草津まちづくり読本

草津塾の挑戦と課題




発行にあたって

 98年12月、特定非営利活動促進法(通称NPO法)が施行された。そして今、市民が公共的価値を創造し担っていくという実態形成のアプローチが求められている。しかし、自らがその道を切り開きながら歩もうとしている人々は果たしていかほど存在しているのだろうか? まちづくりへの市民参画の必要性やその理論・構想が定式化され、また構造改革の必要性は肌で感じながらも、それを他人事のように受け止めたり、いざ自分自身がその担い手として問われると、一歩も前に進めない現実こそが本当の危機であるということを我々自身が真剣に受け止めていかなければならない。

 ところで国家の衰亡をかけた「待ったなし」の構造改革は、どのような社会をめざしているのか。世界と日本の関係、国と地方との関係、地方自治における市民と行政との関係はどうなるのだろうか。それぞれのあり方や原風景を描き出し、イメージ化できてはじめて改革のエネルギーは生まれる。
 草津塾のイメージする社会・地域像・市民像・まちづくり像は、地方分権推進委員会中間報告で示されている「この変革はわが国の政治・行政の基本構造をその大元から変革しようとするものであり、その波及効果は深く、広い。それは明治維新・戦後改革に次ぐ『第三の改革』というべきものの一環であって、数多くの関係法令の改正を要する世紀転換期の大事業である」という観点から導きだしている。
 私たちは、こうした転換期の時代を実践的に切り開く先頭に立つと共に、黒船の来航をもって始まった明治維新を松下村塾から輩出した志士が担ったのと同様、この社会構造の抜本的転換を実践的に担う、いわば平成維新を担う志士の形成を目指したいと考えた。そして、武士道が文武両道をその規範とするのと同様、草津塾では社会を見る眼や改革のための知恵を磨き、それを実現化していくための行動力を養うための修行の場としての機能を確立していくだろう。

 1999年度より適用される「草津市都市総合計画」は、「行政と市民のパートナーシップ」をまちづくりの基本とすることが確認されている。まちづくりの担い手は行政やコンサルタントではなく、本来市民自身であり、その存在に依拠した行政やコンサルタントなどの専門機関がサポートしていく関係のあり方こそが必要なのである。
 草津市は、歴史的に交通の要所として発展してきた。その利便性や情報機能をいかしながら、グローバルな課題とリンクした「郷土愛」にもとづき、地域を構成する各セクターの役割を見つめ直すことを伴いながら、まさしく「パートナーシップ」によってまちづくりをおこなうことが求められている。

 本書「草津まちづくり読本」は、市民と行政との対等性を醸成し、市民社会形成に向けてのステップアップしていく一助として活用され、草津市への市民の思いが、公共的な多元的実現性へと結実していくための起点となることを願うものである。




目     次


はじめに  ・・・・・・・・・・・・ 4 〜  5 

 第1章 草津塾の形成と社会情勢 ・・ 6 〜 12 
 
 第2章 草津塾の理念 ・・・・・・ 13 〜 17 

 第3章 草津塾のプログラム ・・・・18 〜 76 

 第4章 NPOとしての草津塾 ・・・77 〜 80 
 
 第5章 今後の展望 ・・・・・・・・81 〜 85 
 

 班活動(実践・資料編)

  1.環境班  ・・・・・・・・・・ 88 〜  97
  2.情報班  ・・・・・・・・・・ 98 〜 101
  3.共生班  ・・・・・・・・・・102 〜 109
  4.アート班 ・・・・・・・・・・110 〜 111
    関係論文 ・・・・・・・・・・112 〜 137
 
 草津のまちづくりデータベース ・・・138 〜 167





はじめに

なぜ草津塾構想を立ち上げたか


 草津塾構想は、私たちの住む草津という地域共同体をどのように描き、そこに向けていかに創造していくのかという基本原点を問うなかで生まれました。

 草津塾構想は次の3つの軸からなります。

1.市民参画のしくみづくり 
2.シティマネジメントのための人材育成
3.パートナーシップによる
  まちづくり機構の形成


 まちづくりとは、「まち」を「創る」ことです。
ではいったい「まち」とは何なのか、「創る」というのはどういうことなのでしょうか。

 この「まち」とは、公園や町並み、公共施設などのインフラや自然環境などという目に見える物質的要素と、生活する上でのルールや意識、教育や文化などという目に見えないものの総体としてとらえることができます。
 私たちが「町づくり」や「街づくり」ではなく「まちづくり」と表現するのは、二次的自然である環境も含めた物質的要素である「物」は人と人との関係(者)から創られるものであり、人づくりやしくみづくりが「市民の手」でおこなわれることによって、人と物との総体としての「まち」を創っていきたいと考えるからです。
 
 では、そうしたまちを「創る」というのはどういうことなのでしょうか。「創る」という行為は、共同体として地域をとらえた場合、市民という「個人」が主体となって、その市民による組織やしくみをどう形成していくのかということからはじまります。

 市民が知恵を出し合い、異なる意見をマイノリティに集約しながら、合意を形成し実行していくしくみづくりをどう創るのかというなかで、その前提となる「市民参画のしくみづくり」が求められます。
 「市民参画のしくみづくり」とは、市民がまちづくりに参加し、意思決定に主体的に関わったり自ら行動していく機会をつくったり、まちづくりに興味をもって自ら自主的に責任をもって参加するための「参加のデザイン」を行うことです。
 かつては、公益的な事業はほとんど行政が独占的におこない、市民がそれに関わるという制度や社会構造がほとんどつくられてきませんでした。しかしこれからは、地方分権の推進やNPO法の制定によって現れているように、市民がまちづくりに参加することが不可欠な要素となっています。 
 こうしたことから、市民参加のための手法を開拓し、市民がまちづくりに積極的に参画していくための基盤を形成すると共に、そのためのしくみづくりを担おうというのが第1の軸である「市民参画のしくみづくり」です。 

 次に、私たちは草津塾構想における「市民参画」というものを、どのようにとらえていくべきかについて考えました。
 参加型まちづくりが各地で行われていく中で、市民の参加の枠組みが単に行政機関の計画におけるアリバイづくりや表層的な所での参加で終わることも増えてきました。
 草津塾ではこうした「形式的」な民主主義ではなく、市民自身が都市計画や地域経営に関わることができるような「本質的かつ実質的」な参加形態を求め、つくっていかなければなならないと考えました。また、行政と適度な緊張関係を保ちながら地域を構成する各種団体・企業とも連携してながら、シティマネジメントそのものを市民が担うことを目指して活動していこうということが「シティマネジメントのための人材育成」という2つ目の軸です。

 最後に、平成の時代と共に進展している冷戦後の新しい社会構造づくりは、異なった価値を前提とした対立関係から「共通の価値」を創造していく「協働関係」への転換の時代を迎えていることをあらわしています。
 対立関係から共通の価値による協働関係への転換は、これからのまちづくりにあっては不可欠な要素です。
 では、地域を構成する人や組織が相互信頼関係に根ざしたパートナーシップを形成していくためにはどのようなしくみが必要なのでしょうか。まちづくりにおけるパートナーシップとは、市民(NPO)・行政・企業・諸組織が相互作用によって創造的な効果を発揮していく関係のことです。

  このことから、草津塾は草津の「人」や「組織」などの資源を最大限に活性化させ、行政機関との緊密な連携を基本とした市民参画によるまちづくり推進機構の確立へ向けてさらなる展開を目指すことが3つめの軸となる「行政とのパートナーシップによるまちづくり機構の形成」です。


 なお、本書では現段階での草津塾を総括し、今後の草津塾構想の実現や草津のまちづくり活動全般への「触媒効果」をもたらせればと考えています。




1−1 構造改革の時代

 わたしたちはどのよう時代に生き、どのようなまちづくりを目指さなければならないのでしょうか。
 
 私たちは「地域」(コミュニティ)というものを、たとえば個々人が社会とは無関係に存在しているのではなく相互に影響しあいながら社会の一員として共同体を形成して発展しているのと同様に、グローバルな発展をつづける社会において独自の資源や個性を生かしながら相互競争・相互依存関係においてサスティナブルに発展していくありさまだと考えています。
このことから、草津塾は閉鎖的で分離・独立型の地域主義や消費型ふるさと主義とでもいうような形でのまちおこしをしようとしているのではなく「開かれた地域主義」とでも表現されるような地球益・国益と郷土の利益をリンクさせる形態をつくることを前提としています。
 この「開かれた地域主義」に根ざしたまちづくりを展開していく上において、「時代を読む目」がマネジメントを担うことを目指す私たちにとっては最も重要なことです。

 そこでまず本書では、今の時代=草津塾の形成される時代をどのように読むのか、ということから考えていきたいと思います。

 時代の大きな流れをよむポイントとして、日本の政治の動きからとらえるとするならば、6つの改革として政府が打ち出している「構造改革」について考えることが良いのではないでしょうか。(資料参照)
 構造改革とは、今までの社会のありようや既存の制度・組織などを抜本的に改革することであり、そうした改革なくしてグローバル社会において信頼ある国家としてサスティナブルな発展をつづけることができないという事実から発せられているものです。

 この大局的な流れから、まちづくりにおいては行政や市民そのもののありようや相互関係そのものを「構造改革」していくことが求められているのではないか、という観点から草津塾構想が生まれました。従って、私たちは既存の「市民」「行政」「しくみ」などの現状からスタートするのではなく、その抜本的改革や次の時代のまちづくりを担うという創造的観点からスタートしました。


 
 構造改革について

<以下、首相官邸のホームページ
http://www2.kantei.go.jp/jp/kaikaku/より抜粋>

 「日本は、今、新しい時代の創造に向けて変革の胎動期ともいうべき時代に入っています。」世界が一体化し、人、物、資金、情報が自由に移動する中で、企業が国を選ぶという大競争の時代が到来しその中で、日本は、高コスト構造など構造的な要因を背景にして、産業や雇用の空洞化が進むのではないかとの懸念が生じています。更に深刻なのは、世界の歴史の中でも類を見ない急速な速さで進展している少子高齢化、その結果として21世紀初頭に予想される日本経済の潜在的な成長力の低下です。
 また、現在先進国の中でも最悪の状況となっている財政、高齢化に伴う社会保障給付の増大を、このまま放置するならば、これに起因する財政赤字・国民負担は急増し、経済や社会の活力も失われてしまう危機的な状況に直面しています。
 このような内外の環境の変化の中で、戦後50年間日本を支えてきた経済社会システムが、かえって日本の活力ある発展を妨げている状況が生じています。世界の潮流を先取りする新しい経済社会システムを創造するため、行政改革、財政構造改革、社会保障構造改革、経済構造改革、金融システム改革に教育改革を加えた6つの改革を一体的に推進していかなければなりません。この6つの改革は、21世紀の日本を、国民一人一人が自らの将来に自由な夢や目標を抱いて 、個人個人の創造性とチャレンジ精神を発揮できる社会、世界の人々と分かちあえる価値を創り出すことのできる社会とすることを目指すものです。



 
橋本内閣「変革と創造」
     〜6つの改革


 政府は、世界の潮流を先取りする経済社会システムを創り上げるため、次の6つの改革を一体的に推進しています。

●行政改革
 規制緩和、地方や民間への業務・権限の委譲を行い、行政をスリム化し、真に国家、国民に必要な行政機能を見極め、国民が求めるサービスを最小の費用で提供できる行政、経済社会の変化に柔軟に対応できる行政を創り上げます。

●財政構造改革
 2003年度(平成15年度)までに、国及び地方の財政赤字対GDP比を3%以下とし、公的債務残高の対GDP比が上昇しない財政体質を実現すること等を目標に、歳出全般について聖域なく見直しを行うこととしています。

●社会保障構造改革
 急速な少子高齢化の進展に伴う国民の需要の変化に適切に応えるとともに、医療、年金、福祉等を通じて給付と負担の均衡がとれ、かつ、経済活動と両立しうる、サービスの選択・民間活力の発揮といった考え方に立った、効率的で安定した社会保障制度の確立を図ります。

●経済構造改革
 既存産業の高付加価値化を含めた新規産業の創出に資するよう、資金、人材、技術等の面で環境整備を行います。また、抜本的な規制緩和等によって、産業活動の基盤的要素である物流、エネルギー、情報通信、金融についての高コスト構造の是正を図るほか、企業や労働をめぐる諸制度の改革や社会資本の効率性の向上などにより、我が国の事業環境を国際的に魅力あるものとする改革に取り組みます。

●金融システム改革
 2001年までに、我が国の金融市場がニューヨーク、ロンドン並みの国際市場となって再生することを目指し、金融行政の転換、市場自体の構造改革を図ります。金融市場については、(1)Free(市場原理が働く自由な市場に)、(2)Fair(透明で信頼できる市場に)、(3)Global(国際的で時代を先取りする市場に)の三原則により改革を進めます。

●教育改革
 我が国の人材を育成するという視点と同時に、子どもの個性を尊重しつつ、正義感や思いやりなど豊かな人間性や創造性、国際性をはぐくむという視点に立って、教育改革を進めます。今、構造改革の時代だといえます。



草津塾構想の時代背景 

 〜構造改革についての経済界の認識



改革実行への我々の決意

1997年年頭見解

経済同友会は地球規模の市場経済化の流れを見据え、21世紀の我が国の経済・社会の構造改革を目指して、積極的な提言を行ってきた。第二次橋本政権成立後、我が国においてもようやく改革への気運が高まりつつある。我々は政府の提案する構造改革計画の速やかな実現を積極的に支援するとともに、我々も自らの改革に取り組んでいく決意である。昨年末の税制改正や予算編成に対して、株式市場や外国為替市場は重大な警告を発している。もはや改革の先送りはできない。本年こそ改革元年としなければならない。

改革のスピードを加速しよう
 改革の実行は、世界の動きに遅れを取るものであってはならない。
 米国や英国の構造改革は70年代に始まり、本格的な規制緩和を実施したのは80年代であったように、我が国は改革の出発点においてすでに出遅れている。
 さらに現在、世界各国は21世紀の世界経済における自らの地位確保を目指して、欧州は1999年の通貨統合、米国は2002年を目標とした均衡財政の確立と、それぞれ強い決意で取り組んでいる。アジア諸国も香港返還に象徴される歴史のうねりの中で、市場経済の深化を梃子に、さらに経済発展に邁進しようとしている。我が国が遅れを取り戻し、世界の流れに伍していくためには、改革のスピードを加速しなければならない。我々は、21世紀までに残された4年間が、21世紀の日本の行方を決める重要な岐路であることを考え、重大な決意をもって改革推進にあたりたい。

改革は例外なしに進めよう
 そのような改革は、総合的な視点で例外なく実行しなければならない。高齢化、サービス化、成熟化する日本社会に活力ある繁栄を築くために、さらに地球規模の大競争に勝ち抜くためには、戦後50年を経てあらゆる場面に定着してきた古い体制を全面的に見直すことが不可欠であり、改革は総合的でなければならない。改革への取り組みが旧来のままの縦割りの枠組みで行われるならば、意味ある改革はできない。例えば、財政構造改革は、歳出、歳入の一体的な見直しはもちろん、中央と地方、一般政府と公的企業や外郭団体を含めた公的部門全体の問題として、総合的に捉えなければならない。
 次に重要なことは、例外を作ってはならないということである。これまでともすれば摩擦の少ない分野、手を付けやすい所から、改革と言いつつ実は単なる改善に終始する政治や行政の体質は改めなければならない。抵抗が大きい分野でも、難しい問題でも、もはや先送りは許されない。総合的な見地から、勇気を持って大きく決断し、実行する必要がある。例えば金融システムの改革は、郵貯や財政投融資の改革を含めないで済ませることは、事実上不可能である。
 改革を進めるためには、我が国が置かれた状況の厳しさを、まず冷静に、そしてありのままに認識しなければならない。その上で、企業も、また国民各位も、改革の期間はかなりの苦しみと痛みに耐えることを覚悟する必要がある。痛み無しには改革を実現することはできない。戦後50年の間に形成された、歳出、歳入全般にわたる政府の施策への依存と既得権、あるいは地方自治体における既得権をまず白紙に戻すことが必要である。前回の選挙の消費税率引き上げの容認は、国民が既にその決意の一部を示したものと理解している。 改革は国民の理解を得ながら進められるべきだが、その本質は旧来の枠組みの創造的破壊であるだけに、個別の分野での合意がすべて整うのを期待することは事実上不可能である。改革は痛みを越えて進めなければならないからこそ、決定のプロセスをオープンにし十分な説得性を持つ説明を行うことが重要である。また、改革の実行には、国民、消費者、従業員に敢えて厳しさと痛みを訴え、共感を求めることが出来る指導力が必要である。その痛みを乗り越えた先に、新たな展望が開ける。

おわりに
 経済同友会は改革の実行プランとして「市場主義宣言−21世紀へのアクション・プログラム−」をまとめた。市場メカニズムは、市場参加者に機会均等と自由な活動を保障し、その切磋琢磨によって効率的で競争力ある経済を創り出す。そのような経済基盤があってこそ、国民生活の豊かさと安全を確保することが出来る。改革に伴う痛みは、従来よりもはるかに厳しいものがあるが、我々自身の責任において受け止め、我々自身の力で乗り越えていく。また、経済同友会は常に経済社会全体の立場に立って、21世紀の繁栄のために行動することを理念とし、個別の既得権擁護には一切組みしない。
 「市場主義宣言」は、企業・経営者として公的規制や民民規制など、規制で守られた従来の枠組みから抜け出し、我々自身のイニシアティブによって自由で競争的な市場への再設計を行い、そうした市場に立脚して自らを律し、行動していくことの決意の表明である。 (http://www.doyukai.or.jp/より転載)




1−2 地方分権とまちづくり

 構造改革の一環として進められている「地方分権」は、これからのまちづくりのありようを大きく変えるものとなるでしょう。
 草津塾の理念は、地方分権の意義や潮流をどのようにとらえ、地域自身がそれをどのように迎えていくのかという問いから生み出されました。
 
「この変革はわが国の政治・行政の基本構造をその大元から変革しようとするものであり、その波及効果は深く、広い。それは明治維新・戦後改革に次ぐ「第三の改革」というべきものの一環であって、数多くの関係法令の改正を要する世紀転換期の大事業である。したがって、それは一朝一夕に成し得る性格のものではない」。(地方分権推進委員会中間報告〜地方分権推進の趣意)

 明治維新、戦後改革に次ぐ「第三の改革」が求められている背景には、それを成し遂げなければグローバル社会において国家的衰亡を迎えるというシナリオが見えてきたというものがあり、このことから社会構造や機構および国民そものもの意識構造が再編され、たとえば護送船団方式や日本型社会主義といったものからの大転換期が必要とされているのです。また、国から地方への権限移譲などにより地域の特性を生かしたまちづくりや独自性・自主性によるまちづくりの実現ができると同時に、地域間競争のなかで勝ち抜く「知恵」が求められ、結果に対する「責任」が伴うものとなります。 

では、地方分権時代におけるまちづくりには何が求められるのでしょうか?
 本来的には、まちづくりの仕組みとして最も重要な役割を果たすべきところは自治体です。
 そこには、まちづくりのための資金や組織が集まり、その運用のために市民が市長や議員を選んで必要な権限を与えています。
 しかし、本当に自治体(行政)は、市民のためのまちづくりを行なってきたのかというと、そうとは言えません。
 逆説的に考えると、最近よく耳にする「市民と行政とのパートナーシップによるまちづくり」や「まちづくりへの市民参画」という言葉そのものが、従来のまちづくりの実態を示しています。同時に市民の側も、税金を納めたり選挙(投票)という形態のみで「市民としての責任」を果たしていると考えていたのではないでしょうか。
 中央集権は、上意下達型でものごとが決定され実行されていきます。それとは反対に地方分権とは、市民が直接まちづくりに参画しながら、それぞれの地域を「自治」していくしくみであり、こうした「自治」の過程そのものが「国」や「地域」の健全性を保証しうる基盤となるのだといえます。
 こうしたことから、地方分権時代におけるまちづくりには、従来の間接民主主義とオルタナティブな市民参画による直接的民主主義とのマッチングや連携が求めているのです。

 最近、国の開発援助政策のあり方についてさまざまな議論が展開される中で「グッド・ガバナンス(good governance)」という概念が用いられています。地方分権とまちづくりを考える時にも、このグッド・ガバナンスという概念の4つの構成要素である @アカウンタビリティー A法の支配 B参加と組織的多元主義 C透明性、といった基本原則に基づいて、自治体の意思決定や統治のありようを再編していくことが必要なのではないでしょうか。



1−3.構想から実践へ

 平成の年号と共に、戦後冷戦体制に変わる新しい価値観やしくみづくりを模索するプロセスが進行しています。
 日本では、バブル景気の中で消費と浪費、グルメや海外旅行ブームといった中で時代の転換期を迎えました。
 そして湾岸戦争では1兆円もの負担金を拠出したにももかからず、国際的な信頼を得ることができないままでポスト冷戦の模索が始まりました。
 そうした国際的な環境の変化と国内的な経済の停滞のなかで、政府をはじめ各所から現状に対する危機感やあるべき姿に関する論議が行われてきました。しかし現在最も必要なことは、リスクを負ってでもそれを実行する行動力とそれを可能とする組織的基盤づくりではないでしょうか。
 従来のやり方や既得権を廃止し、新たな手法やしくみをどのようにつくっていくのか。そのために自分自身が立脚しているところで何をなし得るのか。私たちが問い続けなければならないのは、このような実践的姿勢が必要だということであり、あろうべき姿を夢想したり他人事のように情勢を評論し責任なき提案を行うというものでは断じてありません。

 草津塾が単なる提案や論議の場ではなくオルタナティブな姿勢を基本としたのは、構想段階から実践への転換という時代背景を反映したものでした。


(草津塾と時代背景)

市民・行政の役割と政策について(投稿文)


 冷戦体制の崩壊を向かえた90年代に入って以降、経済や社会のグローバルな相互依存関係が益々強まり、グローバルスタンダードとしての民主主義の確立や、地球益と国益および地域益を結びつけた社会構造の構築が必要とされる時代を迎えている。そうした中で、明治維新、戦後改革に次ぐ「第三の改革」とも位置づけられている地方分権は、国家および地方(国民)との相互関係の再編を伴いながら、新しい時代を担う「市民」の醸成を要求している。
新しい時代とは、旧来の階級社会的構造から構造社会への転換を意味し、自立した社会的責任を担いうる市民による市民社会の時代を意味する。
地方分権が目的とする地方自治は、民主主義を成熟させていく上での重要な社会システムであり、市場経済原理と共に、グローバルスタンダードとして時代牽引する原動力となることだろう。また、 地方自治はそれを保障する社会・経済システムの確立が条件となり、自由選択・自己責任による分権社会は、それを担う市民とその代表として機能する行政組織の存在が不可欠となる。このことから地方公共団体においては、自らの責任において、社会経済情勢の変化に柔軟かつ弾力的に対応できるよう体質を強化し、アカウンタビリティや政策評価システム導入などの装置が必要になるだろう。
さらに、地方における政策立案においては、グローバル社会における共通の価値観にもとづき、地方における政策をそれとリンクさせて考えることが必要となり、地球益と国益および地方益を結び付けていくための開かれた地域主義ともいうべき「地球市民的発想」ができなければならない。逆にいうと、 地方分権は、単なる「ふるさとづくり」や「分離独立型」の閉塞した構造を醸成するののであってはならない。
そうした観点から、地方分権時代において課題となるは、@政党政治の確立とその中で形成される地方議会などの活性化による、代表民主制の基本的条件の確立、およびコミュニティにおける直接民主制にもとづく主体的な市民参加を連動させていくこと A市民が主権者としての自覚と責任に基づき行動し、行政との対等性を確保した上でパートナーシップを形成していくこと(NPOの促進) B地方行政機関の職員が、成熟した市民像を体現した主体となり、プロフェッショナルな市民としての立場から、行政運営を行うこと C地域経済を持続的発展が可能でかつ危機管理能力があるシステムへ転換する。そのために、企業・教育研究機関の連携や農業政策などを再編していくこと D自発的で責任性ある行動およびさまざまな場面での公開性を確保していく意味からも、地域情報化などの条件整備を図ること E行政依存人から経済自立人への転換を促進する ...などがあるだろう。
 このような課題の解決に向けて取り組むべき問題は、@地方分権を担う「求められる市民像」を全体の共通認識としていくプロセスを共有し、その市民像を体現していく先頭に行政職員が自ら自己形成するための条件づくりを行う A市民およびNPOに対し、その可能性を促進していくための各種自立支援策 Bあらゆる場面において、移行期における競争原理確立とヨーロッパにおける「フリーコミューンの実験」の思考の導入 C自立した地域経済確立のための産官学民連携 D行政が担うべき領域と市民が直接担うべきことを実態的に仕分けしていくための施策 ...など。
地方分権時代における政策について考えるとき、この課題が大きな歴史的転換のなかで進行していることから鑑み、歴史的・社会的な大局観に立った上で、琵琶湖を抱える滋賀県→草津市の地方分権時代における「原風景」を共通の認識とすることがあってはじめて有効な施策を形成しうると考える。

                                    山本正雄




1−4.草津での「まちづくり」
  〜湖南の地域性と地域の魅力づくり


 ところで、草津というまちはどのようなまちなのでしょうか。 
歴史や文化・自然環境などの特性やその分析などは「草津市総合計画」(巻末資料参照)などの専門文書にゆだねるとして、ここでは最近のまちづくりにける草津の特異性について考えてみたいと思います。
 草津市は、京阪神の都市部に近く、また交通の便も良いため「ベッドタウン」や「商工業都市」として発展してきました。
 駅前再開発をはじめ、「草津にビル建設用クレーンの姿が消えたことがない」(学生まちづくり座談会)と表現されるように、都市化の進展が著しく進んでいます。また1954年に市政が施行された当時は32,152人であった人口も、1994年に立命館大学のびわこ・くさつキャンパスが開校されたことなども影響して1995年6月には10万人を突破しました。

 急速な都市化は、国でたとえるなら「開発独裁型」とでも表現されるような方式で進められ、開発のための承認を得るという必要はあったとしても、都市としての計画づくりに市民が参画することは求められてませんでした。一方、「開発独裁型」というのは必ずしも悪い方法であるとはいえず、経済の拡大再生産期や社会的危機状況下などの一定の条件下では、有能な指導者による意思決定やその迅速な決断が有効に発揮されるという利点もあります。
 そうした過程で都市が発展してきたことの是非はともかくとして、草津市は、現実に都市化が急速に進展し経済的にも比較的豊かな地域として外発的発展を遂げてきたと同時に、京都・大阪などの都市部への文化の依存や人材の流出および外向きの依存的な意識構造が形成された一面をもっています。

 しかし、グローバル化・情報化でサスティナブルな発展が求められている時代だからこそ、外発的なものではなく市民による内発的な展開が必要とされ、草津という郷土に愛着を持ち、こだわり続けていく意識がなによりも大切なことだと考えます。






2−1 草津塾の求めた理念

 草津塾は、市民・行政・大学・企業など、地域を構成するすべての人々が、まちづくりに関する共通の課題や目標を見いだし、共同で解決していくためのシステムづくりを目指してきました。
 草津市という地域を鳥の目で見ることによって見えてくる問題点と、虫の目で見ることによって見えてくる問題点。これら2つの問題に関わることができるのは、やはり市民の市民による市民のための組織であると考え、草津塾の活動をしてきました。行政による地域開発から、市民もしくは多様な主体の協働に基づくシティマネージメント(都市管理)を目指してきたのです。
 しかしこの前提には、率先して地域を引っ張っていく市民に極めて成熟した自主性と責任が必要です。従って、地域の担い手としての意識と知識を高めるのも草津塾に必要とされた機能です。
 また、草津塾では地域の問題を掘り起こし対処から解決へ導く活動の展開と、それを導くことのできる人材の育成、ならびにそのための機構やしくみづくりを進めるプロセスの共有化を求めてきました。




2−2 「みんな」でつくるとは   どういうことか

 草津塾の基本構想は、開設に向けての企画や準備・調整作業の中で、多方面の方々から助言を受けるなど、運営者側が多くのことを学びながら練り上げてきました。
 当初「運営スタッフや塾生が話し合って運営していく」と掲げました。これは計画性の欠如や責任放棄としての投げだしでは決してありません。市民参加型のまちづくりにおいては、市民参加を促進するための社会システムとしての草津塾構想を共有化していくことこそが必要であり、その全過程を共有する相互の関係構築が不可欠であると考えたからです。
 「草津塾は何をするところ?」「もっと具体的にわかりやすく説明して」という率直な意見や疑問に対して、「塾構想を共有していく過程の中でみんなで考えていくことだ」と答えるのは、準備する側とそれに参加する側という二極構造そのものを転換していきたいとの思いからです。
 「社会的に必要とされていて、総論としては賛同されるけれども、問題を先送りし、破綻したり外的圧力が働いてからはじめて動き出す」ということがあまりにも日常化されている現状から考えて、パートナーシップや市民参加型のまちづくりがすぐに実現されていくと考えること自身が問題なのではないかと考えています。
 だからといって、個別的な課題や限定された範囲のなかで塾プログラムを組むことは、塾生の期待を裏切り、草津におけるまちづくりの現状に失望感を与えるだけの結果となってしまいます。

 みんなでつくる、すなわち協働作業を行うということは、課題の発見からその解決のプロセスを共有するということです。そんな活動を「みんな」で行ってきました。




2−3.主体は誰か

  設立当初の草津塾は、当時のまちづくりをめぐる状況や事務局の状況構造を踏まえて、次の4つの主体を軸にしながらスタートしました。 草津塾は、行政と市民のパートナーシップを前提として、コミュニティ事業団が呼びかけ団体になって誕生したことから、その限界を補うために運営スタッフ(学生スタッフ制度)を設けて運営してきましたが、ともあれ実際の議論では塾生とスタッフが同じ目線で話し合ってきました。
 また、常に発言の主語は「私」であり、自分の意見を積極的にぶつけることによって草津塾の方向性を導いてきました。

 
(コミュニティ事業団)
 塾構想および結果に関して最終責任を負い、全体をプロデュースしていくと同時に、当面は運営の主力として組織を上げて取り組む。

(運営スタッフ)
 草津塾の基本戦略を共有することを前提とし、塾運営全体の継続性と発展性に主体的に関わり、責任を負っていく者で構成する。
(塾生)  
 様々な立場や考え方を持った人々が、まちづくりに関する共通の課題を見いだし、その解決に向けて集団学習・自己学習・実践を通じて塾構想全体に関わっていく。
 その中から、運営スタッフへの参加者を排出し、実質的な自主運営組織を目指す。

(一般市民)
 それぞれの問題意識を通じ、まちづくりに関心を持ち、参加していく過渡的主体として常に広く呼びかけていく。




2−4.参加者と運営者の違い

 草津塾を支えるのは参加者です。それら参加者の参加の枠組みを作るにあたって、その場の設定をするのが運営者でした。単なる「ままごと」や「いろり端の雑談」で終わらないように、専門性を持たせながら議論の意味づけを行うためにスタッフが関わっていきました。
 参加者の自分の発言には責任がありますが、それらの発言を社会化させる、つまり個人の思いをそのまままとめるだけでなく市民全体の意見としてまとめていくことが当初の運営者の責任でした。草津塾を非日常の議論の場で終わらせるのではなく、現実の社会に落とし込んでいく舵取り役を運営者が担いました。



2−5.協働〜つくりあげていくということ

 地域づくりはそのまま人づくりにつながっていきます。そこに定石はありません。一定のカリキュラムによる学校教育型プログラムや形式ばったお仕着せのプログラムではなく、地域の実状や参加者の意向を踏まえた運営をしていかなければなりませんでした。
 草津塾構想は、集団学習・独習・実践活動の三身一体で行うことを基本的な前提として形をなしていきました。これが協働=共にはたらくということです。ただ漠然と学習するだけではなく、つくりあげていくということが草津塾の活動形態であったのです。
 また、ここには名誉職・当て職としての「塾長」や、既存の特定されたものへの依存・帰属という形態ではなく、今後のまちづくりを担いうる人材そのものを市民が担っていこうという意味が込められていました。




2−6 めざすべき公益活動と今ある市民活動

 日本では、公共事業のほとんどは行政が計画して業者が実施するという形態が取られてきました。また行政は、形式的には市民を代表する議員や市長の監督・指導のもとでの公正で公平な立場から、公共事業が展開されることが期待されています。
 しかしながら、代議員制度による間接民主主義というあいまい性の中で形成された行政主導では、責任ある判断をする人々が意思決定に関わることが少なくなる一方であり、そこから派生している諸問題も多くあります。
 草津塾では、まちづくりのありようを個々人の主観的な意識やその立脚基盤からではなく、社会的・歴史的な客観性をもって判断され形成される構造を目指してきました。公共という言葉を公益と置き換えて考えたとも言えます。
 一方で、行政が草津塾に期待し求めていたのは、建設的でかつ市民と協働していくことができる提案です。
 従来からなされてきた住民からの意見の公募方法では、前向きで有効な意見として集約されていくことは少なかったのではないでしょうか。個人の問題を取り上げるとしても、それを社会化させること、つまり「私」の問題を「公」の問題にしていく必要があります。草津塾ではそうした背景を踏まえ、対行政という立場ではなく、より具体的な地域・文化への創造を目指した公益活動を展開してきました。



2−7 市民と住民のあいだにあるもの

 草津塾で用いる「市民」は草津市に住民票のある人を指すものではありません。英語で言うとcitizenにあたる市民です。
 これに対して住民はもっと狭い概念です。例えば「旧住民」などという言葉も存在するように、古くから地域に住む人々のイメージが強いと言えます。悪い意味ではありませんが、住民とは表面的な地域の担い手です。
 草津塾で扱う問題は住民だけを対象にしていては解決はもたらされません。したがって、住民参加ではなく市民参加という言葉を用いました。
 同時に、市民と言うときには肩書きをはずした行政の職員や企業の社員も含まれます。深く日常に関わる問題を扱うがゆえに、逆に言えば肩書きを外さずに職務として関わる行政の職員や企業の社員は、活動を共有する際にはメンバーではなく、パートナーになります。これがパートナーシップの根本であり、仕事として問題を扱う人たちと協働作業を行うことが、今後の意味ある市民活動に必要になってくると考えました。



2−8 まちづくりと草津塾の微妙な関係



 草津市は急速な都市化が進む中で、ソフト面・ハード面ともに新旧の変化に対応することが急務です。
 たとえば草津川の問題、すなわち廃川後の利用計画がその象徴ですが、市民および市民活動ならびに行政機能の未成熟な状態では意見はぶつかり合意形成にはほど遠く、まして根本的な問題解決は不可能です。しかも自らの責任を問わない要求陳情型の市民活動は単なる場当たり的な市民運動であり、ますます事態は膠着していきます。
 草津塾は、その閉塞状況を打破するために作られた市民シンクタンク形成の母体であり、市民活動のマネージメント機能を担おうと考えました。
 まちの将来像を考えたり積極的に行動していくといったこと、ひとづくりとしての役割、イベント等で広く参加を呼びかける、琵琶湖の問題や草津をアピールしたり地球市民として世界発信していくなど、草津塾は、塾スタッフと塾生が協働で築く「草津のまちづくりの共有財産」にしていくために議論し活動を行ったのです。

 しかしながら最大の問題は、知識や意識の度合いが参加者の中で大きく開きがあるということでした。ある人にとっては居心地が良い場合でも、ある人にとっては先が見えず、参加した人の失望をかうだけに終わる結果となってしまいます。こうした格差を生まないことを最大の留意事項としなければなりませんでした。同時に、「草津塾」がまちづくりにとって不可欠な存在であるというような土壌を形成していくには、まだまだ多くの課題があり息の長いプロセスも必要です。
 まちづくりは誰が行うのか、そして担い手として最低限必要なものは何か。特に運営側は、内部的な問題だけではなく行政や周りからの信頼を高めねばならず、「まちづくり」とは何かを深く考えさせられました。




3−1 開設に向けての準備段階

 草津塾構想は、財団法人草津市コミュニティ事業団が草津市からの補助事業として96年度より実施していた「まちづくり相談所事業」の主旨を引き継ぎながら、より市民自身の主体的な参加(市民による地域のガバナンス)と長期的展開を推し進めるために再編され取り組まれたものです。
 この構想を進めるための前提条件として、協力依頼文により草津市の関係各課(生涯学習課・自治振興課・学校教育課・生活環境課・クリーン事業課など)との調整を行いながら構想を形にしてきました。


※(財)草津市コミュニティ事業団は、1984年に草津市が出資してつくった財団法人で、パートナーシップ型まちづくりをミッションに掲げている。(巻末資料参照)


草津塾通信0号

97年8月29日発行
 
草津塾とは〜

●草津市のまちづくりについて、参加者 自らが考え学習していく場 ●まちづくりの情報交換や交流の場 ●行政とのパートナーシップによるまちづくりの場
市民参画によるパートナーシップ型まちづくりのための人材育成・総合プロジュース機能を、みんなで築いていきましょう。

 草津塾は、市民・行政・大学・企業等、地域を構成するすべての人々が、まちづくりに関する共通の課題や目標を見いだし、共同で解決していくためのシステムづくりを目指します。

塾の気風

これからみんなで確立していきましょう。

1.個別・閉塞・限定的問題に収束しない。
2.多様な価値観やそれぞれの立場を理解し、認め合う。
3.楽しくみんなが参加し、常に進歩していく。
4.集団学習・独習・実践の三位一体。




スタッフメッセージ

山口洋典
(立命館大学理工学部環境システム工学科四回生)

 「草津」に花を咲かせるのではなく、実を実らせる。
 これが私の「まちづくり塾」に対する思いです。
 皆さんも知っているCMに「変わらなきゃも変わらなきゃ」というのがあります。
 しかしこれを役所が言ってもあまり意味はありません。 今、市民が何を思っているのか?どんなまちを理想としているか?そうした意見を反映させて、みんなの「くさつ」をみんなにとって実りあるものにしていくこと。これが望まれると私は考えます。
 こうした市民の意見を反映 させることを「市民参加のまちづくり」あるいは「ボトムアップのまちづくり」と言います。今回は「塾」とは言っても一方的に意見を聞いたりする「講義」の場ではありません。
 地域の中での問題発見とその解決に向けていろんな人の意見を聞く「学び合うコミュニティ」です。
 僕も含めて、スタッフ、講師、そして主体である参加者の皆さんが同じ目線で発言し、いろんな角度から様々な視野・視点で議論を進めていきます。
 実りあるくさつをつくる。この隠れたコンセプトの実現のためにお手伝いしていきたいと考えています。よろしくお願いいたします。


メッセージ
   事務局スタッフ

 草津塾の基本構想は、開設に向けての企画や準備・調整作業の中で、いろいろな方々から助言を受け、また自分なりの方法で検証し多くのことを学びながら練り上げてきました。
 現時点において、私がコミュニティ事業団の一職員として出来ることを、すべて草津塾に組み込んであります。
 そのうえで、「運営スタッフや塾生が話し合って運営していく」としているのは、計画性の欠如や責任放棄としての投げだしでは決してありません。
 参画・パートナーシプ型まちづくりへの転換をしていくには、そのプロセスを担いうる社会システムとしての草津塾構造こそが機能する必要があり、またその全過程を共有できる相互関係が不可欠であると考えるからです。
 「草津塾は何をするところ?」「もっと具体的にわかりやすく説明して」という率直な意見に対して、塾構想を共有していく過程の中で、みんなで考えていくことだと答えるのは、準備する側とそれに参加する側という二極構造そのものを転換していきたいとの思いからです。
 正直なところ、「社会的に必要とされていて、総論としては賛同されるけれども、問題を先送りし、破綻したり外的圧力が働いてからはじめて動き出す」ということがあまりにも日常化されている現状から考えて、「参画・パートナーシップ型まちづくり」がすぐに実現されていくと考えること自身が問題なのではないかと考えています。
 だからといって、個別・限定的な形で、こちらが調整できる範囲で塾プログラムを組むことは、塾生の方々の期待を裏切り、草津におけるまちづくりの現状に失望感を与えるだけの結果となります。
 従って、ここで私が言うべきことはただ一つ。
 現時点で事務局ができることは、すべてやりました。あとは、草津塾という場においてプロセスを共有しながらみんなで考え、構想実現に向けて取り組んでいきましょう!






3−2  1年目(97年度)のプログラム計画段階

草津塾の開設1年目は、まちづくり塾の機能・役割を定型づけ、草津塾の構想をスタッフ・塾生が共有し、継続的・段階的に深めていくための準備期と位置づけて活動しました。
 創生期における実践的アプローチや、しくみを創造していくプロセスを共有していくことを基本観点としてながら、次のようなことを想定していました。


草津塾スタッフ通信第1号
97年8月20日発行



  草津塾の目標
 草津塾の目標は、地域におけるまちづくりの各種課題(環境・福祉・教育・文化・都市計画・交通・災害・高齢化、等々)に関して、その企画・立案−協議−決定−実施の全ての過程に住民が直接的に参加し、現時点における地方自治システムとしての議会制民主主義と共に、直接民主主義的参加形態を機能させることを通じて、自治構造を強化・発展していくと同時に、実質的な行政主導型の構造からパートナーシップ型へと転換し、行政と市民が相互に学習しながら、まちづくりの新しい型をつくっていくことにあります。
 そして、塾運営にあっては、個別的な課題で限定された条件において活動するのではなく、参画型・パートナーシップ型システムを構築していく現段階において、準備する側と、そのレールに乗る側を分断せず、それを実現させていくプロセスに塾生が参画しその実践的教訓を共有することを通じて、本来的な地域リーダー集団を輩出する機能をもつ運動体として展開していきたいと考えています。
 まちづくりを実践的問題として扱うべきものであるとするならば、それを行う組織・戦略・実践は三身一体のものとしてすすめていくこと以外実質的な意味を持ち得ないのであり、参加者の失望をかわない唯一の方法がここにあると思います。
 この目標を現実的に推進し成功させていくには、塾構想を理解し共有していける参加者を募っていく運営スタッフの活動が最大のポイントとなります。

今年度の課題とプログラム(試案)
 草津塾を開設して一年目である今年度は、まちづくり塾の機能・役割を定型づけ、草津塾の構想をスタッフ・塾生が共有し、継続的・段階的に深めていくための準備期と位置づけます。
 創生期における実践的アプローチや、創造していくプロセスを共有していくことを基本観点として持ちながら、進め方として次のようなことを想定しています。

1回目
 草津塾の基本方向について提示し、それへの関わり方のスタンスが見えるようにする。また、参加者の意向や希望を集約し、これからの具体的な進め方を決定する材料とする。
 なお、二回目実施にあたっての運営会議への塾生の参加を保証し、常にオープンに運営していく。

2回目
 塾の具体的な活動について論議し、それぞれのテーマや役割分担を決める。
-例-
●広報活動を行い塾構想を地域に広めていくためのグループ
●個別的なテーマに基づく政策研究グループ
●行政への有効なアプローチの方法を考え活動するグループ(単に塾の意見を政策的に反映させるということではなく、よりトータルな意味合いでのアプローチ)

3回目
 それぞれのテーマや役割分担に基づく年間の基本計画を発表し、その内容について討議する。
 次回、それに基づく学習・調査・活動の報告を行う。

4回目
 それぞれからの学習・調査・活動の中間報告を受け、その中で新たに見えてきた課題やその解決に向けた取り組みについて討議していく。

5回目
 各グループの成果を発表し、翌年度の目標・テーマ・具体的なプログラムについて話し合う。

翌年度以降
 パートナーシップ・参画型システム構築に向けての課題や問題点を解決していくための方法を見定め、学習や実践的なアクションを行っていく。




3−3 開塾時のプログラム「草津塾ワークショップ」

  


 開塾に際しては、市民によるガバナンス確立のプロセスを重視するという基本的な考えからプログラムを計画しました。
 そこで第1回目は「草津塾ワークショップ」と題して、草津塾構想や具体的プログラムおよび運営を考えていくワークショップを行いました。

 場所は、草津宿本陣。

 これは草津宿本陣が、歴史的に草津のまちの発展のなかで大きな役割を果たしてきたことから、草津塾がこれからのまちづくりにおいて大きな役割を担うことを願ってのことでした。そして、ワークショップという形態をとったのは、まちづくりや合意形成の手法としてのワークショップを体験すると共に、草津塾そのものがみんなで築いていくものであるとの感覚を持つためにまちづくりや塾への期待を発表しあい、塾運営のイメージをつくっていくことを目的としたものです。
 しかし、プログラムの具体化にあたってプロセスを重視するあまり、明確な路線を示さなかったことによって草津塾に対する感覚のズレを招いた原因をつくる結果となった点も否定できません。また、参加者の多くは必ずしも自発的なものでは無かったようでした。このことから、もう少し準備段階での参加のプロセスをつくるべきだったことが反省点として感じたことです。




草津塾通信第1号
97年9月24日発行

  始まりました草津塾
 
「草津塾」は、市民の参画とパートナーシップを基本に、まちづくりについての学習、相互交流、実践を行う共働の場として開かれました。
 第一回目のプログラムでは、これからの草津のまちづくりと「草津塾」の機能・役割について語り合いました。
 主催者からの開塾趣旨の説明の後、塾生全員の自己紹介が行われ、「私は〜をしている(氏名)です」という指定された短い言葉の中で、うまく自分を表現出来る人、ちょっと自己表現をするのが苦手な方等、それぞれの個性や性格が出て、なんとなくどういう人が塾に参加されているのかを知ることができました。
 参加者の顔ぶれは、行政マンや地域活動家、大学生や主婦、コンサルタントや研究機関に勤めるまちづくりの専門家、福祉の仕事や社会教育に関連する団体で活躍されている方、議員さんや地元商店主の方等々、本当に色々な人達です。
 しかし、塾の中では「草津市のまちづくりについて考えていく対等のパートナー」であり、職業やそれぞれの立場・肩書きは全く関係ありません。
 という訳で、自己紹介の後、ゲストコーディネーターとしてお迎えしたまちづくりの達人、乾亨氏(立命館大学産業社会学部助教授)による「パートナーシップ型まちづくりの話」を聞いた後の「草津塾ワークショップ」では、きたんのない意見が交わされました。
 ワークショップでは、(1)「私はこんなことしています」、(2)「私にとって草津はね〜」、(3)「草津塾でどんなことができる」、というテーマで論議していきました。
 出てきた意見は、新旧の変化に関すること、身近な問題や普遍的問題、ソフト面やハード面、行政の問題や市民自身の問題、草津の良いところや改善すべきところ、短期的問題や長期的な問題、環境問題や教育・福祉に関することなど多種多様。また、草津川の跡地利用に関することが多く語られました。
 草津塾は、塾スタッフと塾生が共同で築く、いわば「草津のまちづくりの共有財産」にしていきたいと思います。
 塾運営やプログラムについてのご意見をお待ちしています。


  スタッフ反省会

 運営スタッフによる反省会では、次のような意見が出ました。これらの意見を今後の運営に活かしていきます。

場所の問題
●場所が本陣で良かったけれども、暑かった。もう少し参加者への配慮が必要。
●会場の特性をもっと活かした運営が考えられない?
●本陣は文化財なので、ちょっと使いにくい。他の場所での開催も検討すべきではない?

運営の問題
●事前の協議が十分ではなく、場当たり的運営になってしまった。
●一回目の論議が、次回のどうつながっていくの?
●運営スタッフの中の相互関係やそれぞれの立場がわからない。
●運営スタッフの中の相互関係やそれぞれの立場がわからない。

塾の目的について(それぞれの思いとして)
●行政が塾に期待している点は、従来は住民に意見を聞いても、前向きな意見が出なかった中で、塾からの建設的提案を聞きたいということ。
●草津塾は、公共性の高い自己実現の場。
●対行政という立場ではなく、もうすこしトータルな面からまちづくりについて見つめ直す場にしたい。
●機能として、シティマネージャーやシンクタンク的役割にできないだろうか
●サスティナブルな地域・文化への転換を目指す。 ………等々


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 まちづくりの新しい流れ
 「パートナーシップ型まちづくりが始まった」
     乾 亨さん
(立命館大学産業社会学部助教授)のお話

 本文は、去る8月29日に開催した、第1回草津塾でゲストコティネーターとしてお招きした、乾氏のお話の概要をまとめたものです。


 京都での動きを参考に、参加の構え方について簡単にお話させていただきます。
 まちづくりのキーワードとして、第1に役所があります。
 役所は、都市計画の政策策定をしたり実施する所ですが、従来は上位下達のスタイルが主流で、「硬い」「融通が利かない」「お役所仕事」「親方日の丸」ということを一般的に言われています。
 一方で、すべて悪いという訳ではなく、それが必要である理由もあります。役所の人には、行政のプロとしての強い使命感があるんです。でも、それが曲者で「住民にまかせたら、エゴや狭い考えになってしまう」「プロとしての自分の方法が正しい」という確信犯になってしまっています。京都の場合で見ると、京都ホテルや駅ビルの問題そのものの是非はさておき、合意のプロセスのあり方に問題があるのではないかと思っています。
 第2のキーワードとして、住民参加・住民主体についてですが、要求・反対・陳情型といわれるものは、その社会的背景があってのことで、住民と役所の溝には深い溝があるのは事実ですが、最近それが変わりつつあります。
 住民自身が「自治体のなかで、自分たちに一体何ができるのか」という動きのなかで、役所がそれをどうサポートしていくのか、というまちづくりの新しい流れができつつあります。
 それが、パートナーシップ型まちづくりと言われるものですが、「じゃ、いっしょにやろうぜ」ということで、役所と市民が共同でまちづくりを進めるということです。
 最後に、その手法としてのワークショップについてですが、これは、お互いの立場や考え方の違いが、対立ではなく、話し合い、学習しあい、刺激しあいながら合意に達したり、お互いの違いを認め合うプロセスをつくるものとして、大変有効な手法だと考えられています。
 パートナーシップ型には色々な形があります。
 まず1つ目は、事業対応型といわれるもので、公園や道路を一緒に考えてつくるというようなものです。
 京都の例を挙げると、「嵐山さくらトイレづくり」や「梅小路遊び場づくり」、「洛西保育所・児童館づくり」が行われました。

 第2番目の型として地域限定型があります。例えば、学区での取り組みとして行われた「清水学区安心・安全まちづくり」がこれにあたります。
 最後に、広域対応型・政策提言型といわれるもので、今までは行政がコンサルタント等に委託して、市民には説明会をしていたものを「市民が自分達で考えよう」ということです。
 1と2の形態は比較的具体的で、課題が鮮明で問題を共有しやすいんですが、3番目は範囲が大きくなり、互い意志を尊重しながらということで難しさがあります。
 一般的には、1と2をベースにしながら、広域型になっていくスタイルが多く、世田谷などがそうした形で進んでいます。
 では、何故参加やパートナーシップによるまちづくりが必要とされているかというと、従来は、まちづくりは専門家にまかせた方が良い物ができるというふうに考えられていました。しかし、本当に良いものとは何かということを考えると、例えば京都の街路樹の枝切り問題というのがあって、切るほうが正しいのかそのままが良いのか、いろいろな考え方がありどちらが良いのかが一概に決められません。また、阪神大震災後の阪神高速道路再建の問題に際しても、土木工学の先生さえも、本当に高速道路の必要性を疑問に感じ始めています。
 まちづくりは、多様な要素があり、何が良いかは、当事者がきめなければならないということで、結局は、主体的参加と自己決定が重要で、行政の人もその必要性を認め始めています。ところで、行政や役所は一枚岩ではけっしてありません。京都では「この人なら相談に乗ってくれる」というネットワークが広がっています。
 行政が難攻不落の一枚岩ではないと言いましたが、住民も一枚岩ではありません。そうでないのが当たり前なんですが、その時に多数決ではなく、一人一人の意見が同じ重さとして尊重され、「私とあなた」の関係の連鎖として考える中での参加というものが大変重要なことです。
 ちょっと概念的な話ばかりで申し訳ありませんでしたが、どうすれば沢山の人の意志を尊重していけるかということが、一番大切な問題です。
 参加を理屈だけで語らずに、とにかくやってみることから始めてほしいということと、外に働きかけながら、アクションをしていってもらいたいと思います。

ワークショップ後のまとめ


 まとめる必要はないのですが、みなさんが語ったことの中に、多く重なるものがあるように感じました。
 新と旧というのが草津の抱える大きな問題として、いろいろな切り口で語られていました。例えば、自然と開発や、ふるさとや歴史ということと都市化の問題、学生も含めた新住民旧住民の関係の問題です。
 草津川の自然を考えようということも色々なグループで共通して語られていました。
 塾の機能としてはイベントなどで呼びかけていくというものも出たし、「塾は人づくりじゃないの」という意見もありました。
 それは表裏一体としてのことだと感じました。
 また琵琶湖の問題や草津をアピールする場、学生と語り合う場としての機能も提案されましたし、まちの将来像を考えたり、積極的に行動していくといったことも重要なことだろうと思います。
 いずれにしても、すべてが始まりですから、これから先に期待を持てる内容であったと思います。

スタッフ通信
97年9月発行


第1回 草津塾を終えて  (事務局スタッフ)

「草津塾」は、塾構想そのものが現時点でこの地域で最も必要とされていたことだとの考えから企画し、そのスタートとして相応しい参加形態を準備してきました。
第1回目のプログラムを終えてすぐに始めなければならないことは、今回の参加者のどの部分を軸として自主運営の形態を保ちつつ、草津塾構想の効果的な展開へと結び付けていくのか、ということの整理作業の過程の共有化です。
また、総括の視点として一番大切なことは、その困難性を回避し、塾の外面的表層部分(体裁)をいかに繕うかということではなく、参加者の現状そのものが地域の現状であり、その現状そのものからの脱皮を促す社会システムの不在こそが、塾の存在により払拭されていかなければならないという観点から見ていかなければならないのではないでしょうか。
今後の展開を考える中で、「学生ではあてにならない」「コンサルに任せれば」といったことが、運営スタッフの中で一切出てこない状況をつくっていきましょう。
地域は、存在する現状をどう自分が受け取るのかという面からではなく、どう変えていくのかを問うものとして自己を位置づけていくべきであり、草津とそのコミュニティを問い、新たな展開へと結び付けていく突破口として、草津塾を立ちあげたことへの誇りと責任において、運営スタッフ体制をより強固なものにしましょう。
運営スタッフの飛躍なくして、住民自治の進展はありえません。

(次回の展開)
草津市のまちづくりを考える中で、塾構想そのものを何らかのあろうべき姿を夢想するところから捉えるのではなく、現状における機能・役割から出発し、将来像を共同でつくってものとして位置付けるべきだと考えます。
従って、第2回目のプログラム策定においては、参加者の持つ問題意識を的確に捉え、今後の展開に有効な方法を問題提起する内容を検討していく必要があります。
その意味から、前回、特に多く出された「草津川跡地利用」の問題を、今後の住民参画・パートナーシップ型まちづくりにどうリンクさせていくのかについて、考えていく場にすることを提案します。
「草津川跡地利用」の問題は、 当該対象が草津市の市街地を含めた地域を縦断すると同時に、天井川が今でいう乱開発による砂の大量流出と、その事に起因する災害に地域が対処するなかで歴史的に形成されたものであることから、市民の多くの関心を引いています。
また、跡地利用という課題の性格上、たとえば地域住民にとっては迷惑施設となるものではいため、積極的に地域資源を活かしていくという前向きの論議が期待されると共に、必ずしも今すぐ次の計画を決めなければならない課題でもありません。 さらに、跡地利用の問題は地域防災や環境問題、交通問題、都市景観などと密接な関連があります。
しかし一方、住民参加がなければ、従来型の行政主導型で処理されかねない火急の課題でもあり、こうした「今の草津のまちづくり」の課題を扱わずして、まちづくり塾の機能を果たせないと考えられます。
この「草津川跡地利用」の課題を草津塾がどう扱うのか。 その方法を問題提起し、討議し、共有化していくことを主要な獲得目標として、次のプログラムを提案するものです。

ー具体的プログラム案ー

(当面の課題)
草津塾の機能と役割を考えるシリーズ

(今回のテーマ)
「草津川跡地利用を、住民参加とパートナーシップ型まちづくりを推進していく契機として捉え、地域に投げかけていきましょう」
  
(内容)
草津川跡地利用問題を、住民参加とパートナーシップによるまちづくりの促進にどう結び付けていくのかについてワ−クショップ形式で論議する。

@「草津川跡地利用」に関連する市民活動および行政を交えての情報交換会
 (パネルディスカッション)
A討議のためのワークショップ
B役割分担と次回までのそれぞれの課題。

今回の総括の意味も込めて、スタッフ・塾生による研修的性格をもった交流会を企画できないだろうか。(講演会ではなく)
たとえば、世田谷や流山あたりから事例報告をしていただくというのは、どうだろうか。

当面する重要課題は、準備する側と参加する側の二分化を避けながら、住民自治を促す効果的運営のあり方を、みんなが共有することにあるのではないだろうか。

  次回以降の展開について

1.塾プログラム策定にあたっては、当初に掲げた運 営の基本である「スタッフと塾生が話しあって決めていく」というプロセスとシステムを重視する。

2.第1回プログラムを実施した中で、塾生の構成や論議を踏まえた提案を運営スタッフとして提示する。

3.塾を次の2つのコースに分けて、有機的な関係を持ちながらプログラムを構成する。

4.第1のコースを、フィールドワーク・ワークショップ分科会(まちづくり行動隊)として活動する。

5.第2のコースを地域政策研究分科会とし、「地域マネージメント養成講座」を実施する。(地域マネージメント養成講座は、他の機関の実施する講座も活用していく)

6.最終的には、それぞれのプログラムに関しての塾 生による報告会を行い、冊子としてまとめる。  (フィールドワーク・ワークショップ分科会プログラム)

  フィールドワークショップ分科会で、「草津の現在・過去・未来」を行う。
ー グループ分けー 1.歴史とまちなみ 2.草津川 3.人と暮らし 4.地域の経済

第1回目は10月26日(日)午後実施する。 ー 現地調査 − 第2回目は11月下旬〜12月初旬に実施。 ー討議とまとめ(講演含む)ー
(地域マネージメント養成講座)

 11月頃に、立命館大学との共同企画として「地域づくりと産官学民の共同」をテーマとしたパネ ルディスカッションを開催する。 また、可能であれば1月頃に、市長を囲んでのまちづくり座談会を開催する。


(まとめ)
 2月に、草津塾交流会(レセプション)を開催する。 以上の内容を冊子としてまとめ配布する。 (塾生全員のコメントも掲載する)

(資料 〜その後の討論の結果)
 以上の構想を、運営スタッフやコーディネーターおよび運営委員会においてKJ法で塾生と検討した結果、「もう少し助走期間をとってから打って出る」との観点でプログラム実施してはどうかということで、例えば「まちあるきワークショップ」でフィールドワークするとともに、運営会議を開いて決定していこうということになりました。





3−4.第1回拡大運営会議

 10月28日(火)に開催した草津塾の拡大運営会議には、25名の塾生・スタッフが集いました。
 拡大運営会議の目的は、第1に草津塾は「塾生」が「軸」になって運営していくことを全体で確認すること。第2に、草津塾の基本性格や目標について検討すること、第3に前回の草津塾ワークショップや運営スタッフ会議での論議を踏まえながら当面のプログラムを決めることにありました。
 この会議では、構想づくりや運営体制の確立ということから始めるのか、参加者の「気づきや身近な発見」というところから動き出して輪を広げていくのかということをめぐっての議論が根底にあったように思います。
 草津塾の明確な基本構想について、多様な理解の幅があるなかでいかに集約していくのかが実務的に問われ、現実的な第1歩として次回は「まちあるきワークショップ」をおこなうことが決定されました。

 しかし、会議の論議や運営スタッフ会議の中でも、草津塾構想に対する決定的な違いがあることも浮き彫りにされ、その違いを誰がどのようにまとめていくのかという「ガバナンス」が課題となったことも事実です。しかし、早い段階で「ガバナンス」という本質的な課題が見えたことによって翌年3月の「塾生総会」開催などに結実し、その後の展開の中で教訓を生かすことができたのだと思います。
 


草津塾通信第2号
97年11月20日発行

 草津塾は、コミュニティ事業団の主催により、草津市役所職員の方々や学生スタッフの協力により開設いたしましたが、当初の呼びかけにも明記していましたように、「塾生と運営スタッフが話し合って活動していく」ことを基本としています。
 塾生の方々に参加頂いての運営会議を開催した理由は、まさしくパートナーシップで塾運営していくことの第1歩としてとらえています。
 第2点目の、草津塾の基本性格や目標については、今回様々な意見が出されました。(詳しい内容は、別添付録を参照して下さい)
 また、当日配布させて頂いた「全国地域おこし塾データ」などの資料は、塾の基本スタンスをみんなでじっくり考えていくうえでの基礎データとして活用していきたいと思います。そして、第3点目の「当面のプログラムを決めること」が、今回の話し合いの主要なテーマとなりました。

話し合いの内容

 当面のプログラム策定にあたり、コーディネーターの乾氏より、次のテーマで話し合うよう提案されました。

(1)前回のキーワードとして出された新旧問題(歴史・景観も含む)などをどう組み入れていくのか

(2)塾の性格をどう位置づけていくのか(自分たちで企画・運営していき、かつ 開かれた塾運営とするにはどうしたら良いか)

(3)塾の目標(勉強したい、輪をつくろう、まちづりのテーマ発見など)

(4)当面の進め方(最初から走り出すのか、まず勉強をしてから打って出るのか)
(5)当面の形態(分科会に分かれるのか、みんなで一緒に取り組んでいくのか)
以上の五点。
 七人程度が三つの班に分かれて話し合い、最後にグループ発表していくというスタイルで話し合いは進行しました。


話し合いの結果

 その結果、次回のプログラムとして「まちあるきワークショップ」を行うことになりました。
 これは「最初はグー」と表現されたとおり、とりあえず「草津をもっと知ろう」「草津塾構想を地域にアピールして開かれたものにしていこう」ということで、身近なことや実感できることをみんなで共有していき、地域に開かれた塾運営を心がけることを基本に進めていく第一歩を記すプログラムです。
 また、当面すぐにでもできることとして、自己紹介入り塾生名簿をつくって、お互いが交流していこうということなども決まりました。
 今後、草津塾が住民主体によるパートナーシップ型で「草津のまちづくりの核」となることを目指し、いろいろと試行錯誤しながらじっくりとみんなで築いていきましょう!




3−4.まちあるきワークショップ

 まちあるきワークショップは、立命館大学産業社会学部(乾ゼミ)を中心に企画・運営する形をとりました。
 「草津塾の運営は専門のコンサルタントに依頼した方が良いのではないか」との意見もあるなかで、自主運営を明確にし、そのための大学との連携を実態的に進めていくためのものでした。

 このプログラムは、塾生相互の交流やまちの魅力や課題を発見することと共に、多くの市民に参加いただくという「参加のプロセス」ということが主眼でしたが、当日の参加者の中で草津在住の人が少なかったのは少し残念でした。原因として宣伝不足や第1回目のプログラムから期間を置きすぎたこと、時期的に少し寒かった・・・なども考えられますが、誰でもが参加しやすいということと、実際にそれに参加することとは違うんだという教訓がここで生まれました。すなわち、地域や市民のニーズをどのように掴み、その結節点としてのポイントをどうマネジメントしていくのかということが必要であるということです。



3−5 塾生総会に向けての論議

 市民による地域ガバナンスのための運営体制確立に向けての塾生総会を準備する過程において、まちづくりの基本スタンスなどについて率直な意見を交わしました。
 (論議の様子は、以下の資料を参照)




草津塾通信号外
98年2月発行

  「塾生総会」に向けての運営会議報告

第1回運営会議速報(2月18日)

 去る二月十八日に開催した、塾生総会に向けての第一回目の運営会議の様子をお伝えします。
 総会およびその準備のための運営会議を行う目的は、塾生による自主的運営を目指すことにあります。 
今回の会議では、総会へ提案する来年度の活動内容についての論議と共に、現状を踏まえながら、塾生による運営体制をどうつくっていくのか、また実際の運営体制のあり方とはどういうものか、ということなどについて、活発な論議が交わされました。

ー討論要旨ー 

山本:今回、事務局より提案させていただいた活動方針などについての素案(前回の通信に同封)は、あくまでたたき台であり、運営会議の中で塾生自身が協議しながらまとめていきたいと考えています。
 総会までに三回実施する運営会議では、レジュメ(資料)のような流れで審議していくことを提案します。
 今回は、来年度の具体的プログラムの柱として、冊子づくりを行うことについて、その是非を論議し出発点を決めたいと思います。
 冊子づくりは、情報ネットワーク機能を、塾運営の第一段階で確立する必要から提案したものです。
 実際の冊子のイメージは、(仮称)「草津年鑑」的なものとし、その年鑑を見れば、草津の魅力や課題、まちづくりの様子や地域経営問題などに関する資料、地域の歴史や自然、草津塾の活動など、すべて分かるようなものを想定しています。
 これによって、まちあるきワークショップや講座・研究成果などの各種プロジェクトの発表の場を確立すると共に、草津塾の活動を地域全体にアピールしていきたいと思います。

山元:事務局素案については、骨子としては異論はありません。
 しかし、プロジェクトを実際に動かし、運営ていく上で、誰がそれを担うのかが最大の問題です。
 たとえば、「幹事会」のようなものが必要であり、総会でそのことを提案していかなければならないのではないでしょうか。

鳥居:組織はトップダウンでも困りますが、名前が「幹事会」がふさわしいかどうかは別として、そうしたものが必要です。
 活動については、あまり間口を拡げずに、何か一つの具体的なテーマを決めて進めた方が良いのではないでしょうか。

山本:冊子の内容については、最初からテーマを限定したり地域の問題全般を網羅するというのではなく、現塾生それぞれの関心や可能な範囲の中で、色々な可能性を持ちながらつくりたいと思います。

山元:「提案型」の方たちの意見も、冊子の中で出すことによって活かせますね。

細谷:冊子づくりにあたっては、それぞれのテーマを決めて、相互の連携を図りながら行うという意味のプロジェクトが是非とも必要だと思います。

根本:色々な活動をやり、それを発表していく場として冊子をつくり、最終的な目標を持つという意味で、タウン誌づくりは有効だと思います。

山元:繰り返しますが、プロジェクトをバランス感覚をもってまとめていく機能が、今の塾には欠けているのではないでしょうか。 

鳥居:ところで、塾生相互の交流をしたいのですが、前に決まっていた塾生名簿はまだできないのでしょうか。

山本:名簿作成票を提出していだだいていない方が多く、作成できていません。総会への案内の中でお願いしてありますが、とりあえず現状のなかで作成し送付します。

鳥居:会費を納入している塾生は現在何人いますか?

山本:まだ二十名程度です。

山元:会費については、どの程度の額が適当かについても、今後論議したいですね。

笹谷:本来、こうした組織を運営していく上では、事務的なことを確実に行うセクションと、長期的な観点からの地域戦略を有するなプロフェッショナルなプロジュース機能の両方が必ず必要です。 
 情報は大切なことで、現在、寺本さんなどと草津市の地域情報化の委員会でも論議しいますが、情報ボランティアの育成という面も含めて草津塾で協力できます。
 もし必要なら、総会でプロジェクト全体をまとめていくための有効な手法があり、私の方でその進行も可能です。


 ー この後、プロジェクトや総会とはどうあるべきか、また草津塾のあり方や進め方等について論議。
 特に、総会ではボトムアップ的に全体で論議していくという性格の場にするか、それとも運営会議で役割分担も含めて煮詰めていって、それを承諾願う場とするのかが論点となる。
  
     (以下省略)

 以上の論議を踏まえ、次回の運営会議では、できるだけ多をくの塾生に来ていただくよう呼びかけた上で、塾の運営面についての協議を深め、塾運営のプロジュース機能を具体的に確立していきたいと思います。

 ** 出席者 **

 鳥居・山元、坂本、根本、寺田、増田、細谷、笹谷、寺本、服部、山本、大塚  


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  2月18日 運営会議進行メモ
 
1.塾生総会に至る経過報告

 開設準備−運営スタッフ通信1号参照
  8月29日(金) 開塾
 10月28日(火)拡大運営会議
 12月 6日(土) まちあるきワークショップ
 その後の論議:塾生が主体的に活動していくことがポイント= 総会

2.事務局提案に関する説明
 
事務局提案の位置づけ
  討議のプロセスをすべて公開し共有していく(たたき台)
 提案の主眼:多様性を地域活性化のエネルギー源とするためのシステムづくり
   
3.総会までのプロセスについて(案)
   
今回   運営スタッフが中心となり、骨子を固める
  2月28日(土) 塾生全体での共有化、肉付け
  3月 4日(水) 総会の具体的準備

4.総会およびそれまでの過程におけるそれぞれの役割について

  総会での報告者について(役割分担)
   .活動報告 .会計報告 .事務局提案 
   .司会進行 .会場係
  総会での必要資料の作成
   .97年度報告集
   .事務局提案の討議過程報告

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第2回運営会議速報(2月28日)
 
 2月28日 「塾生総会」に向けての運営会議進行メモ

1.前回の運営会議報告

2.今回討議すべき事項・論点(前回の論議を踏まえ)

@マネジメント機能を、いかに形成していくのか
 草津塾:NPO > 目的:まちづくり
NPO:営利を目的としない自覚と責任を基盤とした組織
 こうした公益的な組織ほど、明確な目的意識とその遂行手段とのバランスや効率・公正といった基本原理を持つことが必要である。(ドラッガー) =市場経済のなかで「淘汰」されない、社会的意識活動。
現状から、どのうように形成いていくのか。そのプロセスは、単純なボトムアップ論では駄目。これが形成されないと「行政とのパートナーシップ」は単なる夢想。

 A本年度のまとめと来年度の具体的活動について
 (本年度の集約点)
 開塾に向けての準備段階>開塾以降の活動>その中で何をなし得、何が課題となったのか。総会への事務局提案(素案)として提出しているものは、塾の基本姿勢ー組織体制ー具体的活動展開についてのたたき台として提案したもの。
 総会へは、運営会議で討議され、スタッフ内において共有できて初めて事務局提案となる。>今回の運営会議は、事務局会議的な性格となる?
(なお、今回のような運営会議への参加が、マネジメント機能を構成していくうえでの自発的参加という意味での条件となり、この中で形成していきたい。)
  *** 事務局素案で欠けている点 ***

 @経過報告
 本年度は、設立したことが大きなキーワード
 設立に向けて、草津塾がどのような目的意識で、どのような条件下で、いかにして開設したのかが語られていない。<>目的や政策なき事業先行型=ノルマ思考ではなく、この地域の必要性において提案し、現状の中での調整を重ねて開塾したものである。
 記述されていない?>共有化されていない。
 何故?>本来は、総会までに塾の基本方向についての合意形成を図るためのプログラムを実施しなければならなかった。
 これが起因して、見えにくくなっている。>運営会議で補完していきたい。

A現実的な課題や段階が明記されていない。
 >なぜ「草津年鑑」(仮称)=情報ネットワーク戦略なのかが見えにくい。
 位置づけを明確にする必要あり。

B運営体制について、踏み込んだ論及がされていない。
C社会・地域・まちづくりの情勢については、何も触れていない。

***** 議論の進め方 ******
  
 以上の2点(マネジメント機能形成・塾構想の共有化と具体的活動についての合意形成)を踏まえて、総会までに集約していくよう論議していくため、また一般論に終始しないためにも「総会議案」にそって話を進めていき、そのなかでこうした課題を逐次論議していきたい。

@事務局より素案の説明
A素案に対する各自(全員)の意見を聞く
B一巡したところで、一旦全員で共有できる所をボードに記入し、確認する。
C相違点があれば、その相違点の意味を明確にし討議していく。
D今回、解決できない問題は、引き続きじっくり討議していく場をつくることを前提とし最終的な総会議案については、論議の経過を踏まえて事務局(事業団)で集約する。


できれば、総会の司会進行については、今回(仮称)マネジメントスタッフが形成され、その方にお願いできるようにしたい。


 
去る二月二十八日(土)、塾生総会に向けての第二回目の運営会議を開催しました。会議の様子(要旨)を、前回と同様、速報としてお伝えします。


服部:あいさつ

山本(司会):運営会議進行メモ(下記資料参照)に基づき、議題や進行の方法および事務局素案を説明。

 * * * * *

 事務局提案(素案)に対する意見や、塾のマネジメント機能について、率直なご意見を伺いたいと思います。
 大塚さんから、順番にご発言下さい。

大塚:経過報告の内容については、開設準備期と共に、開設してからのことも必要です。運営体制について、マネジメントと事務的なことをどう集団で担っていくのかを説明下さい。タウン誌については、「コミュニティくさつ」の内容を掘り下げていくような内容になるのでしょうか?

寺田:考えがまとまっていませんので、後で発言します。

増田:素案の中の「多様な参加」については賛成です。新しい草津市民が増えたので、そういう人の意見も聞いて、新鮮な眼でとらえていきたいと思います。
 十二月に実施した「まちあるきワークショップ」については、しっかりまとめられていないように思うので、今後は目的や内容をもう少し考えて、実施していく必要があります。

中川:タウン誌の内容は、他の機関が出しているものとの差別化が必要です。
 住民の広い参加は必要ですが、市民意識の底上げ的なことからはじめないと大変だと思います。

細谷:多様な参加を得るという面では、主婦とかの参加も少なく、まだまだできていないのではないでしょうか。
 情報をタウン誌という紙だけの媒体では無く、色々な手段を使っていくべきだと思います。内容も、単なる「タウン誌」では無く「草津塾誌」のような特性を持つべきです。

高木:タウン誌については、ちょっとクセがあるものが良いと思います。方針の中の「新しい型の地域づくり」については、もう少し具体的な説明が必要ではないでしょうか。

根本:方針の中の「地域全体にとって有益な成果を目指す」ということは大切なことで、草津塾に参加している人だけでは無く、他の人にも有益で「住み良いまち」になるような取り組みが必要です。
 また、仕事の都合などで草津塾に参加できない人のためにも「タウン誌」は必要なことであり、参加しなくても、これを見れば草津のことが分かるというようなものになればと思います。

山元:前回の運営会議を踏まえて、二点申し上げます。
「草津年鑑」の意味は、市民にとっての白書として有効な手段になると思います。
 運営については、この地域の多様な人々の考えや事象を的確にとらえ、マネジメントしていく機能こそが草津塾として最も大切なことであり、「草津年鑑」だけを目的化せず、運営面における機能を確立することによって、色々な出し方ができるようにしなければならないと思います。

鳥居:最初は、草津塾をもっと身近で親しめるイメージでとらえていましたが、素案の文面も官庁的であり、学生のアイディアも借りてもう少し親しめるものにした方が良いのではないでしょうか。
 内容的には、特に異存はありません。草津塾が「私」のグループでは無く、地域全体にとって有益な成果を残せるということは、大切なことだと思います。
運営に関しては、ボトムアップが望ましいかも知れないが、それでは何処で挫折するのでは無いかという危惧から、前回提案しました。
 今回出てきた「マネジメント」と表現されているように、全体をサポートしていく運営体制が必要です。 学生や行政の方以外の、一般市民の参加が少ないというのが、私の実感として「さびしい」気がします。我々の働きかけが悪いのかも知れませんが、企業や商店の方、主婦などの参加により、総合的なものにしたいと思います。

大津:草津塾という名がある以上、少なくとも塾長が必要では無いでしょうか。「マネジメント」という言葉も出ましたが、やはり塾長がいて、その下に事務局があるという中で、プログラムを決めていかないと継続して機能していきません。
 現状では、草津塾への参加を呼びかけていくにも、何もありません。塾という以上、何かを学んでいく場であるので、「マネジメント」機能が無い運営では継続していかないので、こうした面を確立していかなければなりません。
 NPO法も来週位には成立するようですが、草津塾がコミュニティ事業団から離れたところで展開していくのか、それともコミュニティ事業団の中の一つであるのかという問題ももう少し検討していくべきだと思います。
 そうしたものが確立した時点で、来年度の行動開始ということになるのであって、そのあたりが一番のポイントではないでしょうか。

木下:はじめて参加させていただきます。

坂本:草津塾の方針としては、すばらしいものが提案されていると思います。
草津塾を今後継続していく上で、もっとハイレベルな論議が必要だと思います。例えば草津塾が、草津市の市民参加型まちづくりの中のブレーン集団としての位置づけが必要です。
 参加や表現の場として、タウン誌は良いと思し、これだけでは無く、FM放送などを使ってどんどん草津塾を宣伝していくというような、おもしろい活動をしていかないといけないし、運営体制についての論議と並行して、こうした具体的なプロジェクトをどんどん出していくことが必要なんじゃないかと思います。

卯田:タウン誌の発行はこれで良いと思います。手腕として色々あがっていますが、短期的な事業と長期的な目標を明示する必要があります。たとえばタウン誌を発行して、その後どう展開していくのかをしっかり見据えておかないと前進していかないでしょう。
 もう一点、草津塾が草津市でどういうスタンスをとるのか、何処までが可能で、何処までが限界なのかということも、示していく必要があります。

笹谷:私がやるべきことは、学生と市民とのコーディネイトと、草津市の地域情報化という側面です。学生の情報ボランティアを育成しながらインターネットを活用した展開ができれば、この地域で特色ある展開が出きると思います。
 福祉や環境・文化・歴史など、いくつかのテーマがありますが、その作り方に関しては「ウォーキングKJ法」を使って、それぞれがやりたいことをうまくグループ化していくことが可能です。

山本:一通りご意見をいただきましたが、論議の進め方として、総会への提案事項にそって、共有できること、もう少し深めていくこと、今後継続して話し合っていくべきことを仕訳しながら進めていきたいと思います。
 まず、活動方針の第一に掲げてある「地域を構成する多様な参加を得る」ということに関しては、一般の住民の方をはじめ、企業や商売の方、大学、主婦など幅広く参加していただくようにしていくということは全体として合意できたのではないかと思います。

山元:「草津年鑑」ということが大きなウエイトを占めていると思うので、そのことの意識通底をしていくことから論議していく方が良いのではないですか。
 例えば、「うばがもち」や私のつくっている焼き物など含めて、ものづくりのリサーチができていないし、行政の部分も同様の問題を抱えています。
 年鑑を出すことは、現状の中にあっては最高の手段であることは間違いないことですが、そのことも含めた全体としての循環システムにおける年鑑の位置づけを共有していくことが、この討議の中では最も大切なことだと思います。
このことを中心に論議していってはどうでしょうか。

山本:「タウン誌」や「草津年鑑」の表現の統一もできていませんが、要するに塾の現時点での情報戦略の意味を、活動方針や運営体制の論議の中でもう少し絞り込んでから、共通認識をつくっていくことが必要だと思うので、素案の順番に確認していきたいと考えます。
 いづれにしても冊子をつくっていくことにつながっていきますので、冊子づくりの目的や塾全体での位置づけ、戦略的意義、具体的内容や体制などから順に話を進める方が良いのではないでしょうか?

大津:私は、進行メモの最後に書かれているように、マネジメントスタッフの形成ということが一番大切だと思います。これが確立していないと論議は進まないので、組織体制のことから決めていくことが必要だと思います。

山本:大津さんは、冊子づくりという具体的な内容を論議する前に、運営の体制を決めなければならないというご意見で、

山元さんからは草津年鑑作成の意味づけを共有化していくことに焦点を当てるというご意見でした。
 論議の進め方として、冒頭申し上げましたように、重要であるからこそ、この場ですぐに結論がでない問題もあろうかと思いますので、素案の順番で、そうした問題とこの場で集約できる問題とを仕訳しながら進めたいと思いますが、この方法で進めてよろしいでしょうか?

山元:はい

山本:元に戻りますが、多様な参加を得るように努力してくことは共有できたと思いますが、それでよろしいですね。
 多様な人々という中には、企業・大学・地域住民・行政などがあり、そうした人たちを広く巻き込んでいくという基本姿勢で活動していきたいと思います。
 次の、「地域全体にとって有益な成果を目指す」ということについて、その方向性については合意いただけたようですが、もう少し掘り下げて「地域全体にとっての有益性とは何か」というようなことや、地域全体にとっての有益性を実現するための草津塾ということの位置づけの問題などについて、ご意見はありますか。

鳥居:まちづくりのブレーン集団という位置づけや、行政との関係についてどうなのか、という意見がありましたね。「有益性」ということを掘り下げていくならば、草津塾がまちづくりにどのように関われるのか、何処までが限界なのかということを理解しておかないといけないと思います。
 タウン誌を出すことが、地域にとっての有益性ということに収まっているのか、もう少し理想としてのものがあるのかが見えません。

山本:理想的な姿は色々描けますが、現状の塾の体制で可能な範囲というのがあり、今の塾で「地域全体にとっての有益性」をどうすれば最大限有効に実現することができるのか、という観点から考えていかなければならないと思います。
 総勢二十数名、多く見積もっても五十名余りの塾生で、しかも昨年八月に開塾したばかりで、運営体制なども確立していない中で、何を行うことが効果的に作用するのかということを的確に判断する機能が「マネジメント」だと考えています。
 事務局サイドで提案させていただいたのは、こうした現状の中で最も有効だと考えられる手段としてのタウン誌づくりということです。
 従って、実現可能な有益性の幅というのは、草津塾そのものの段階によって変わってくるものだと考えていますが、いかがでしょうか?
坂本:でも、最終目標というのは明言しておくべきではないんでしょうか。
例えば「この地域で公園がほしい」ということがワークショップで出てきた場合、公園をつくるには行政の力も必要となってきます。幅広い参加を得るには、そうした最終目標を明言した方が良いと思います。

山本:最終目標という意味は、まちづくりのブレーンやシンクタンクというような塾の機能的な面でのことか、それともグラウンドワークを行うといった具体的な活動や成果の目標のことなのか、どちらですか?

坂本:草津塾が、どれだけ力を持てる可能性があるのかを示すという意味です。そうしないと「こうしたことができる」という期待で活動しても、ある限界があるとすれば「だまされた」という失望感を与える結果になると思います。

卯田:活動を進めていく中で、塾のレベルもあがっていきますので、その時に坂本君が言っている問題がでてきます。だから、今、現状でできるものとしての取り組みと、それを達成した時に何ができるのかという大きな目標をもっておく必要があります。

鳥居:塾に期待するものについて、大分格差がありそうですよね。到達目標のレベルについて私自身は、あまり大きな目標を掲げすぎて挫折するのもいけませんし、率直に申し上げて「まちづくりブレーン」的なものはちょっと無理なような気がします。しかし、最終目標があって、そのためのステップとしてタウン誌をつくっていくというような、長期の目標は必要なので、そのあたりのレベルを合わせることをしておく必要はありますね。

山元:草津塾のおもしろさというのは、基本的には「行政とのパートナーシップ」にあります。例えば公園という場合、そこに公園が存在すること自身よりも、都市空間の中に公園がなり立つ意義を地域全体で共有できることの方が大切であり、それを形成するのは行政では無く我々の仕事だと思うので、そのイメージを情報などによってつくっていくという機能論として塾をとらえないと駄目だと考えます。例えば公共空間というのは地図では色分けされているけれど、公園や道路、神社やお寺、駐車場の存在の意味や機能・活用についてはあまり論じられたことはありません。
 具体像については、それぞれの地域でもっておられる訳ですから、そのこと自身は、それぞれが努力して実現していくべき問題だと思います。あめ玉をブラブラさせておくような方法はとるべきではありません。

山本:将来的な目標と、当面の活動とその位置づけということで、まとめていけば良いと思います。
 例えば、まちあるきワークショップを実施して、その意義を地域の有益性という面から作用させていく上で、冊子によってその成果を出していくということが現時点においては最も有効で現実的な選択だと思いますので、その意味でのワークショップと冊子づくりの関係をとらえていただければ良いと思います。その次の段階として、冊子にまとめたものの内容が実現化する条件が形成されてはじめて、次の段階の具体像が語れるようになると思います。そのあたりのプロセスのイメージを総会で語り合えるようにするということで、集約したいのですが、いかがでしょうか?
 また、その地域全体のプロセスをつくっていくためのマネジメント機能を草津塾が果たしていきたいと思いますので、そうしたことも総会での論議の対象としたいと思います。

服部:色々意見が出ましたが、ここでもう一度、草津塾がスタートした時点での基本的な考え方を確認していただいた方が良いと思います。
 塾生募集の案内の中で、「草津のまちづくりについて、参加者自らが考え学習していく場、まちづくりの情報交換や交流の場、行政とのパートナーシップによるまちづくりの場」ということで、塾の性格付けをしています。
 そのことを念頭において、論議をしていってもらいたいと思います。

大塚:山元さんの発言で、行政にできないことを草津塾でやっていくということをいわれましたが、例えば、大学では授業で調査したことを地域に公開して、リサーチする機能が無いんですね。そうしたことができるのが草津塾だと思うのです。
 タウン誌の性格についても、市役所や商工会議所などが出しているのとの差別化する意味では、ユーザー(市民)が草津市のことをどう思っているのかを取り上げることによって、塾としてのアイデンティティが出せるのでは無いかと思います。

山元:そろそろ、塾のマネジメントをどうしていくのかということを決めていきませんか。

山本:そうですね。

山元:塾長や事務局をどうしていくのかというような、システムの問題としてとらえると、それぞれ考えがありましょうが、元の論議に返って、そろぞれのプロジェクトをどのように総体としてコーディネイトしていくのかという能力が問われており、これが大きなポイントだと思うのです。そのシステムがないのに、これ以上論議が進みません。

山本:運営体制という問題に論議が移ってきましたので、塾のマネジメント機能について論議していきたいと思います。
 私の考えとしては、大津さんから問題提起があった「草津塾をコミュニティ事業団の中でとらえるのか、それともNPOとして独自に活動していくのか」という問題については、事務局を何処に置くのかという問題としてでは無く、「行政とのパートナーシップ」をどう形成していくのかということと絡めながら、その関係の中で運営体制を確立してくという観点から論議していかなければならないと思います。みなさん、いかがお考えでしょうか?

大津:行政からの支援はもちろん必要ですが、独立したNPOとして位置づけて運営した方が良いと思います。営利を目的とする訳ではありませんが、冊子をつくる経費なんかも広告収入などで賄えるようにした方が、将来的に考えて好ましと思います。

大塚:それは、すごく根本的な問題ですが、どうなんですか?

中村:事業団が呼びかけてつくって、色々活動していただく上に、さらに新しいNPOの団体をつくるというのは制度上なじまないように思います。草津塾が、何年か先に実績や成果をあげてきた中で、独自に活動する団体をつくろうかというように、意志のある方が寄っていただいてNPOをつくるというのなら分かりますが、今の段階でNPOをつくって、それに事業団が関わるというのは、制度上問題があるように思います。

山元:現時点で、そうしたことを論じるべきかどうか疑問です。その話はシステムの問題では無いので、ここでの論議はおいておきましょう。

山本:事業団が塾を開設したのは事実ですが、事業団の役割そのものが行政・市民・企業・団体・大学とをつながいで、より有効なまちづくりを行うというコーディネイト機能にあるわけですから、塾の中に、色々なセクターに属する人々に参加いただき、市民参加のまちづくりを促進することに大きな目標を持つならば、草津塾をパートナーシップ型まちづくりの一つの成果としてとらえることができます。またそうしたことを形成する場やきっかけにするのかという捉え方もできる訳ですが、これは原則論でいうよりも、草津塾がどういう段階にあるのかという面で、論議の必要が出てきた時に考えれば良いことだと思います。

大塚:大津さんが発言された、NPOの方が良いという背景には、行政に対して率直な意見が言えるようにすべきだとの考えがあるのではないですか?

大津:低い次元に活動の幅を押さえておくというのであれば、今のままで良いし、もっと先を見据えて大きな目標を持つならば、NPO的な形態が望ましいということです。
専任の事務局を持つ位で無いと駄目だと思います。

大塚:草津塾で色々な問題をリサーチしていくということに関して、制限はあるのでしょうか?

山本:リサーチというのか、色々なことを進めていく上で、情報というのが最も重要な要素で、市役所の方でも情報公開制度がつくられましたが、そうした情報というものが無いと自発的な参画というのはありませんので、塾で情報を調べて、政策情報的のものをみなさんに知ってもらって、共通の課題をもって一緒にやっていきましょうということが、草津塾の機能として欠くことができないとです。

服部:今の論議は、ちょっとレベルアップになっているように感じます。もともと塾のきっかけは、まちづくりへの市民の参加があまり行われていないので、市民の参加の重要性を知ってもらい、とりあえずまちづくりの勉強をしてもらおうということです。
また、主婦層や学生も含めて色々な人々が集まって互いに交流したり、草津の魅力を探し、みんなに伝えていこうという意味で情報の提供を考えています。
従って、行政に対する要望や意見をする団体では無いということが基本であり、スタートの時に草津宿本陣で乾さんからもお話いただいたと思います。
コミュニティ事業団の一つの事業として草津塾を展開していこう位置づけです。
将来的には、行政への意見がまとまれば、例えば市長との懇談会という形でお話を聞いてもらったり、グラウンドワークという形でまちづくりに寄与していくというものになるかもわかりませんが、現時点では、一度に飛躍した形で論議せずに、まちづくりの勉強という観点で総会を進めていただきたいと思います。

笹谷:もちろん、行政に対する無責任な要望というのは駄目ですが、自己責任をもって行政に対していうべきことがあれば熾烈にいうというのが、私以上にリベラルで厳格な乾さんの考えかたですので、誤解の無いようにして下さい。
 
山元:言葉の問題はさておき、パートナーシップが塾の最大の原点です。もう一つは提案集団では無く、すべて自己責任でやっていくという組織であることも間違えないでいただきたい。行政に対して、好き放題いうというようなものでは無いでんすよ。服部さんのおっしゃてることも、「いいっ放しでは駄目だよ」ということだと思います。
 そのあたりをはき違えると、まとまっていきませんので、もう一度話を元のマネジメントの問題に戻しましょう。

笹谷:申し訳ありません。先程の学生たちの意見にあった、目標の明確化という点で、そこのところをはっきりさせる必要があると思い、このことに論及しました。
   ー中略ー

 この後、草津塾が単なる行政へ要望を出すという団体では無く、パートナーシップや自己責任を基本とした活動を行うことに関して意見が交わされた。市民参加やパートナーシップに関する基本的な姿勢については、別の機会をもって定式化していきたい。

山本:草津塾の基本的なスタンスという論議の中で、行政への提案などに関連した意見が交わされている訳ですが、活動方針の中で論じるまでも無いと思い確認しませんでしたが、冒頭で「まちづくりを住民行政・団体・事業所などとのパートナーシップによって行うことを基本」として明記しています。
 このパートナーシップを具現化していく上でマネジメント機能が重要であるということであり、そのパートナーシップを実現するためのマネジメントに関して、事業団がどのような役割を果たせるのかという競争原理の中で、塾運営が具体的になってくると思いますので、ここではこれ以上の論議は意味を成さないと考えます。
 一旦休憩を挟んで、もう少しマネジメントについて話しを先に進めていきたいと思います。



  ー休憩ー

山本:再開します。
活動方針については、大体まとまってきましたし、冊子づくりの意味や位置づけについても、色々な論議を通じてある程度理解が深まり、共有化できてきていると思います。
 その上で、具体的に「草津年鑑」をつくる中で、政策提言的なものが出てきた時に、どう扱っていくのか、また、本当に草津塾として提言を出せる状態にあるのか、また責任ある提言を出せる状態をどうつくっていくのかという問題の中に、マネジメントという機能が大きな要素としてあります。
 率直に申し上げて、個人としての提言は各種あっても、草津塾として出せる状態では無いと思いますので、政策的提言が出せるような機能を持ちうるものとする条件づくりという観点で見れば、おのづと来年度の冊子の内容も絞り込まれてくると思います。いかがでしょうか?

笹谷:やっぱり、将来的な機能として政策提言を出すというようなことを書かないと、単なるカルチャースクールであり、市民を愚弄することになるのではないですか。

細谷:単なるカルチャースクールといっても、今までこうしたカルチャースクールも無かったと思います。私たち自身でこうした活動をつくっていくこと自身が画期的なことではないのでしょうか。

山元:様々な人たちの政策についての考え方がありましょうが、それらを草津塾という行政とのパートナーシップという基本的な素材の中でどのようにまとめていくのかという事から話をしいくことが、ここでは必要です。
具体的な提案について、話し合い合いましょう。
 
 〜この後、運営体制については、全体の企画会議とそれぞれのプロジェクトを分けるなどの案について協議した。
 次回の運営会議には、運営体制について具体的な形に集約していくために、可能な限り各自レポートを提出して、それに基づき協議していくことを確認し会議を終了した。





3−6 塾生総会

 1998年3月8日 、草津観光物産会館(脇本陣)で「塾生総会」を開催しました。
 3度の運営会議での論議を経てまとめられた活動方針や運営体制が示され、草津塾としての基本スタンスが明確にでき、実りの多い総会となりました。

 成果は、次の4点です。

@塾生が自主的に運営していくガバナンス の確立
A基本方針・活動計画の決定 
B運営体制の確立 
C具体的行動の確定 






一.活動・会計報告

 昨年八月に開塾された草津塾が、コミュニティ事業団や行政の関係課が共同して開設された経緯や、学生スタッフ制度を導入し、行政主導型の運営ではなく、市民参画によるパートナーシップ型のまちづくりを目指した運営を行ってきたことや会計状況について報告されました。


 二.活動方針

 草津塾の基本性格や目的および、まちづくりにおける機能・役割については、「対行政」という姿勢ではなく、パートナーシップ型まちづくりを基本としながら、地域全体にとっての公共的利益を実現する活動を行うと共に、地方分権時代における新しい型のまちづくりを形成していくことなどが確認されました。


 三.運営について  

総会前の運営会議で、特に論議の中心となったのは、塾のマネジメントや運営に関しての問題で、この課題について総会では、月例会合やプロジェクト会議などにより、マネジメント機能を形成していくことが確認されました。
 月例会合は、まちづくりに関する基礎講座なども企画し、塾経営を学習したり、意見交換をする開放された場となります。

 
(事後評価)

活動方針(資料添付)の確定により、草津塾の性格付けや方向性が確定された。
また、討議の過程を通じて、運営スタッフとして担う体制が確立した。

草津塾の運営については、次のとおり確認された。

 草津塾が開設され、これから本格的な展開を目指していくという過渡的な現段階において、マネジメント体制をいかに構築していくかということが、最も重要な課題となっています。また、活動を担うマンパワーの問題に関しては、地域の特性を生かして「学生スタッフ制度」をより充実すると同時に、この地域を生涯の生活の場とする住民の中で、運営スタッフをつくっていかなければなりません。このことから、パートナーシップ型まちづくりに向けての長期的戦略と、実践的なバランス感覚をもった人材を育成するためのシステムを形成し、その中で全般的運営体制の確立を目指しましょう。また、自主的運営の前提となる財政問題については、事業団・行政・事業所などからの支援を得ると共に、自主財源確保のための事業展開を考え、経営感覚をもった塾運営に努めていきましょう。
  (別紙付録参照)


年間のプロジェクトについてについては次のとおり
 
 活動方針および、運営に関する現状を考慮した効果的手段として、来年度においては(仮称)「市民白書」を作成・発行していきたいと考えます。
 これは、@多様な人々の参加を内在化する、A地域における塾の存在をアピールしてより多くの参加を得る、B地域の魅力や課題について再発見する、C塾活動のプロセスを公開する、D活動成果の地域全体での共有化を図る、E行政・商業関連・大学との連携を深める、F物販による財政基盤の糸口をつかむ、G地域情報のデータベース化により、政策・経営情報の提供を図る、等々といった目的をもって行うものであり、具体的形態については、塾生による協議の中で決めていきます。
 また、冊子という形態だけでなく、インターネットなどの活用により、総合的な市民情報戦略を確立していきたいと考えます。 

 具体的活動については、4つのグループでの班活動と全体としては冊子づくりを行うことなどが決定された

 大きな活動の柱として、「市民がつくる草津のまちづくり白書」を作成していくことになりました。
 内容は、草津市の自然や歴史、地域経営やまちづくりに関する情報などを満載したものになります。

 「市民まちづくり白書」づくりは、塾生が各プロジェクトに分かれてワーキングしていきます。

 総会では、そのテーマを決めるために「ウォーキングKJ法」というワークショップが行われました。
 はじめに、各自「私がやりたいこと」をいくつか書いて、その中で一番やりたいことをマジックで大きく書き出し、共通する人が集まってグループをつくりました。その結果は、次のとおりです。

 @情報班

 地域情報の発信や、草津塾のアピールおよび市民参加というものを多くの市民と共有していくために、インターネットなども使って行っていくグループ。

A共生プランナー班 

 このグループは、子どもから老人まで、みんなが支え合うまちに向けて、活動していきます。

 Bイキイキ ワクワク ポップなアートのまちづくり班
 はじけるような、若さあふれるアーティステックで楽しいまちづくりを目指します。

 C環境班 

 自然環境や生活環境をテーマに活動していくグループ。草津川のことも研究していきます。

(今後の課題・計画)

草津塾の理念や方向づけについては、今回の総会およびその準備過程のおいて共有できたのではないかと思う。
しかし、実際の活動を通じて現実化していくには多くの課題をもっていることも事実である。
現実化の中での困難性をどう克服していけるかが今後のプログラムの中で問われるものとなった。


 

(塾総会資料)

1.活動方針

 草津塾は、まちづくりを住民と行政・団体・事業所などとのパートナーシップによって行うことを基本にかかげています。このことから第一に、地域を構成する多様な参加を得ることを活動の前提とします。
 まず住民の参加については、「まちづくり」に関する活動や認識の多様な段階をどのように内在化し、相互発展へと向かわせていくことができるかということについて考慮してく必要があり、また、単に住民というだけでなく、企業市民という概念や大学・各種機関などを含めて、地域を構成する様々な立場の人々を対象として活動します。
 第二に、活動の主眼が多様な参加形態を包有しつつ、地域全体にとって有益な成果を目指すことが、市民が共同でまちづくりを行ううえでの草津塾の存在意義となり、このことを念頭においた活動を行います。
 第三に、現在の社会情勢や地域を取り巻く状況についても考慮することが必要であり、とりわけ「地方分権」によって、地域や市民活動のあり方が大きく転換していくことの意味を理解しながら、新しい形の地域づくりを目指していくことが求められています。
 最後に、草津塾は住民自治に基づくまちづくりを行うための場です。
 草津塾のシステムを地域全体の共有財産としていくために、塾生の自主的運営を基本に据えながら、公共的利益のあり方を常に問いながら活動を展開していきます。


草津塾の運営のについて

 草津塾が開設され、これから本格的な展開を目指していくという過渡的な現段階において、マネジメント体制をいかに構築していくかということが、最も重要な課題となっています。また、活動を担うマンパワーの問題に関しては、地域の特性を生かして「学生スタッフ制度」をより充実すると同時に、この地域を生涯の生活の場とする住民の中で、運営スタッフをつくっていかなければなりません。このことから、パートナーシップ型まちづくりに向けての長期的戦略と、実践的なバランス感覚をもった人材を育成するためのシステムを形成し、その中で全般的運営体制の確立を目指します。
 また、自主的運営の前提となる財政問題については、事業団・行政・事業所などからの支援を得ると共に、自主財源確保のための事業展開を考え、経営感覚をもった塾運営に努めます。

本年度のプロジェクトについて
 
 活動方針および、運営に関する現状を考慮した効果的手段として、本年度においては「市民白書」を作成・発行していきます。
これは、
 @多様な人々の参加を内在化する、
 A地域における塾の存在をアピールしてより多くの参加を得る、
 B地域の魅力や課題について再発見する、
 C塾活動のプロセスを公開する、
 D活動成果の地域全体での共有化を図る、
 E行政・商業関連・大学との連携を深める、
 F物販による財政基盤の糸口をつかむ、
 G地域情報のデータベース化により、政策・経営情報の提供を図る、
等々といった目的をもって行うものであり、具体的形態については、塾生による協議の中で決めていきます。また、冊子という形態だけでなく、インターネットなどの活用により、総合的な市民情報戦略を確立していきたいと考えます。
 




3−7 草津塾の基本性格と市民白書づくり

 1998年の4月と5月の月例会では、総会決議事項の再確認や各班活動の計画づくりをおこないました。
 こうした会議をおこなう中で、4つの班に分かれて実施する活動の具体化などが図れましたが、一方で班分けしたことのより、実際の行動を責任を持って担う塾生が未成熟(または時間的余裕のある人が無かった)であるということが課題として浮き彫りになりました。
 班活動によって、自主的で積極的な活動を行う責任が生まれます。この連絡調整をとることが事務局の役割でしたが、事務局として関われるところが限定的にならざるを得なくなり、全体としての運営も分散化したことも事実でしょう。もう少し、時間的な経過の中で内部の足固めをしてから班活動を行った方が良かったのかも知れません。



3−8 草津塾公開講座「NPOマネジメント講座」



 1998年6月14日(日)、草津コミュニティ支援センター(巻末資料参照)で「NPOマネジメント講座」を実施しました。 この公開講座は、特別講師として「参加のデザイン研究所」の世古一穂さんをお招きしました。
 「NPOマネジメント講座」の第1回目となったこの講座では、草津コミュニティ支援センターのマネジメントを具体的テーマにしたもので、内容は「市民白書」の理論編として活用すると共に、コミュニティ支援センターの運営の一助になればとの考えで企画したものです。
 事後評価としては、コミュニティ支援センターの運営を具体的テーマとしてNPOマネジメントを考えていくプログラムとして実施しましたが、参加者の「コミュニティ支援センター」や「NPO」そのものの理解度が初歩的段階であることを念頭におく必要があったように思います。
 これは、センター事務局加盟団体の人々の参加を得られなかった点が大きな要因となったようです。





 実際に、今回の内容は基礎講座的なものとなり、その後のセンター運営にあまりプラス要因として働かず、意図した結果が得られなかったのは大変残念でした。
 しかし、NPOに関する基礎知識についての講演やワークショップの手法につての基礎的な学習としては有益な講座となったと思います。




草津塾通信第8号


1998年6月14日(日)
 草津塾公開講座


「NPOマネジメント講座」報告

 於:草津コミュニティ支援センター



 「NPOマネジメント講座」の第1回目となる今回は、特別講師として参加のデザイン研究所の世古一穂さんをお招きして、草津コミュニティ支援センターのマネジメントを具体的テーマに開催しました。
 
 この内容は、「市民白書」の理論編として活用すると共に、コミュニティ支援センターの運営の一助になればと願っています。

−以下は、草津塾「情報班」の木下靖史さん(立命館大学景観計画研究室)を中心とした学生スタッフがまとめてくれたものです。−



午前の部

世古一穂さんの講演では、いくつもの新鮮で本質的な内容にみな聞き入っていました。 その内容を、キーワードごとにまとめてみました、うまく伝われば良いのですが。


特定非営利活動促進法(通称NPO法)

 営利目的の数々の職業に余り興味を抱いていなかった世古さんは「非営利の仕事がしたい」と思われていた。非営利といえば、財団法人や社団法人などだが、当時財団法人を設立するための五億円という資金も、社団法人を設立するための三千人という社員も手が届かないものだった。まちづくりや環境問題の解決に、市民の参加が不可欠であるといわれている今、これでは市民が動こうにも動けないという状況もふまえて、では市民の非営利活動が簡易になるような法律ができれば? と世古さんらがおもわれたのを発端の一つとし、先日 数々の事柄を乗り越え、ついに「特定非営活動促進法」が誕生した。
簡単な内容としては、1.市民が簡単に法人をつくることができる。(この部分は完全ではないが)2.市民の社会参加の情報交換が容易になり、存在感が強調できる。 また、これからの目標として3.特定民間非営利活動に関して、一部税金が控除される。 といったコンテンツが含まれている。そして、この法律の成立により、ようやく市民参加の社会的枠組みができたと言えるようになった。

参加のデザイン

  世古さんが特に興味をもたれた職業が、「参加のデザイン」という職業であった。(職としての認識は、日本ではまだ薄いが) 今求められているまちづくりのシステムとは、市民、行政、企業が、それぞれ対等な立場でパートナーシップを組んで行うというものである。中でも、「市民が決定に際して力を分担すること」がもっとも重要であり、それには専門家と住民の質の高いコミュニケーションを可能にする「参加のデザイン」が必要である。そしてそれを構築する専門家が不可欠である。

パートナーシップ 

 世古さんが考えている、今必要とされているパートナーシップの原則とはまず互いに相互の認識理解があり、そして対等の関係で共通の目標を持っていなければならない。次にその目標に向かうとき、1.公開された関係(透明性)を持っている2.だれでも参入できる3.各々が柔軟であり、 創造性、またそれを 受け入れる受容性を 持っている以上の事が望まれ、また参加が創造活動に結びついていることにより、「癒着」との違いも明確になる。

市民参加 

 先述のNPO法により市民がまちづくりに積極的に参加できるような制度が保証されつつある。こういった中では「市民参加」そのものについてしっかりと認識しておかなければならない。キーワードは、「対等」である。市民参加には、市民、行政、企業それぞれの対等な立場、というものが不可欠である。ただ”市民個人と組織”という構図の中では対等足り得ることはないだろう。ならば個々の意志を統合した組織=NPOをつくればよい、といった背景から最近日本でもNPOの数が著しく増えつづけている。 では、NPOが招く社会とはどういったものだろうか。大きな枠組みでいえば、分権(地方分権、市民分権、その2つからうまれる地域分権)による分責から、自己責任社会がうまれるだろう。 なれ合いの付き合い同士でなかなか成果があがらないといった参加の形では、もはや意味を持たなくなりつつある。 アメリカのような「寄付の文化」も無く資金繰りが苦しいNPOでは、「お金がなければ知恵をだす」ぐらいの活力が必要であり、また責任を分担できる程信頼のおける人以外の人とは組まず、いないのなら一人でやるくらいの意志の強さもまた必要とされているのである。 最後に、世古さんの注釈を記します。 今回講演の中で「これが答えである」というものはない。答えとは、各々がそれぞれ持っているべきものであり、またそれを持ち寄ることが、組織として大きな力をつける方法となるのである。


午後の部

午後の部は、ウィッシュポエムを作ることによって、草津コミュニティ支援センターに対する希望や願望を表現した。

 ウィッシュポエムを作る手順としては、まず、参加者が名前と誕生日のみを自己紹介して誕生日順に横一列に並んだ。最初のうちはなかなか一列にならずみんなとまどいがちであった。その後、隣同士2人ずつペアになり自己紹介シートに各自記入した。 
 次にペア内で一人3分間ずつ自己紹介をおこなった。一人一人の持ち時間を平等なものにするため、時間はストップウォッチを使って正確に計られた。その後、一人30秒でペアの相手を全員に対して紹介した。人を簡潔に紹介するのには程良い時間であるが、少し不足気味のようであった。   
 自己紹介が終わると、別のペアと組んで4人組を作り、さらにその4人組同士が合わさって8人組を作った。(全体で4グループ)各グループ内で誰が進行役になるかを指でお互い指し合って決定した。この頃には、各グループともに徐々に意見がまとまってきているようであった。
 その後、各個人が、「草津コミュニティ支援センターが***だったらいいなぁ。」というふうにセンターに対する希望・願望のポエムをポストイット(小さな紙)に書き、グループ内で紹介し合った。各個人のポエムを尊重しつつグループ全体としてのポエムを一つ作り上げた。このポエムにどんな題名をつけるかをそれぞれの意見を持ち寄ってグループ内で紹介しあい、一つのポエムを完成させた。ポストイットを貼る(ポストイットノートを作る)だけでは、全体としてのポエムが作りにくく、プレゼンテーションには不向きであることから、マジックやクレヨン等を用いて発表用に清書をし、ポエムとポエムの題名についてグループの意見を全体に対して発表した。 与えられたテーマが一つだったにもかかわらず、個人個人の違った想いが一つのポエムとなって上手く表現されており、各グループとも個性のあるポエムに仕上がっていた。 ウィッシュポエムを作ることによって、参加者の草津コミュニティ支援センターへの本音(希望・願望)を聞くことができ、さらに、今後のセンターに対する課題とその解決策を次に話し合った。


<ウィッシュポエム>

学びの遊縁 〜西大路横丁私のセンター
 老若男女いろんな人がいるといいな いろんな人との交流があるといいな 気さくな人がいるといいな 気軽に集まれるといいな 気軽に立ちよれるところがいな みんなが気軽に学べるといいな 対等につながっていけばいいな 支援の文字がなくなればいいな 

駅から宇宙まで3分
 駅から歩いて3分のところにあり、モダンで明るく入り易ければいいな 気楽に来れるセンターだといいな いろんな人がふと寄りたくなるようなセンターだといいな 何時でも気楽に立ちよれてそこにいる誰とでも気楽に話せるセンターだといいな 喫煙コーナーがあるセンターだといいな いろいろな年代、職業の人が集って話合いのできるセンターだといいな 何かが見つかるセンターだといいな 成層圏にあって、足元に地球が見えるといいな

心は空色コミセンは笑顔色
 私のセンター、いつ来ても笑顔の人ばかりだといいな 私のセンター、たくさん人が集まるセンターだといいな 私のセンター、何時も使えるセンターだといいな 私のセンター、ひとつのテーマに気軽に意見を交換できるセンターだといいな 私のセンター、ふれあいサロンのようなセンターだといいな 私のセンター、ゆっくり昼寝ができるセンターだといいな 私のセンター、いつでも人が絶えないセンターだといいな 私のセンター、ぶらりと立ち寄って笑顔で帰れるセンターだといいな  

創る交る生る 私のセンター
 草津を日本の中心に高めるセンターだといいな 自分の時間が空いたときに気軽にブラッとよれて「草津をよくする」自由な センターがよいね 何かがうまれる何かがつくれるセンターがいいね 市民が気軽に入れる喫茶店のようなセンターがいいな 草津塾のサロンのようなセンターがいいな 目標が達成できるようなセンターだといいな 流れをつくるセンターだといいな ゆとりのある人がうまれるセンターだといいな

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 今後の草津コミュニティ支援センターの改善策(ワークショップの結果) 

 各班ごとにこれからのコミュニティセンターはどうあるべきかについて聞いてみたところ、以下のような主題が挙げられました。

・喫煙できる場
・情報発信をする
・学べる場
・くつろげる場
・集まりやすい場 

この五主題の改善策を各班、各個人で考えました。

煙できる場
・控え室を「おとなのひみつ」の部屋にする。・換気をひと部屋だけ強烈にする。(ドアを閉めきる)

情報発信できる場
・簡単なテーマによる講演会または話し合いの場をつくる。市民にしってもらう。・リレー形式の情報誌みたいなものをつくる。何でも感じたものを書き込む。・目立つ看板をつくる。・どんな事をする場所なのか看板を出す。・はずかしがらずに自分の興味あるものを人に呼びかけましょう。

学べる場
・パソコン学習ができる ようにする。・サーバーを生かしたインターネット等情報機器を気軽に教えてもらえる教室を開設する。・インターネットの講 習会をする。・難しいことをわかりやすく解説する講座を開く。・生活に密着した大切 な情報に対する講座を開く。・学ぶ場の提供をする。・大学の先生をボランティアで呼んでくる。・学ぶ講座をつくる。

くつろげる場
・気楽にここに来ることから初めてくつ ろげる。・何でも話せる仲間との出会い。そこに行けば誰かと出会える。・規則がない自主的行動にする。(マナーは守る。)・マイスリッパ、マイコップをいつも持参する。・誰でも入れる集いの場・たばこを吸えるようにする。(テラスのようなところをつくる。)

集まりやすい場
・管理業務をボランティアでする。NOO 組織への第一歩・いつも山本さんがいる。・入室するとき簡単な手続きで入れる。・来て得するようなものの仕掛けをする。・活動例会等を毎日するくらいの活動。・いい人がいる。共同作業で道が広がる。・看板を作る。・玄関側へ食堂と同じように「今日のメニュー」を書く。・みんなに知ってもらうように宣伝し、その宣伝も、誰でもこの場がどういうものかわかりやすい内容で伝えていく。(ポスターなど)・テーマを決めて毎日展示会を開催する。・この施設の紹介をもっとする。存在を知らせる。・どういう事ができるのか、何がされているのかを知ってもらう。名前がかたくるしいのでかえる。・何か魅力のある目標なりテーマを作る・新聞各紙が置いてあり、自由に読めるようにする。 

以上のような意見、要望、希望が挙げられました。このことからわかるように、草津コミュニティ支援センターは様々な人、つまり様々な職業、様々な趣味、様々な顔を持った人が気楽に来てくつろげ、興味のあることがあれば学べ、世界中の人または地域の人に向けて知ってもらえるような支援センター、そして気軽に喫煙できるセンターであればいいと望んでいることがわかりました。しかし、このセンターには解決しなければならない点がある。それは、「支援」という言葉を取り除かなければならない。何故かというと「支援」という言葉は何らかの力を受けてひきだしてるというか何らかの力があって成り立っているような意味合いがあるのでこれからは市民参加型のコミュニティセンターにして いかなければいけないので早期解決する方向で考えていくべきである。 この4班のように個人それぞれが意見を述べ、それぞれが意見を聞き、議論できるような環境をつくることを心がけたいです。みんなが仲睦まじく集えるコミュニティセンターで あるように心がけたいと思う。


ふりかえりシート集計

前半(午前の部)

学んだこと
・ パートナーシップの本質
・ NPOと云う意味、パートナーシップと癒着について、少しだけ解りました
・ NPOとは何か
・ パートナーシップ
・ 市民参加の重要性
・ NPOと行政
・ 市民セクターの位置づけ(権利など)と、責任が伴うということ
・ 公益は国だけでするものではない、又、できないと思う
・ NPOは淘汰されていくべきだということ
・ パートナーシップに見る「悪意」、「癒着」の概念の明確化
・ パートナーシップのありかた
・ 響きのいい言葉に惑わされないパートナーシップ
・ 地方分権には、市民も含まれていたこと
・ 地方分権(以前まで、言葉だけは知っていても意味を知らなかった)が、私達も責任を負う存在であることが分かりました
・ NPOについて、ボランティアとして役立つか
・ NPOの存在、「パートナーシップ」などの言葉の意味
・「パートナーシップ」や「NPO」など、今まで語句だけ耳にしていてあまりその意味を深く追求したことがなかったが漠然とだが解った気がした
・参加型の講演会の方法
・対等・パートナーシップの概念
・「参加のデザイン」という言葉の意味、パートナーシップの時限性
・社会性
・参加のデザイン、NPOとは、パートナーシップのまちづくり
・ NPOの意見意義が判った、自己学習の大切さを知った
・ NPOの概念が理解できた

気付いたこと
・ たんなる好き寄りグループではだめ
・自主的に行い責任を持つ
・まちづくりは市民もする
・「NPO」
・ 行政に対して批判・要望は、まだ行政に依存しているということ
・ 今まで自分が市民として(理論があるわけではなし)個人の思い付くままやっていたことが地域分権・自己責任社会の言葉で強調できると認識しました
・ コリャ、頭脳戦だわ
・ NPOとして活動しようとするときには、言葉のイメージに左右されないように気をつけなければならない(誤解が生じ易い)
・ NPOに関心があるのは20代と50代以上が圧倒的に多い
・ NPOに必要なのは、やはり「Voluntary」!自発性とMission(使命)であるということ
・ まだまだパートナーシップのあり方が、みんな理解できていないと思います、まだ参加だけで終わっている気がします
・ パートナーシップについてこれからどのようにしていくのか
・ 自分の知識の薄さ
・ 意思表示の効率性
・ 市民・行政・企業の対等性
・ 自己閉鎖
・ 思いのほか早く世に普及(認識が)しそう

面白いと思ったこと
・ デザインの専門家が存在していたこと
・ 乗り合い舟
・ 参加のデザイン
・ 世古さんの教訓
・ 思考と言葉が追いつかない
・ みんなのイメージが違う
・ 番号を使った講演方法
・パートナーシップが癒着という言葉と結びつく危険性
・ 乗り合い舟、ノアの箱船になるかドロ船になるか?
・ NPOを作る目的
・ 知恵がないからお金もない
・ 半端な人と組まない
・ 今日は気楽に勉強ができて良かった
・ 言葉1つでも個人個人によって多様な意味のとらえ方があることが面白いと思いました
・ たとえば「パートナーシップ」という語句を日本語にしたときに一人一人で違う意見を持っていること
・ 自分で考えていた様々なことが、現場の人の言葉で裏打ちされたこと
・ 日本の寄付文化
・ ハンパな人と組まない
・ パートナーシップのまちづくり

実行しようと思ったこと
・ まちづくり(コミュニティ、町内会)
・ 勉強していくこと
・ 参加する
・ まだ実行に移せない
・ 自己責任
・ 今日は、私の所属しようと思っております2団体のNPO法人化について
・ 今後の時間で考えよう
・ 良いパートナーシップを築く、(癒着になりにくい社会システムにしてしまう)
・ いろんなところに知恵を出して活動すること
・ ハンパな人と組まない
・ 市民参加の前に、市民が活動に消極的であったり、知らなかったりするので、宣伝をしていきたいです
・ まだ何もわかっていないので、とりあえず言葉の意味をいろいろ調べようと思います
・ 自分で何ができるかをまず考えること
・ 京都でNPOをつくるor入って活動すること
・ 知恵を出す、ないものはつくる
・ 参加して後批判する
・ 私には何ができるか
・ 現在、身の回りのことでNPOとのかかわりを確認し新たに実行につき考えたい

質問したいと思ったこと
・ 質問することがよく分からない、今まで行っている事は、ほんの小さなグループに過ぎないからそこまで深く考えていなかった
・ NPO法の内容
・ NPOの資金源
・ で、何がしたいか(自分に)
・ NPOで法人格の条件に満たない小規模な組織は、何が不都合、困るか
・ 企業との付き合い方、社会貢献とはいえ企業
・ 企業の社会貢献について
・ 収入はどれくらい?

その他、感想
・ 参加してお話を聞けたことは、これからの活動に役立つと思う
・ 難しい話が出てきてよく分からないがこれから少しずつ勉強していきたいと思います
・ 非常に面白かった
・ 簡潔明瞭でわかりやすかったです
・ 私は現在(財)大学コンソーシアム京都というところでNPOへのインターンシップのコーディネートをしています。日本社会におけるNPOと大学との関係に興味があります。今日の話をどこか(学生たち)にFeed Backしていきたいと思います。
・ 僕の学部で、1回生向けに講演してほしいなと思いました
・ 新しい視点ができました
・ NPO活動が草津市で本当に活動していくときはいつになるだろうか。市民活動が広がりにくい。地元に昔から住んでいる人たちが、商店街がさびれているといっているようだがそういう人達が新しい人達と話し合いがなくてどうまちづくりをしたいのか少しも分からない
・もっと周りの人達にもNPOの意義が伝わればと思う

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後半(午後の部)

学んだこと
・ Wish Poemという技法
・ ワークショップの進め方
・ ワークショップの1つ1つのメニューのなめらかな組み合わせ
・ ワークショップとはどんな事かを少し知った

気付いたこと
・ 多くの多種多様な人の意見を効率的に集約する方法がある事が分かったこと
・ ワークショップとは?ということ、他人の意見が聞けた、ウィッシュポエムによるワークショップという手法、もっと幅広い人材がほしい
・ ワークショップの効果(今までの会議方式と違い、変わった意見が出る)
・一つのテーマで一人一人の考えの違いがあること
・時間を守ることと意見の反映の相関関係、とくに個性・意見が多様なときの手法(ファシリテーターに依存?)
・知らないうちにしゃべりやすい雰囲気になっていた
・要望・要求はたくさんでますけど、その解決策はあまり浮かばないというところ
・ まだまだ未成熟ではないかな
・ 声の大きい小さいに左右されず一人一人の意志・アイデアを引き出すことが大切
・ 民主主義は多数決で決まる
・ 時間が早く過ぎた
・ みんなの考えていることが分かった(いろいろな考えで折られること)少しかしこくなったのではないかと自分なりに思いました
・案外考え方が似ているな、自分達で積極的に運営していこうと言う気持ちが強いだろうかということ
・ はなれた年代の方と対等に話せた
・さぁ、行動だと思わせた
・議論することにより場の雰囲気がしだいになごんでいった
・世古さんの進め方に感動し、参加者みんなが自然に自分の気持ちを出して行ける
・ワークショップは継続が大事
・私がやるワークショップより私の研究室の学生がまじめに取りむ
・ みんなで力を合わせるということはすばらしい
・ 全員の能力を引き出せばすごいパワーになる
・ どうしても話をする人がかたよってしまう、時間内を決めて発表するのは難しい
・ 何人かが合同で知恵を出し合い、みんなが何かを作り上げていく楽しさ、参加しない人がいないKJ法とよく似ている
・ コミュニティ支援センターへの要望を1つとっただけでもたくさん意見が出たこと

面白いと思ったこと
・ 意見の集約方法
・ 文字によって意見を伝える(自分の)面白さ、又そうすることによって意外とうまく発言できる不思議さ
・ 本音を聞き出す手法として詩を書かせる(絵を描かせる)ということ
・ 一つのテーマで複数の意見が出て、それが詩になるということ
・ ホンネとタテマエのギャップ、カードを作った意思表示、指差すとすぐきまる
・ ポストイットを使ったワークショップのやり方
・ いろんな考え・意見が聞けた
・ 言うのは簡単だけど考えると難しい
・ みんなが入りにくいセンターだなあと思っているが入りやすいようにしたい気持ちはいっぱいだ
・ 集まりやすいセンターにみんながしたがっているが、具体的なことではない
・ イメージを詩という形にしたのが面白い
・ やりかた、若い人とのふれあいができ、このような場があって良かった
・ 年の差なんて
・ もっと時間があればなー面白い意見が聞けたのに
・ 知り合いでなくしかもいろいろな世代の人と話せたのは面白かった
・ みんなが思っていること
・ コミセンをセカンドはうすとしてもらえる考え
・ いろんな年代が集まるといろんな考え方、意見が出るので面白い
・ 意見を書いてはるという作業には誰もちゅうちょしないこと
・ 詩を作ることがみんなの願望になり、問題が見えるという不思議な流れ
・ 大きなテーマを具体的にしていく
・ 喫煙者のことも考えなければならないと初めて思った

実行しようと思ったこと
・ 団体で意見を出し合うときは時間を効率的に使う
・ 喫煙権を勝ち取る、学校でも
・ このセンターの運営方法を具体的に考える
・ これからは物事をいろいろな方向から見ていこうと思います
・ 口で(あるいはポストイットで)行ったこと、口コミで広げる、情報発信
・ もっといろいろな活動・ワークショップに参加してみる
・ 有言実行
・ 時間を見つけてこのセンターに世間話をしにこよう
・ KJ法とWish Poemを使ったワークショップ
・ 他の会合で今日のやり方でしていけば言いと思いました
・ できるだけ、参加できるときは参加する
・ こういったワークショップの継続、今日やったことを知らせる
・ ここのTシャツを作るんですよ!それと、ここにいなかった人が、とてもいい意見をも
っているのではないか?だから、見つけ出さなければ
・ いろんな人と話して世界を広げたいと思います
・ センターの運営・利用方法について、お客さんとしてではなく運営側として考えること
・ この成果をコミュニティ支援センター内に張り出しておく
・ もっとワークショップに参加しようと思った
・ 何かを決めなければならないとき、ワークショップ手法を使ってみる
・ 常駐する人がまずいなくてはこの施設は完全に使い方の出発点に立っていないので、この問題の解決法に取り組む
・自分もコミュニティ支援センターを宣伝できるように足を運んでいきたい





3−9 第2回NPOマネジメント講座
  「地域福祉と市民活動」


 7月12日(日)に草津コミュニティ支援センターで実施した第1回目の「NPOマネジメント講座」は、市民活動のミッションやその経営等に関して実践的に学ぶために計画しました。今回は「地域福祉と市民活動」をテーマとしてNPOの役割や、そこでの草津塾のマネジメントについて考えていくことが目的でした。対象は塾生だけでなく一般市民も含めた公開講座とし、特に商店街での福祉ボランティア活動をされている方々に参加を呼びかけました。
 事後評価としては、本企画の中心的役割を担うべき共生班の中で、このプログラムの意味が全体に伝わらず事務局主導で行わざるをえなかった点が大変残念でした。福祉の範疇だけでにとどまるのではなく、多様な主体が「共生」していくためにはどうしたら良いのかというテーマを掲げた班活動でしたが、班員それぞれの考え方や目的意識に大きな開きがあったようです。
 いづれにしても、地域活性化と福祉を融合していくスタンスはこれからも基本に据えていきたいので、「はつらつハウス構想」(班活動とまちづくり資料編参照)は是非とも具現化していきたいと思います。




草津塾通信第9号


 第一部は、草津市社会福祉協議会の山崎もと子さんからお話を伺いました。
 山崎さんは、社会福祉をとりまく情勢を説明された後、これまでの社会福祉の制度の変遷と、改善の必要性、これからの方向について述べられました。その理由として
1.従来までの社会福祉政策が、社会の変化に伴う福祉需要の増大や多様化に対応できなくなってきた 2.国民全体の生活の安定を支える福祉への期待が高まってきた3.信頼と納得の得られる質の確保と効率化の必要性が求められている、の三点をあげられました。
 また、改革の方向としては、1.サービスの利用者と提供者の対等な関係確立、2.個人の多様な需要への地域における総合的支援 3.信頼と納得が得られるサービスの質と効率性の確保 4.幅広い要望に応える多様なサービス主体の参入促進 5.住民の積極的参加による豊かな福祉文化の土壌形成、6.情報公開などによる事業運営の透明性確保、以上六点を示されました。
 
また、地域の人々に支えられながら生活している障害者などの実例をあげ、インフォーマルなケアの意味、制度の充実と市民参加によって進める地域福祉について、また、市民活動やNPO活動への期待について分かりやすく語っていただきました。



 第二部は、前半の山崎さんのお話をうけて、市民やNPOとしてはどんなことができるのか考えることを目的に「空き店舗を活用して(仮称)はつらつはうすをつくろう!」と題したワークショップを行いました。「はつらつはうす」とは、地域の子どもからお年寄り、障害をもった人やそうでない人、学生も含めて、さまざまな人が気軽に立ち寄れ交流できる場のこと。このはうすの運営を自らやっていこうという仮定で、「こんな場所になったらいいな」「自分にはこんなことができる」という意見を出し合うなかで、自分たちの地域の福祉・共生をいかに実現するかについて考えました。参加者からのアンケートでは、「はつらつはうす」は実現すると思いますか、との問いに「はい」と答えた人がほとんどでした。今回いろいろと話し合った結果を活かしながら、「はつらつはうす」の開設に向けて動き出していきたいという願いをもって、プログラムを終了しました。

 昨今、「介護」「超高齢化社会」という言葉がちまたをにぎわしています。介護保険・在宅介護サービス・介護用品などなど、まるですべてのお年寄りに介護が必要であるかのような錯覚におちいってしまいます。しかしすべてのお年寄りが介護を必要としているわけではありません。お年寄りの中には元気はつらつとして社会生活を送っている方々も多いのが現実です。近い将来四人に一人が高齢者となる時代が来ます。その時、お年寄りが参加できないような社会であるならば、きっと要介護者は統計以上に増えることでしょう。また、地域で支え合い、インフォーマルで長期的な在宅ケア(コミュニティケア)が益々必要とされる中で、市民活動がこれらの課題を支える大きな要素となるってきます。地域福祉と市民活動について、正面から向き合いながら、これからの地域の「共生」を私たち自身で作り出していきましょう!





3−10 草津川とまちづくりを考える市民交流会

 1998年9月13日に草津コミュニティ支援センターで開催した「草津川とまちづくりを考える市民交流会」は、草津市のまちづくりで、今最も大きな課題となっている「草津川廃川後の土地利用構想」の意思決定に市民も参画していくためのネットワークづくりを主眼としました。


 


案内ちらし〜


 草津川の持つ自然環境や歴史的資産価値、防災や景観的な価値などを考慮しながら、市民の参加による計画づくりが進められようとしています。現在、まちづくり草津塾でもこの課題に対して、草津川の模型づくりや、植生調査などを行っています。そこで、「草津川」の魅力や跡地利用に関する意見交換を行うとともに、市民活動団体どうしの交流を目的として「草津川とまちづくりを考える交流会」を開催いたします。
草津川に関する情報や意見を持ち寄って、未来の草津の姿を思い描きながら、楽しく語り合いましょう!




(資料 コミュニティくさつ 98年10月号)

草津塾
草津川とまちづくりを考える市民交流会報告 (9月13日)


はじめに
私たち「草津塾」では、四つの班活動のなかの環境班を中心に、現在の草津川の植生調査を行ったり、納涼まつりのつくりもの大会に草津川の駅周辺(一。七キロ)の模型の展示を行うなど、草津川について理解を深め、また市民の関心を高めるための活動を行ってきました。
草津川の跡地利用構想は、草津市が九月二十日にシンポジウムを開催されるなど、いよいよ本格的な論議が開始されています。
しかし、市民サイドには跡地利用計画に関する情報が少なく、それぞれの団体が独自に活動をされているといった状況の中で、行政と対等の立場によるパートナーシップで論議していくためには、市民の相互交流や意見・情報交換の場が必要なのではないかとの考えから、「草津川とまちづくりを考える市民交流会」を実施することになりました。

第一部 活動報告

第一部では、草津青年会議所が作成された草津川のビデオ上映の後、立命館大学政策科学部草津プロジェクトから、今年三月に草津川沿の小中学校とその保護者対象に取られたアンケートの結果報告と、将来の都市像についての発表がありました。

 この後、草津川についての研究や活動を行っているグループから活動紹介とアピールをしていただきました。
 くさつさく倶楽部の中村純一郎さんからは、草津川の跡地利用に関する状況についての報告、立命館大学景観計画研究室の坂本さんからは、草津川を景観とサウンドスケープという音の景観の観点から作られたCD-ROMコンテンツの紹介や、地球環境コミュニティースクール事業をはじめとする数回のワークショップについての発表がありました。
わたしたち草津塾からは、草津川の模型づくりや植生調査活動を紹介し、くさつ・自然環境を考える会からは、スライドを使って物語形式の草津川の天井川化に関するレポート報告、政策科学部草津プロジェクトの加藤さんからオープンスペースの必要性のアピールがありました。
最後に大津市で実施されている「パークアンドバスライドの実験」を体験された伊東真吾氏(古材バンクの会)から、新交通システムへの期待についての報告がありました。

第二部
交流ワークショップ

 第二部では草津プロジェクトの皆さんの協力を得て、お互いの立場や意思を明確にし、共有し合いながら理解を深めていくことを目的に、五つのグループに分かれてワークショップが行われました。

話し合いの中では、現状のまま天井川という地形を生かしながら公園にしてほしいとか、平地化しレクリエーションやスポーツも楽しめて、ショッピングもできるような大きな公園にしてほしいという公園派の意見や、川底は二車線道路程度にして堤防で遊べるような空間にしてほしい、木陰をゆっくり走れるような道路を作ってほしいというような、公園・道路一体派の意見などが大変多かったようです。
また、広いからとても一つに絞れないということから、ゾーン分けをしていろいろな利用方法を地域それぞれが考えてはどうかという意見もありました。そうすれば維持管理も区分けしてやれるのではないかということです。 住んでいる人たちに利用法を割り振って考えてもらっても良いのではないか、そうすればより参加意識は高まるし、自分たちで考えたものなら維持管理も続けられるのではないかという積極的な意見もありました。
ゾーン分けとは反対に、一本化して公園や道路として利用したいというような一本化の意見とに大きく分かれていました。どちらの意見も天井川という特殊な地形を十分に生かして、草津にとって誇れるものにしたいという気持ちの方がとても多かったように思います。 特に維持管理の面で、行政によって一方的に決められたものを半ば強制的に管理させられるような事があっては絶対にいけない、もっと行政の責任のあり方を確立し、その上で市民参加をしていくことが大切だという行政のあり方に対する意見も多くありました。
 草津川がどう利用されるにしても、一番重要なのは何を作るのかではなく、どうやってそれを作り、守っていくのかという市民一丸となった意識だと思います。その証拠にこのワークショップでも、長い歴史の中で草津とともに変化してきた草津川と、これからもたくさんの歴史を作っていきたいという参加者の意識がとてもよく現れていたように思います。ただ、ひとことで市民参加と言っても、どういうタイミングで、どのようにアクションを起こせばいいのか、誰に伝えれば良いのか、どうしようもない戸惑いを感じていらっしゃる方も多いと思います。一人で考えていてもきっと、答えの出るような問題ではありません。市民参加は何らかの私たち自身の行動なしには始まらないのです。

高田昇氏の講演

まとめとして、立命館大学政策科学部の高田昇教授(都市計画)に講演をしていただきました。
はじめに、市民の中に「行政はもうすでに決めてしまっているから、今さら何を言っても意味がないのではないか」という根強い不信感があることを指摘されました。しかし、世の中は確実に変わっているし、形式的な市民参加をすれば、そのまちは五年、十年後にまわりから笑いものにされることを行政もわかりつつあるともおっしゃられました。
 もっと、素直にスタートラインに立ち、責任の所在をはっきりさせた参加のプロセスを作り、長い時間をかけて十年、二十年のスパンで考えていくべきなのだということです。
また、市民参加をすすめる上で四つの大切なことを話してくださいました。

(市民参加の4つの視点)

1つ目は、情報の共有が不可欠であること。行政にとっても、市民や企業にとっても情報は大切で、「草津川とは何なのか、いつ廃川になるのか」など、知らなければ何も始まりません。

2つ目は、科学性・客観性を持った考え方を大切にした市民参加が大切であるということ。ワークショップでは草津川の跡地利用を「自分という個人的な立場から」と「草津というまち全体から」という二つの観点から討議しましたが、一元的なものの考え方ではいけないということなのです。

3つ目は、誰が、どういうタイミングで何を言うか、どの手順(プロセス)で決めていくかを明確にするということ。これがなければ、市民も行政も戸惑ってしまいます。

4つ目は、参加の実態を作ること。これがないと、単なる「アリバイだけの市民参加」で終わってしまい、市民からの意見を出したものの、政策案にはどこにもその意見が反映されていないというような結果に終わってしまうのです。これは、行政への不信感を拭えないばかりか、市民自身の無力感を増長させるだけの結果になりかねません。アメリカの市民参加の手法の一つである、アドボカシープランのようなものを取り入れることも有効であるという事でした。
 こういったことを大切にしながら、草津川という場所の持つ意味を十分に折り込みつつ、十年くらいかけて、最終決定案を作れば良いのではないかというお話でした。

 いま、少しでもまちづくりに興味があり、自分で何かを変えてみたいと考えておられる方は、草津のまちづくりに正面から向き合い、市民自身がつくりりあげていこうとしている草津塾でいっしょに頑張ってみませんか。

文:中川真弓


*アドボカシープランとは・・・
 行政が作ったプランに対して、市民の中で反対意見が出たら、対案を市民が作り、それを行政が知識面でも経済面でもしっかりバックアップをしていくというやりかた。行政がそのプランづくりに1億円かけたのなら、市民にも1億円を出すという風に常にフェアーな争い方をする。単なる反論を言わせるだけでなく、きちんと対案を作らせることである。




3−11 環境まちづくりフォーラム

 1999年2月14日に草津コミュニティ支援センターで開催した環境まちづくりフォーラムな次のことを目的として行いました。
 内容は公開討論会形式とし、環境に関する取り組みをされている実務者の方々や識者の方々からの報告や意見交換の中で、相互のネットワーク化を図り、可能なものから具体化していきたいと考えました。「環境まちづくり」事業は、2001年に滋賀県で開催される国際湖沼会議の動きと連動しながら、今後も戦略的に進めていきたいと思います。

 

− 目的 −

 1992年ブラジルのリオデジャネイロにおいて、「環境と開発に関する国連会議(略称:地球サミット)」が開催されました。そして社会的・経済的・環境的に持続可能な発展を実践するための青写真として制定されたアジェンダ21を受けて、国家レベルでの環境に関する計画と指針が定められました。日本においては、1993年に環境基本法が制定され、これに基づき環境基本計画が策定されたことも加わって全国の地域・自治体レベルにおいても、ローカルアジェンダ21の制定に向けて、その精神に基づき地域を構成する様々な機関、市民の共同による取り組みが行われようとしています。ローカルアジェンダ21の精神は、地球環境問題を取り扱っていること、具体的な環境行動指針まで踏み込んで述べること、そして、市民参加で推進すること、に代表されます。
 草津市では1998年1月に「草津市環境基本条例」が施行されましたが、その基本理念には、「すべての市民が健全で、快適な環境を享受できるよう、市、市民および事業者がそれぞれの責務を自覚し、自らの行動や事業活動を環境面から見直し、環境保全に関する活動に参加し、ともにその実現を図ること。」とあります。また、琵琶湖に面する草津には、国連機関である国連環境技術センターやILEC、琵琶湖博物館・水生植物公園・水環境科学館・立命館大学などの環境技術・環境教育関連施設や多くの事業所、商業施設があります。
 そこで、これらの機関および行政・市民・NPOが、相互交流と情報交換によりパートナーシップづくりを行い、可能なことから行動を始めていくためのきっかけとして、今回のフォーラムを企画させていただきました。
 今回のフォーラムが「環境にやさしいひとづくり、まちづくり」や草津地域でのローカルアジェンダづくり、環境に関わる様々な主体のネットワーク(協議)機関の形成につながることを願っています。





 冒頭、草津塾の笹谷康之氏(立命館大学助教授)から京都市の「京(みやこ)のアジェンダフォーラム」や大阪府豊中市の「豊中市民会議」、埼玉県志木市の「エコシティ志木」などを例にとりながら各地でのローカルアジェンダづくりの動きが紹介されました。また、草津でのローカルアジェンダづくりを進めていく上で三つの重要な点があると話されました。
 一つ目は研究の蓄積の活用。草津市には、大学、UNEPなどの国際機関、琵琶湖博物館など環境関連施設が多く、たくさんの研究の成果や情報・人の資源があります。これを活用することが大切だということです。
 二つ目は、市民、企業、行政のネットワーク。草津市にはまちづくり、環境問題に取り組んでいる市民グループがたくさんあります。それらと、企業、行政とのネットワークを作ることが必要であるということです。
 三つ目は、環境まちづくりへの参加のしやすさです。草津に関わる多くの人に草津の環境を考えてもらおうということです。特に急増している学生など、若者のまちづくりへの参加を促進するためにもインターネットなどを用いて、そのエネルギーを取りいれていこうということでした。
めだかトラスト運動

 大阪自然環境保全協会の戸越進氏から、高知県で実施されている「めだかトラスト」の事例報告が行われました。
(社)大阪自然環境保全協会(会員約千五百名)では、里山自然保護運動を中心に活動されています。大阪は水の都といわれてきましたが、中心地は都市化が進み、周辺地域でも宅地開発などで里山が無くなってきました。そこで、水を生かしためだかトラストに注目されているのです。
 キーワードは「市民の活躍」。めだかトラストとは市民がめだかなどのすむ水辺の身近な生き物と触れ合える環境をつくり、子どもたちや市民が日ごろから、地球上の生物の一員であると感じられる場づくりをしようとする運動です。高知県の例では、自治体が土地を借りて休耕田や遊水池を活用し、市民が池を造ったり維持管理をするといった場づくりのための労力を提供しています。


海外の環境パートナーシップの先進事例

 コミュニティ事業団インターン生(立命館大学二回生)の戸辺勝俊氏からは、イギリスのリーズ市での環境まちづくりの事例や環境データベースについての報告がありました。
イギリスのリーズ市(人口七二万人)は市民・行政・企業のパートナーシップのしくみをつくり、環境にやさしいまちづくりをしている都市として、国内のみならずヨーロッパでは大変有名なのだそうです。まちづくりのしくみを学ぶため、多くの人がリーズ市を訪れています。、戸辺氏も昨年リーズ市に行ってこられました。
 リーズ市には、企業や市民活動・行政それぞれのセクター間のパートナーシップをつくるための機関が設置されており、市民も直接立案に関わって環境政策を推進しています。
 また戸辺氏は、びわこ放送での学生による番組制作グループ「TV番組作ろう会」の代表で、これからも番組づくりとまちづくりをリンクして積極的に活動していきたいと話されました。現在戸辺氏が作成している「環境まちづくりデータべース」は、世界のまちづくりの事例をインターネットで閲覧できるようにしようするものです。
 

京都でのアジェンダづくりの実例から

 NGO・環境市民滋賀の平井一樹氏からは、京都で行われた地球温暖化防止世界会議での活動や環境市民と京都市のパートナーシップの事例が紹介されました。
京都に本部を置く環境市民は、現在八百人近い会員が登録されており、そのうち滋賀県在住の八十名で環境市民滋賀の活動をされています。昨年は、環境連続講座を草津市で実施され、環境ホルモンに関する講座では約百名の草津市民の参加者がありました。また、近江八幡市で開かれた滋賀県のエコライフフェアでは子ども向けの地球温暖化を考えるショーを企画するなど、楽しみながら環境について考えるという取り組みを行っています。京のアジェンダ21の関連事業として、京都市からの委託を受けて環境家計簿づくりの講座やワークショップなども手がけています。
 
地球温暖化防止京都会議では、六百名程のボランティアが集まり、その半数近くが学生だったそうですが「2001年に滋賀県で開催される世界湖沼会議は、若い世代の環境活動への参加を促進するいい機会なので、その基盤作りをしていきたい」と述べられました。


ビオトープづくり

 続いて5年前に開設された大阪シニア自然大学講師の丸一舒生氏から報告がありました。ビオトープとは、BIO=生命・生物、TOP=場所を合わせた言葉で、生物の生息空間を意味します。ビオトープづくりとは単なる環境緑化ではなく、自然のもつ力を生かしながら豊かな自然を取り戻すことを目的としています。こうしたビオトープ活動に家族ぐるみでの参加が多くなってきているそうで、子どもたちがビオトープに触れることによって自然の大切さや環境について学ぶのです。
 ビオトープは、関西地域では50〜60ヶ所あるそうで、草津では琵琶湖博物館がビオトープをとりいれた施設として有名です。また最近では、建設省でも川づくりにビオトープの考え方が導入され、従来コンクリートで三面張りにしていたものを見直しているそうです。
 生態系というのは、土壌→植物→昆虫→小動物→大型動物→太陽と水というような循環系をいい、この観点からすれば人間がどのように生態系に影響を及ぼしていくのかが一番大きな問題なのでしょう。


滋賀の環境まちづくり

 滋賀総合研究所の奥野修氏は、滋賀県での環境まちづくりの事例を紹介されました。滋賀総合研究所というのは、行政に近いシンクタンクとして活動されている組織で、市民参画型まちづくりの研究なども行っています。
 奥野氏は「環境まちづくりというのは、もう何百年も行われていますが、環境破壊などが進んできたのでもう一度暮らしやまちづくりを考え直していこうというのが今の状況ではないか」との考えを示されました。滋賀県は、琵琶湖を抱えているので、生活の中での環境が川から琵琶湖そして直接生活にそれが影響してくるという条件から、環境への意識が高いのではないかとのことです。琵琶湖およびそれを取り巻く山や川の環境保全に大変熱心な地域がたくさんあります。
 栗東町金勝の里山を保全する活動、米原町の醒ヶ井(さめがい)で行われている「おいしい水探検隊」の取り組み、近江八幡市でのビオトープづくりの取り組みの事例などを紹介されました。
 奥野さんから出されたキーワードは「持続可能」。身近な自然にふれて、楽しみながら環境を考えていくことが「持続可能」な活動になると指摘されました。例えば「おいしい水探検隊」のようにマスを手づかみでとってそれを食べるという取り組みのように「体験して味わう」ということも必要ではないかと述べられました。
 最後に、楽しく学んでいくための資料として、ひとりの花好きのおじさんの取り組みが花いっぱいのまちづくりへとつながっていく様子を描いた絵本「プラムおじさん」を紹介され、子どもにもわかるように平易に書かれているにもかかわらず、まちづくりの本質をつく内容に会場からも驚きの声があがっていました。

情報ネットワークづくり
 笹谷康之氏から地域資源を活用した環境教育システムの構築について報告されました。
キーワードは「情報の交流」。草津地域には琵琶湖博物館など多くの環境関連施設・機関があり、それらの蓄積する情報をみんなで共有することが重要で、多くの情報が共有されるためには、多くの人が参加しやすいシステムづくりが必要となるとのお話をされました。
 笹谷氏は、「琵琶湖博物館にはデジタル写真映像や、水環境カルテなどといったデータが膨大にあり、そうした情報の蓄積・共有をしていくことで、世代を越えて知恵や情報を伝えて、本当の地域の宝物を見つけていくことが必要。」「立命館大学や琵琶湖博物館、地域の小学校と共同で環境学習システムを構築していこう!」と提案されました。
 また、「草津市が行った市民一万人環境調査の結果データなどをマップ上に掲載して見やすくしたり、携帯パソコンなどを活用してマップ上にデータ入力をしていく地域探検などをとおして、環境まちづくりを推進していってはどうか」と述べられました。

地域の環境成熟度とは

 報告の最後は、平井孝治氏(立命館大学経営学部教授)から、「NGOの手で環境成熟度指標を」というテーマのお話でした。
平井氏の専門は環境管理監査論でふだんはISO規格や環境マネジメントシステムについての研究をされています。
 立命館大学には草津市との提携による地域研究会という組織があり、ここで平井氏は環境まちづくりに関する研究をされています。この研究は地方自治体や企業の環境成熟度の評価手法の開発で「自治体がどのような環境政策を行っているのかということと同時に、その政策をつくっていく際の市民の参加度、環境に貢献する市民活動がどの程度存在するのかなどについて数値化して評価していくことが必要。そのまちに暮らす人々の感性的なものも取り入れた総合的な評価をしたい。」と述べられました。
 「これまで自治体や企業では、契約を結んだり物品を購入するときの基準は品質と価格だけだったが、環境成熟度も考慮した入札や判断を行うようなしくみをつくることが必要で、これがその組織の環境成熟度にもつながってくるだろう」と述べられました。
 最後に、市民には環境主権(環境便益を受け取り環境リスクを回避しそれらを伝承していく権利義務)があるとの意見を述べられ、企業や地域などのガバナンス(統治)は主権のある市民が担っていくことだという民主主義の基本原則を強調されました。
 環境のしくみづくりはプロの人だけが作るのではなく、これをきっかけにパートナーシップをつくったり、企業がその指標を改善したり、あるいはそれを行政がサポートしていくようなしくみづくりが大切だと結ばれました。


市民農園の提案

 草津塾の大津寿男氏からは「実際に事業として実行していくという立場から草津地域における休耕田を活用した市民農園づくりをしていきたい」との呼びかけがありました。市民農園は今、都市にすむ人々の中でひそかなブームになっているそうです。それをどういう形で草津に取り入れるのか、誰が中心になるのかなど、まだまだ問題は多くあります。しかし、市民農園を子どもからお年寄りまでが楽しめる市民公園にしたいという大きな夢をもって、構想をすすめていきたいとのことでした。
  「JR草津駅周辺にマンションが集中し近畿圏への通勤の便利さ、大学の誘致による人口増加などにより都市化しつつあります。そうした中で、休耕田を利用して自然の大気を充分吸いつつ自然と親しみ、また、子どもたちとともに生きた環境学習の場、植物を育てる楽しさ、感動、感謝の心を市民農園で学んでほしい」と語られました。

 討論会

 一連の報告の後、会場全員による討論が行われました。討論といっても、意見の対立ではなく、参加者の想いの交流といった具合で、会場はここから何かが始まるといった雰囲気でした。意見のまとめ方も工夫を凝らしており、ファシリテーショングラフィックという手法を用い、討論の進行状況を模造紙に文字や絵などを用いて共有化していくというもので、会場の一体感が増しました。
 討論会のキーワードは「つながり」です。
 参加者全員が自己紹介として、自分のキーワードを挙げていきました。「環境にやさしい技術協力」から「卓球?」まで、ユーモアあふれるキーワードがたくさん出されました。つづいて、自分たちから楽しくできること、つながりを広げるためにできること、これからのパートナーシップの形成に関して意見が多く出ました。
 たとえば、すぐに出来ることとしては、「ロクハ公園などにめだかを放流しよう」「休耕田に春はレンゲ、秋はコスモスを植えよう」といった市民からの提案や、「UNEPが滋賀にできて四年になるので、地元の人々にもっと知ってもらいたい」、「びわこ放送で学生番組の企画を計画中なのでまちづくりと連動して情報発信を!」、「この春から借りている土地を市民農園的にしていきたい」といった要望まで様々。
 また、「コミュニティ支援センターで発信しているホームページで、学生が環境まちづくりに関する研究成果を公表しよう」「秋に環境まちづくり交流会を計画し、地域の環境評価調査の一環として市民活動やパートナーシップの実態アンケート調査を行い、草津の環境成熟度に関する基礎データを調べよう」「環境まちづくりといっても生活・自然・教育・交通・防災など幅が広いので、テーマ別で環境まちづくり交流会の分科会を!」といった提案が出されました。
 さらに、NPOとの協働という観点から「パートナーシップを基本とした環境まちづくり事業を応援していきたい」という投げかけもありました。
 また平井孝治氏からは「ボランティアからしくみへの転換がまだできていない。人々の善意を結びつけるだけではダメなので、例えば、デポジット制度を導入するなど、全国に先駆けて実践し発信するような社会的しくみをデザインしよう」という提言が出され、フォーラムは終了しました。
 今回集まった人々が、まず自分たちの技術や特性を生かした活動を、相互に連携しながら実践し、草津のローカルアジェンダづくりの流れをつくっていくことが必要なのではないかと感じました。




4−1 NPOと草津塾

 阪神淡路大震災を契機として市民ボランティア活動のうねりが生まれました。そして、「ボランティア元年」と称されたこのうねりは、1998年にNPO法が成立されるまでに至りました。民法の特別法として制定されたこのNPO法によって、法人格の取得に広がりが生まれました。それが意義あるものとなるには税優遇制度など多くの課題もあるものの、市民活動によって普遍的価値を支えていくという発想が認知され、その無限の可能性がみえてきたという点では大きな転機となりました。
 草津塾は、(財)草津市コミュニティ事業団という既存の公益法人を母体として生まれましたが、財団法人という安定的な事務局に依拠しながらも、行政主導型公益法人の弱点を補うよう、市民的組織体としてのNPOを目指すものとして「塾生による自主的運営」を基本に据えて運営してきました。
 では、NPOとしての草津塾を考えた場合、どのような課題があるのでしょうか。
 一般的にNPOは、きちんとしたミッションがあることを前提として、独立性・継続性確保のための財政の確保や運営体制の確立が不可欠だと考えられています。
 しかし、現状の社会構造や歴史課程では、市民社会の醸成を阻害することはあっても、積極的に育成してきた訳ではありません。このことから、果たして形式的な独立性だけをNPOの成熟度を図る物差しとして使うことが賢明な方法なのかということです。草津塾が設立された現状は、市民自らがNPOの独自組織を形成するための土壌・条件づくりの段階だと考えました。

 このことから、市民によるシティマネジメント機構を目指す草津塾が最初に行うべき事業は、NPOが成立する基盤づくりを行政や諸機関との連携・協働により行うことであり、まさしく「NPO形成のためのNPO」としてどう機能していけるのかということが求められたのです。



4−2 インフラストラクチャー・オーガニゼーションとしての草津塾

 地域における自立した市民組織としてのNPOが生まれ、行政と対なパートナーとして成熟していくためには、それを社会的に支援していくことが必要です。そうした支援は行政が行わなければならないこともありますが、本当の市民主体のNPOをつくっていくためには、支援組織も民間が担っていくことが望まれています。米国では、NPO支援を目的とするNPOが800団体以上存在するといわれています。こうした組織のことをインフラストラクチャー・オーガニゼーションと呼ばれています。この中には資金提供・助成、マネジメント支援、情報・人材支援、アドボカシー支援、NPOの事業評価など多様なものが存在しています。こうした基盤があってはじめてNPOの効果的な活動が促進され、また保証されていくのだと考えます。
 草津塾は、まさにこれから成熟してくるNPOによる市民社会形成に向けての基盤を確立していくためのNPOであり、まちづくりのための人づくりや関係づくり、パートナーシップのしくみづくりを担う組織として確立していくことを目指しました。



4−3 「NPOのためのNPO」として何ができるのか

 「NPOのためのNPO」として草津塾が機能しうるには、一般的なマネジメントを語るだけで事足りるものではけっしてありません。草津という限定した地域にこだわりつづけ、市民として郷土に愛着をもって活動していくなかで、いかに市民活動と行政・諸機関との関係を再構築し、NPOの連携やその成熟という観点からどれだけのことができるのかという点からのみ、その機能を構築できるものであると思います。
 しかし、草津塾そのものが確立された組織体というよりも、そうした機能を担い・実践していくなかで形成していくという形態を取っているため、場を準備していく過程そのものにも塾生の参画が求められています。このことから出てくる問題点は、塾の運営(マネジメント)を担うスタッフと一般塾生との関係、運営そのもの責任ある判断をどのように行っていくのかという問題でした。
 草津塾がNPOのためのNPOとして確立していくためには、まずあらゆるメディアを活用して情報の共有化を図り、常に公開されたなかで責任と能力ある人々が判断を行い、自ら執行していくスタイルをつくっていかなければなりません。すなわち、情報や意思決定の公開性を自らが確立できるかどうかがその役割を担う条件となり、このことによる信頼性や共有意識が生まれたときにはじめて「何か」ができる条件が整うのです。




4−4 コミュニティ支援センター事務局への参画とそこでの役割

 98年5月10日、企業からの寄附や淡海市町村振興補助金などにより草津コミュニティ支援センターが開設されました。このセンターは「NPOのためのNPO」を目指す共同事務局が自主運営をおこなう施設で、草津塾も共同事務局加盟団体として参画しています。
 センター構想が出てきた当初、具体化のプロセスに草津塾が関わることも想定していましたが、日程などの関係でその準備は市と草津市コミュニティ事業団にゆだねられました。
 そうした中で、市民活動団体による自主運営を目指すセンター共同事務局内で、その運営を先駆的に担うものとして草津塾の取り組みが求められ、「NPOマネジメント講座」の開催に至りました。
 第1回目に世古一穂さんを迎えての講座では、センターの運営に関するマネジメントについて考えていくことを先行的に行うなかで、共同事務局監事団体としての役割を担い、センター共同事務局構想とリンクした草津塾の展開を示すことを主眼としました。
 第2回目の「福祉と市民活動」をテーマとしたマネジメント講座では、NPOが担う役割や可能性について問題提起し、NPOの活動に関する理解を広め現実化していくことをが目的となりました。
 では、「NPOのためのNPO」を目指す草津塾と同じくセンターとの関係はいかにあるべきなのでしょうか?
 この問いに対する回答は、センター共同事務局団体との相互発展の条件としての良き競争関係を持てるかどうかという問題として捉えるなかでこそ、見えてくるはずです。
 一方で、現実的な問題としてスタート時点において双方とも同じコミュニティ事業団内が事務局を担い、始動時には運営の主力として位置づけられることから生じる実務の限界点が問題となります。
 「NPOのためのNPO」を目指すセンターと草津塾との関係は、「市民による」という前提を草津塾がどう構築していけるのかということからのみ、本来の関係性を確保できるものなのでしょう。




4−5 市民社会とNPO

 私たちが考えるNPOのイメージは、趣味のサークルや個別テーマにおける主観的な関わりという意味での市民活動ではなく、社会的に必要とされるものごとを行政機関や企業・市民自身がそれぞれの責任を果たし、あるいは連携しながら解決していくことを担う市民セクターとしてのNPOです。従って、草津塾がめざす「パートナーシップによるまちづくり」とは、形式的にまちづくりに市民が参加することや行政機関との対比として市民の側の意見を集約するというものではなく、シティマネジメントをパートナーシップで総合的に行っていこうというものです。地方分権社会にあっては、それぞれの地域がそれぞれの特性を活かしながら自己選択・自己責任で地域運営をおこなっていかなければなりません。このことは、地方自治が目指した「民主主義の学校」としての条件がようやく確立してきたということを意味するのかも知れません。なぜならば、民主主義とは決して結果としての平等を求めるものではなく、機会や関わりにおける平等を確保し、自由な競争関係において正当に評価されることが必要とされているからです。
 従って、草津塾がNPOのためのNPOとして「パートナーシップによるまちづくり」を目指すのであれば、夢や対案を示すだけというのではなく、地域経営のそろばんを弾きながらシティマネジメントを担う機関としての確立こそが求められているのです。また、パートナーシップのマネジメントをおこなうには、プラグアビリティ(能力を連結する能力)を発揮していかなければならないでしょう。




5−1 仲良しサークルではなく専門性を磨き実践していく

98年3月の草津塾総会では、環境・共生・情報・アートという4つのグループに分かれて、それぞれが実践的な活動を行うことを通じて全体としてのマネジメントを確立していくことを決定し、1年間活動してきました。
 4つのグループに分かれて活動することは、塾生それぞれの参加の多様性を確保すると同時に、まちづくり全般に渡る総合的プロジュースを創り上げていくことを想定したものでした。また各班ごとの活動と同時に、それぞれのリーダーおよび運営スタッフで構成される運営委員会で協議されるという運営システムも一応はつくられました。しかし現実には、4つの班に分かれることによって草津塾全体のマネジメントに集中していくべき人材が分散し、各班にあってはそれぞれが分野ごとの専門的なマネジメントを形成していくには至りませんでした。
 ちなみに、草津塾構想そのものが「時期尚早」と評されることがあるのは、理念的な意味での未確立という問題ではけっしてなく、この構想に「肝を据える」ことができる市民や専門家が結集する基盤が形成されていないという問題にほかなりません。

 草津塾が、まちづくりを総合プロデュースしていくNPOとして組織化されていくには、目標とする姿とそれを現実に落とし込んでいく実践的な活動をどのようにリンクさせていくのかが問われ、このことができてはじめて「アマチュア」ではなく「専門家集団」あるいは「専門家育成集団」としての草津塾構想が見えてくるのではないでしょうか。



5−2 学習し実践していく機関としての草津塾を目指して

 草津塾が「塾」として成立するためには、まちづくりの実践的課題へのコミットメント(関わり)を前提とした自己学習と集団学習が不可欠です。資格・学歴社会といわれる中で、単に「良い高校・大学に入るための学習」「就職に有利になるがどうかが動機づけとなる」というような学習スタイルとなっています。その結果、「大学のディズニーランド化現象」や「学校を卒業(あるいは入学)した瞬間、学習したものの価値を消失する」というものになっているのです。
 草津塾が目指す学習スタイルとは、学ぶことの意義を社会的な関係性や有用性あるいは必要性から学習の動機付けがなされ、その目的から自ら学んでいくというものです。従って「単に向学心のために勉強したい」とか「自己の知識欲を満たす」というだけの学習とは違ったスタンスをもっていることを共通理解とし、「進学塾」や「個人のいきがいとしての生涯学習」とは違った「パートナーシップによるまちづくり」の実体化を通じて学んでいくことが最も大切なことです。

 
 明治維新を支える志士を輩出した吉田松陰の松下村塾では、「午前は寺小屋・午後からはさながら政治塾」と言われ、また自ら行動することを重んじたからこそ、久坂 玄瑞や高杉 晋作、伊藤博文などの歴史上重要な人材を育て後世に語り継がれるような塾になりました。
 高度情報化の今日の時代においては、単なる専門知識の積み重ねではなくその統合を図り、学問と実践を必ず結合しなければ何の価値も生み出せないでしょう。



5−3 情勢を使うことは (誰をポイントに据えるか)


 草津塾のプログラム策定のポイントとして置いたことは、草津のまちづくり又はNPOの今後の展開にとって何がポイントとなっているのかという観点でとらえ、その時々の情勢を的確にとらえながら、有益な条件を形成していくことに主眼を置いたものとすることです。
 情勢(歴史や社会の現状)とは、それを総合的に捉え、次の時代を形成していく過渡的段階をどう形成していくのかという観点から活用すべきなのであり、また、行政主導型からパートナーシップ型まちづくりへの構造的な転換を担ううえでポイントとなる「人」や「組織」をクローズアップし、その動きと連携しながら草津塾そのものを活性化していくべきなのでしょう。



5−4 ポピュリズムに流されないとは

 市民という言葉は、人それぞれとらえ方が違うようです。「市民」とは自己責任を前提とした自己判断と自主性を有し、地方自治の担い手としての主体構造としての存在です。
 塾生として想定している市民は、けっして自己主張はするけれど実行や責任が伴わない無責任な人や、客観的な総合的判断ができない人ではありません。
 しかし、実際に草津塾への入塾の機会や資格はオープンであり、特に1〜2年目にかけての初期の創生期にあっては、想定された人材の確保は容易なものではありません。逆に言えば、市民としての自覚や責任性を形成するためにこそ草津塾があるのだと考えるべきなのでしょう。

 目標や志(こころざし)が高ければ高いほど、そのことの理解を得ることが難しいという問題は、常に問題となる普遍的課題です。かつて大英帝国が衰退した原因の一つに、「政治的ポピュリズム」をあげる学者もいます。
 私たちの草津塾は、その「目標」や「こころざし」を大衆迎合主義というものによってはけっして曲げることはしません。

 シティマネジメントやそのための人材育成のための機関として確立していく以外に、草津塾の道は無いという信念を拠り所にして、肝を据え自信と気迫をもって運営していかなければならないでしょう。



5−5 今後の運営体制について


 草津塾の運営については、塾生自身による運営体制の確立と同時に、参加の多様な段階や形態を保証しながら広がりある展開をしていくために次のような形態が望まれます。
 また、塾長なき塾から「人格ある塾」への成熟のためには、NPO法人化を想定した事業展開を行い、そうした過程を通じて市民の中から本来の「塾長」を形成していきましょう!


(99年度体制案) 
@運営スタッフ:
 草津塾のマネジメントに責任を持ち、事務局運営を担う。
 塾生で構成し、必要に応じてアドバイザーを選任する。
 月例会およびスタッフ会議には必ず出席する。
 年会費1000円+協賛金

A塾生:
 運営方針に基づき活動する。月例会には可能なかぎり出席する。年会費1000円

B聴講者:
 草津塾の公開講座などにビジター参加する人。塾通信などの案内を郵送希望の場合は、年間500円程度徴収する。

C協賛会員:
 草津塾を応援する企業・団体・個人
 年間一口500円(企業・団体は5口以上)とする。



5−6 草津塾の経営


 来年度から草津塾は、塾生の年会費や運営資金カンパ・協賛金と共に、事業収入により塾生によって独立した運営をおこなっていきます。
 事業については、まちづくりのマネジメントに関連する事業を、行政や(財)草津市コミュニティ事業団などの各種機関・企業へ企画書を提出するなどして、受注を受けることが必要でしょう。
 また、事務局運営経費を得るための収益構造をつくるため、各自プロジェクトの開発も考えていかなければなりません。



最後に

 草津塾構想は現実化するのか?
 誰がこのミッションを担い推進していくのか?
 
 今、私たちが早急にやらなければならないことは、「草津塾構想」を深めながら現実化し、自らそれを担っていこうとする人の確保と組織の確立です。
 そのためには、行政機関などの既存の組織を頼ったり、飛び抜けて能力と指導力がある活動家が登場し組織をリードしていくことを待望するというのではなく、自らまちづくりに関わることを通してリーダーを輩出し、またそのリーダーを自らが選択することこそが必要だと考えています。
 人は時代のなかでつくられ成長していくものだとするならば、グローバル社会を迎えた歴史的転換期において、必ず時代を担おうとする人格が生まれてくるものです。そいういう意味で、「まちづくり」は地域に住む人々が生活に関係する限定された課題の関わりとしてあるのではなく、社会的な転換を担う人格形成と実践の場としてあるのだと思うのです。

 草津塾という一種のブランドは生まれましたが、この看板はもはや必ずしも必要なものではなくなりつつあります。それは、社会や地域そのものが変わりはじめ、動きはじめているからです。たとえば、99年4月に正式発足した「草津コミュニティ支援センター事務局」は、NPOセンター機能を市民自身が形成する動きを象徴しています。

 草津塾がこうした地域や時代をリードしてきたかと問われると、正直に「力不足」と答える以外にないでしょう。
 しかし、わたしたちは限られた条件と陣容のなかで、可能なかぎり行動し訴えかけてきました。
 また、これから行政依存人から経済自立人への転換が求められている中で、私たちは今までの草津塾の運営スタイルを抜本的に転換しようとしています。

 現在と未来に責任を負うということは、過去を総括しその教訓を糧として飛躍していくことを伴います。従って、「力不足」であったことや、手法そのものについても総点検し、自己批判をもって再出発していきたいと思います。

 本書では、草津塾の目指した理念やそれを実現するための実践および組織運営などについて記述しました。
 是非みなさんから本書で公開した草津塾の運営や手法へのご批判・アドバイスをいただきたいと思います。
 なぜならば、草津塾の「社会実験」ともいえる活動の功罪両面の教訓を、これからのまちづくりの共有財産として生かしていくことができてはじめて本書が意味あるものとなるからです。

 最後に草津塾を支え、本書作成に協力いただいた多くの方々に感謝いたします。



草津まちづくり読本制作スタッフ

(草津まちづくり読本作成プロジェクト)

山本正雄、山口洋典、内山博史、細谷友里子・古山 満・
大津寿男・増田祐美子(挿し絵)・佐山良則(表紙)

写真提供(昔の草津):西岡写真工房








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