地銀協月報 2002年3月号掲載文 |
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(一部加筆修正)
ここ数年、地域通貨の話題が頻繁にメディアで取り上げられるようになってきた。 日本では、まだ始まったばかりの新しい取り組みであることから、実際にその効果を十分に実証するまでには至っていないが、その潜在的な可能性は無限大に広がっている。 地域通貨への多様な期待は、さまざまな分野で具体的な取り組みに向けての検討作業が行われていることからも伺い知ることができる。例えば中央教育審議会においては、奉仕活動やボランティアを行うと貢献に応じて点数がたまり、自分も特定のサービスが受けられるなど地域通貨の仕組みを活用して青少年の社会貢献を促進しようというアイデアが出されたり、中小企業庁においては「地域通貨を活用した商店街等の活性化に関する調査」が行われている。また、自治体では秋田県小坂町が都市総合計画にLETS(Local Exchange and Trading System)の導入を明記したり、神奈川県大和市ではICカードを活用したLOVES( LOcal Value Exchange System=地域電子通貨システム)という大規模なシステムがすでに導入されている。 また、地域通貨の潜在的な可能性は、グラミン銀行のように人への信頼をベースにした地域信用システムの創造や、スイスのヴィアバンクやスウェーデンの JAK(Jord Arbete Kapital 土地、労働、資本)銀行のような新しい金融のありように示唆を与えると共に、現在のグローバル化した金融システムの問題点を補完する役割さえも期待されている。 「おうみ」は、地域内で「ひと・もの・お金」を循環させることによって資源循環型社会やサスティナブルコミュニティの形成を図り、このことによって新しい地域経営のありようを実践的に切り拓くと共に、地方分権時代を迎えて市民社会の成熟を促進していくことを主な目的として活動している。この取り組みは、現在の社会・経済システムのパラダイムを変えていく一歩を踏み出したばかりであり、多くの困難性や問題点を抱えながら地を這うように活動している状況ではあるが、今後の地域通貨の発展に少しでも寄与できればとの思いで本誌に寄稿させていただいた。 【「おうみ」導入の経緯】 「おうみ」は、1999年5月に誕生した。
JR草津駅前にある国鉄清算事業団の土地が高層マンションとして開発された際、その一角の土地と建物が草津市に寄贈されたことから開設された草津コミュニティ支援センターがその生誕地である。草津コミュニティ支援センターは1998年5月からコミュニティ活動のサポートセンターとして運営を開始した。「おうみ」を考案しその運営を支えたのは、センター開設当初から積極的に運営に参画した若いメンバーたちだ。 時折しも、特定非営利活動促進法(1998年12月制定)の論議が盛んに行われていたこともあって、市民による自主運営施設の実験的な取り組みがこの時期にスタートできたのは、「おうみ」が生まれた大きな要素であり幸運である。ここで「実験的」と言ったのは、そうした施設を市民ボランティアによって自主管理することが可能かどうかということやその意義などについて、コンセプトの共有化が十分に行えないなかでのスタートであったことを意味する。つまり、市民営が提示されたものの、最初から運営についていくつかの問題を抱えていた。例えば、管理主体や運営責任の問題、ボランティアによる運営の限界、運営資金の問題、さらには、こうした不安定な条件下で何をどこまでやるのかというミッションに関わる問題などだ。そこで、ボランティアの自発的な協力を基礎とした運営体制の構築とそれをまとめていくための組織のマネジメントおよび経営問題が最大の課題となった。こうした中で考案したのが「おうみ」というしくみだ。 運営のしくみづくりを検討し実践事例を調べていく中で、ニューヨーク州のイサカ市で流通しているイサカアワーズという地域通貨に出会った。街の中心にコーネル大学があるイサカ市は人口2万7000人程の街だが、ここでは6万ドル相当の地域通貨が流通し、約400の商店などでイサカアワーズという通貨がドルと同じように使えるまでに至っていた。しかし、その当時はイサカアワーズ的なものを現実的なものとして捉えることができなかった。通貨という国家主権に関わるものを市民活動という枠組みで扱うことは、フロンティア時代を通じて、コミュニティをベースに国が形成された歴史があるアメリカという国だからこそこうした取り組みも可能であろうが、日本では他に事例もなくそのまま導入することは難しいと考えたのだ。まして、普通財産とはいえ地方自治体が保有する公共施設の場で、また実験的なものだとしてもそれを理解してもらうことは並大抵のことではないだろうと。しかし、より詳しく調べていくうちに地域通貨は大きな可能性を秘めていることを理解するようになり、現状に即しながら段階的に導入していくことにした。段階的というのは、最初はセンター内のクーポン券という位置づけで流通させることから始めるということだ。
このセンタークーポン券が地域通貨として進化をとげたのは、センターと団体との間でのやり取りから、ボランティアと市民活動団体との交換が生まれ、さらにはボランティア同士に交換の幅を広げたことによる。そのきっかけは、センターの事務局運営に協力する個人ボランティアが施設クーポンを受け取ることによって生まれた「おうみ長者」問題だった。事務局スタッフが受け取った「おうみ」を、センターの利用券以外でも使えるようにしなければ貯まる一方になってしまうのだ。そこで、センターを利用する団体が行うコンサートのチケットや講座などに「おうみ」が使えるように呼びかけていった。「おうみ」を受け取った団体はセンターの利用料金として使えるため、相互にとってメリットがあった。このような中で生まれる交流によって、センターを運営する側と利用する側の相互理解が深まり、コミュニケーションツールとしての「おうみ」が一定の成果を上げることになる。 こうして形成されたボランティアマネーが更に地域通貨へとステップアップしたのは、滋賀京阪タクシーという事業所の協力を得たことによる。タクシー会社は、後にNHKテレビのインタビューで「ボランティアが自分たちの殻に閉じこもっている。もっと開かれたボランティア、通貨としての公開性を期待している」と述べているが、我々自身にとって大きな刺激になった。同時に、地域通貨の取り組みに事業所が参画するというのは、内外共に大きな衝撃を与えた。市場経済との接合を否定する考えに基づいて地域通貨を考えているグループから、この動きを危惧する声が寄せられたりした。また、センターを管理する行政関係者やセンタースタッフ・団体からも、共益的なボランティアマネーのしくみが確立していないうちに次のステップに移るのは早急ではないかと疑問視されることになり、結局このことが支援センターから地域通貨おうみ委員会が独立するに至った原因ともなった。「公設市民営」による公共施設のマネジメントに地域通貨を活用するしくみは、地方自治法上での利用料金制度の考え方をわかりやすく表現するという意味でも大変有効なものだと今も考えているが、その後より地域通貨の可能性を広げる展開ができたという意味で活動のフィールドを移したことは間違いではなかった。
@創設期のしくみ 導入当初の「おうみ」のしくみは次のとおりだ。 まず、センター登録団体(40団体)はすべてこのシステムを活用するものとし、各団体に活動助成的な性格として50おうみ(5000円相当)を配布した。同時に、従来無料であった利用料金を有料化し、その利用料金を「おうみ」で支払えるようにした。さらに、「おうみ」はセンターの事業協力や施設運営への協力の度合いに応じて配布されるようにしたが、その配布の源泉は施設利用料金であった。 「おうみ」は、を参考にしてシステムデザインをした地域通貨であることから基本的には紙媒体によるものだが、同時に「電子おうみシステム」と称してロータスノーツドミノを使った口座管理も行い、利用料金の支払いを銀行口座からの自動引き落としの方式と同じようにしたり、事務局スタッフへのお礼を口座に振り込んだりできるように工夫した。このことにより、料金徴収などの事務作業の軽減が可能となったり、誰がどの程度「おうみ」を保有しているのかが公開されることにより、運営への貢献度やその使い方などについて創意工夫が生まれたりする条件ができたのではないかと考えている。 A現在のしくみ
現在「おうみ」を発行している地域通貨おうみ委員会は、2001年 1月13日に任意団体として設立され、4月2日にはNPO法人として認証を受けた。 「おうみ」の発行は、「おうみファンド」への寄付金100円につき1おうみが発行される。紙券のデザインは、当初横長でお札のような型のものを簡易印刷して使用していたが、商品券や金券との違いをアピールし、人と人をつなぐコミュニケーションツールであることのアイディンティティを示すために、2000年 10月より名刺サイズのものに切り替えた。また、使用している素材も琵琶湖の水質浄化機能をもっているとされる葦(ヨシ)や地域で集められた牛乳パックの再生紙を使うなど、地域性と環境にこだわったより信頼性の高いものに変更した。 草津コミュニティ支援センターからの独立以降、センター施設で「おうみ」の利用はされなくなったが新たに「おうみ」を活用した活動を積極的に展開する市民活動団体が現れた。 その一つが大津市で活動されているNPO法人(HCCグループ)である。このNPOには、「おうみ」貸し出し制度を導入している。このしくみは、500おうみ(5万円相当)を市民活動団体に1年間無利子無担保で貸し出し、それぞれが工夫しながら活用していくものだ。大津市のグループではボランティアとして活動に参加した人に「おうみ」を配布し、毎月独自に実施している「おうみマーケット」で野菜や手作り品などと交換できるようにするなど、積極的に「おうみ」を活用している。 また、守山市の活動拠点「守山ステーション」でもこの制度を導入しているが、ここでは生ごみの堆肥化への協力者に「おうみ」を配布し、その堆肥でつくった野菜を「おうみ」で手に入れる事業(やさいくるプロジェクト)をはじめている。代表者がガソリンスタンドのオーナーで店内にはリサイクル品が展示されており、そうした品物を「おうみ」でも手に入れることもできる。現在、地元のNPOなどでもこの制度を活用したいとの申し出もあるが、いくつかの団体や地域で多極分散型運営に移行したことは、相互交流やネットワークづくりという面においても大きな成果だった。 【導入後の効果と今後の展開】 地域通貨導入の成果は、今のところ直接的には非常に評価しにくい。数字上で出てくるものよりも、コミュニティや市民の成熟度といった尺度で表した評価法の方が良いのではないかとも思うが、敢えて若干の分析をしてみた。 @センター活用期の効果 当初センターで使われていた「おうみ」の利用状況および導入後の効果については、次のグラフのとおりである。 (単位:おうみ) 次のグラフに見られるように、「おうみ」の導入によってセンターの利用率が増加した事がわかる。
導入時期の草津コミュニティ支援センターの利用率
利用率の向上は「おうみ」のみが要因ではないが、運営に関わる際の関わり方の選択肢が生まれたことによって、利用の幅が広がったことがこの結果を生み出したと考えられる。また、利用にあたって現金のみで支払っている団体は全体の4分の1にとどまり、他の団体は使用料の一部または全てをおうみによって支払っていた。2000年にスタッフが行ったアンケート調査によると、「おうみ」を利用料に充てられることが良いと感じている団体がかなり多いという結果が出た。また手元の資料では、1999年1月末の時点で、センター使用料に充てられた「おうみ」は777おうみだった。また、4124おうみがボランティアへの実費弁償として支払われている。 「おうみ」の出現によって、「センターにみんなで関わり、みんなで作りあげる」という活動が新たに発生したとともに、積極的にセンターが利用されるようになったのは大きな効果であると考えられる。一般の公の施設は利用に際して事務的な処理がなされて終わるが、「おうみ」が介在することで、市民による「運営」の実感を団体やスタッフがすぐに掴み取れる仕組みになっている。なおかつ団体にとっては「おうみ」で利用料が割り引かれ、団体への活動支援となっていることが、他の施設よりも積極的にセンターを使おうと感じさせる効果があるのだろう。 私は、地域密着型中間支援組織としての草津コミュニティ支援センターで、地域通貨という実践的なツールを有効に活用することによって、より高いコミュニティ支援の効果を生み出す可能性があることを今でも確信している。しかし現実的には、内部的にもまた周りの状況から考えても行政と関係の深いセンター内でこの取り組みを続けていくことができなかったのが非常に残念である。地域通貨の普及とコミュニティの成熟度の関係は、今後検証していきたいところである。 A 京阪タクシーにおける効果
次に、2000年6月よりおうみが使えるようになった、滋賀京阪タクシーにおける効果であるが、当初の利用内訳は次の表のとおりである。
タクシー会社は「おうみ」を受け入れている理由として、「これからの企業は、地域の中で儲けるか地域に根ざして信頼されるものでなければ成り立たない」と述べている。会社側からは「もっと使っていただき地域に貢献したい」との要請もあるが、全体の流通量が少ない点と、市民の発行する単なる紙切れが「本当に使えるのか?」「使っても良いのか?」という感覚が利用率を上げない要因となっているようだ。 なお、現在タクシー会社に集まった「おうみ」は、洗車用の環境石けん購入などにあてられているが、今後の使い方として、幼稚園や小学生が行う駅周辺の清掃のボランティア活動に対してそのお礼として「おうみ」を配布する事業を計画している。
【定着化に向けてのアプローチ】
「ひとの駅」設置以降の取り組みと今後の課題
2001年1月に地域通貨おうみ委員会を設立して以降の「おうみ」は、その活動の足場をセンターから商店街に移した。2001年4月に交流拠点「ひとの駅」を駅前繁華街にオープンしたのだ。「ひとの駅」は、「おうみ」が人と人とをつなぐ切符の役割だと考え、人が集いそれをやり取りする場をイメージして命名した。 センターという行政が一部関与する中での半ば閉じられた空間から、商店街という経済生活の場で定着させていくアプローチを行うようになった中で特に力を入れたのが草津市商店街連盟(加盟店数366店舗)との連携である。その一つとして2001年11月より商店街連盟の協力を得て、「びわこづち」という新しい型の地域通貨の実験的事業を行った。 「びわこづち」は、琵琶湖の浚渫泥土で作ったしずく型の陶製コインだが、アクセサリーとしても使えるように紐を通す穴が開けられている。「びわこづち」が従来の地域通貨と違う点は、商品貨幣的な要素をもっていることだ。地域通貨に商品性を持たせることによって、活用の幅が広がるのではないかと考えて考案した。「びわこづち」は当初、協力店18店舗でのスタンプシール事業と併用したしくみで発行したが、2002年2月には商店街のイベント「七福神まつり」で1000個の「びわこづち」を配布し、期間限定ながら加盟店全店で使えるようにした。 【問題点や今後の課題】 @ 地域通貨固有の問題や課題 「おうみ」は、地域通貨の取り組みが全国に広がる当初から運用を始めたことから、様々な問題に直面し、自力でその解決をしていくことが求められてきた。 例えば、「おうみ」の発行基準をどうするのか、その経理処理や法律・税務問題などの整理といったことだ。とりわけ、2000年6月から地元タクシー会社が「おうみ」受け入れを表明されてからは、ボランティアマネーという性格の地域通貨から一歩進んだ形態への移行が求められた。同時に、懐疑的な目を持つ当時の行政との関係やボランティアの成熟度の問題など、地域通貨を定着させる上で困難な状況が続いた。また実践事例が少ない中で、報道や全国からの視察・問い合わせへの対応など、地域通貨の「広報部」的な役割を担うような要素もあり、その波を乗り越えると同時進行で着実な展開が求められたことも大きなプレッシャーになった。「おうみ」のしくみやアイデアのみが先行し、法的な不備によって、地域通貨という新しいムーブメントに水を差すようなことになっては困るからだ。 しかし、地域通貨発行の際に関係すると思われた関係諸法のうち、「前払式証票の規制に関する法律」や「出資法」などに関しては、運用上の取り扱い方法を工夫すれば適用除外となることや、事業所での利用に際しては、例えばタクシーの場合だと陸運局や公正取引委員会および税務署との調整により可能なことが明らかになってきた。さらに、国の通貨主権との関係から「紙幣等類似証券取締法」や「日本銀行法」などについても検討してきたが、最近になってさかんに論議されている電子マネーに関する国の審議会などの内容から、問題ないことがわかってきた。 一方、実際に広めて行く上での課題は現在も山積みになっている。 ユーザーや使える場の確保、行政・市民活動団体などとの連携など現実には大変難しい。多くのユーザーやセクターが地域通貨を活用しなければ、ものやサービスのやりとりの輪がどこかで途切れてしまうため循環しないのだ。こうした中で特にまちの財源や人材ならびに公共施設などの地域のリソースを持つ自治体には地域通貨を是非とも受け入れてほしいが、その際に財務上の取り扱いや条例 改正などが必要な場合もあるようで、残念ながら今のところ地元自治体が参画する動きは全く無い。しかし、滋賀県野洲町のように先駆的に受け入れを図っている事例も参考としながら、パートナーシップによって是非とも成功させていかなければならないだろう。さらに、今後の地域総合カードとの関係や、より汎用性の高い地域通貨を成立させていくためには、地域の金融機関との連携も必要になるのではないかと考えている。
A運営主体となるNPO全般の問題と共通する課題 現在、全国の地域通貨はコミュニティのパワーを引き出すためにも、その発行主体をNPOが担うことが望ましいと考えているが、その活動を支えていく基盤が確立されていないなかで共通の課題を抱えている。当委員会も年間1万円の会費を納入する市民ボランティアによる運営とし、NPO法人格を申請しているところだが組織の脆弱性や継続のための財政的な問題など、解決すべき課題は多い。 例えば、「ひとの駅」という拠点運営に関していえば、常にオープンするための人材や事業並びに事務を支えてくれるスタッフに費用負担が出来ず、相当な負担をかけていることや、家賃および運営のための必要経費についても現在は視察の際に協力いただくカンパなどによりなんとかつないでいるが、行政からの支援が皆無であるため財政事情は大変厳しい。 また、2001年は滋賀県のパイロット事業で助成金の交付を受けることができたが、一方で頻繁に行われる関連イベントや会議への参加が必要であったりして、大きな負担が伴ったのも事実である。そうした行事などに参加することは県内の団体や個人との交流やネットワークを広げると言う意味では大切なことだが、それを受け持つ専任の担当者をつけなければならない状況の中で、行政からの支援のありようについて考えさせられるものとなった。一方、滋賀県の研修センターが実施した年間20日間に渡る研修に福祉部門に勤務されている2名の県職員が派遣されたが、これらの体験は双方にとってこれからのパートナーシップのありようを考える良い機会となったことは確かだ。 地域通貨の取り組みを始め、新しいパブリックの領域に属する活動を誰がどのよう支えるのか、あるいはサスティナブルなものとしていくためのしくみをどのように形成していくのかは今後の最も大きな課題だろう。 【最後に】 地域通貨は社会問題の解決や地域経済の活性化の特効薬やカンフル剤ではなく、漢方薬のようなものだといわれている。それは、地域社会の体質を徐々に改善し、その結果として循環型社会を形成し地域経済の活性化にもつながるという意味だ。とわいえ、パブリックな価値を人々の善意の意識性だけに期待し、啓蒙していくだけではそうしたものに結びついて来ないのもまた現実の姿だろう。例えば、商店街での活用をいう時、「すぐにお客が増えて儲かるのか」という私益発想だけで地域通貨を導入するのでは、本来の効果が生み出せないだろう。しかし、「おうみ」の名が「おうみ商人」からあやかっているように、商店や企業(売り手)が儲かり、市民(買い手)も得をし、同時にコミュニティ(世間)も活性化するようなしくみとしなければならないと考えている。 また、地域通貨は、法定通貨のように法的強制力や国の信頼に基づいて流通するものではなく、人々の信頼と信用がベースとなる。それを使う人およびセクターとの関係構築という実践的な要素が大きな意味を持っているのだ。このことから、単なる理想論やそれをシステムとして開発するだけではなく、市民がこのツールを自分たちの地域のために本当に役立つものとして活用できるようにしていくマネジメント能力を持たなければ決して広がらない。さらに、多くの人々に使われるようにするためには、できるだけシンプルでわかりやすく、使いやすくしていくことが必要だろう。 本文では紙面の関係で詳細は言及しないが、今までの「おうみ」の取り組みのなかで蓄積してきた経験を生かして、こうした考えに基づいた新しい取り組みを始めることも決まっている。 いずれにしても、全国的にもまだまだ社会実験的な要素の強い取り組みではあるが、このプロセス自身が新しいコミュニティを形成していく力となることを信じて、組織的にも財政的にも非常に厳しい中ではあるが、今後も全力で活動を続けていきたい。 地域通貨おうみ委員会 事務局長 山 本 正 雄 |
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