出して内容が判断できるような形にすることも必要だろう。また、自治体の中でそのマニフェストどおりに事が運んでいるのかどうかは、良く気をつけて普段に注視していかなければ分からない。草津市長選に際してまちづくり本舗が出したマニフェストに対して、立候補者がほとんどの項目を「やります」と答えていたが実際それがどうなっているのか、また誰がチェックしているのかということを洗い直すことが必要だ。そういう点でもNPOの力が必要になってくる。

 ● 主催者 【NPOとしてマニフェストの検証と進化のサイクルをつくる】


 コミュニティを再生していくためには、住民自身の意識が変わっていかなければならない。そういう中でNPOの意義は大きい。
 NPOは、社会的に必要とされていることがなされていない事を行動力を持って実際に実現していくもの。そのためには、創造力やチャレンジ精神が必要。
 これまでの活動を通じて感じるのは、自分たちの行動で実現したことを定着させ、それを社会的なしくみにしていく上で「協働」が大切だということ。しかし、実際のところ行政は不作為であり協働は難しいのが現実。その原因は行政を動かす市長や議員の問題であり、NPOももっと政治に向き合わなければならないと考え今日のような取り組みをしている。
 一方、市民の側は前回の市長選では前市長の大きな問題があってあれだけ報道されたにも関わらず投票率が僅か37.66%で白紙委任している状況。また、市議も自治会や組織単位で割り当てが決まっているような感じ。
 これまでは地域通貨を中心に活動してきたが、そもそもNPOで地域を変えていこうという趣旨で取り組んでいるので、こういう現状を変えて行かなければ地域は何も変わらないと考えるようになった。
 今回のようなトーク会を通じて政治との関係を考え協働のありようを模索したり、マニフェストづくりに参画しまた検証し深めていくというサイクルをつくっていきたい。

 ● 三日月氏 【政策づくりのプロセスをつくる】

 政治だけが、また行政だけが公のことをすべてする時代では無くなっている。
 NPOは、それぞれの取り組みのなかで出てくる提言や課題などを政党にぶつけていくことが必要だし、我々政治家は机の上で物事を考えるのではなく町に出てみんなで一緒に政策をつくっていくというプロセスをつくっていくことが必要だ。そういうことができれば、投票率も上がり関心も深まるだろう。

 これから介護保険の改革が課題になってくるので、その改革の過程からみなさんに入って頂く機会をつくっていく取り組みをしていきたい。

 ● 上野氏 【地域に根ざしたローカルマニフェストが必要】

 これまで、政治あるいは政策は官僚が独占しているという状況だった。今後大きな政策転換が必要だからこそNPOの力が必要だ。
 マニフェストは、政治と行政と有権者との関係を劇的に変える一つの道具。これを定着させていく流れの中で日本の政治をより良いものにしていきたい。
 特に、国全体のマニフェストだけではなく地域に根ざしたそれぞれの課題に則したローカルマニュフェストが重要。この場合、政党色は関係無い分野が多い。これからの町をどうしていくのかというビジョン・理念に裏打ちされたものを誰がどのように提示し、誰が実行していくことができるのかということが地方政治においては問われている。
 私自身、農業・環境・まちづくりの問題などを現場の中で物事を吸収してそれを発信していくことの大切さを今回再認識した。

 ● 杉原氏 【今後の取り組みについての問題提起】

 地方分権とマニフェストに関する問題提起を2点。

 第一点目は、マニフェストは2年、NPOは法律ができて6年しか経っていない。阪神淡路大震災のあった95年は日本にとって大きな転換点だった。それまでは、「日本は政治は2流3流であっても経済や治安は良い」という幻想が完全に崩れた。神戸はハイカラで市民意識も高いという感覚があったが、実際現場では社会福祉はなおざりにされていたし情報も不足していた。こうしたことから、コミュニティのあり方や危機管理のあり方について国民一人一人が本気にならないといけないという意味で非常に良いきっかけを与えられた筈なのに、新潟地震や水害の対応を見ていると充分その教訓が生かされていないのが分かる。
 いづれにしても、まだマニフェストもNPOも過渡期にいるので、今回のような機会をもっとつくってNPOやマニフェストづくりをやっていくことが必要だ。

 第二点目は、地方主権ということに関しては、基本的には現状では中央政府が地方に自ら積極的に権限を移譲することはあり得ない。だからこそ、政権交代が必要だし民主党はこれから中央と地方の関係をどうするのかをマニフェストに明記して国民がそれを選択するということを通じて、中央政府と地方の関係が権力関係において構造的に変わるという以外に無いと思う。また、現憲法においては、地方公共団体という表現しか無いし、中央政府と地方政府との関係については明記されていない。来年5月には憲法調査会に最終報告が出るが、この憲法論議の中でも地方自治のありようについて我々自身も関わっていくことが必要だろう。


 最後にNPOと行政との関係について。

 マニフェストの大切な点は、責任の回復。
 また、行政とNPOとの関係においても今一番問題なのは責任と権限が明確で無いと言う点。
 そしてこれに関連して、金を出しても口は出さないという傾向が行政にあるが、補助金という形で税金を使っているにも関わらずやっていることについてはノーチェックであるというのは間違い。

 評価していくためには第三者のチェックが入らなければならない。行政とNPOの関係における監査を第三者が行うというしくみもつくるべきだろう。