なぜNPO支援が必要か? 資料:非営利団体と社会的基盤(JNC調査報告書) 第1節 ボランタリー活動の重要性〜背景/定義/意義 1990年代に入り、旧ソ連邦崩壊に象徴される東西冷戦終結の結果、より一層のグローバライゼーションや国際的相互依存関係の深化と錯綜化が進展している。 一方、民族国家の抬頭とそれに伴う民族間抗争や人権抑圧の激化、地球規模での環境の悪化などが従来にも増して懸念される状況ともなっている。 こうして、これまでの経験とは異なる全く新たな対応に迫られる中、既存の国際社会システムは大きく揺らぎ始めており、その影響は、国際環境はもとより、国家単位でも各国内へと大きく波及している。 日本の社会もまた急速に変わろうとしている。変動の方向にはいくつかの可能性があり、いまだ予断を許さぬところがあるが、そのうちでも、成熟した市民社会形成へ向けての社会経済システムの再編というのは有力な方向の一つと言えよう。「市民社会」をめぐってこれまでたたかわされてきた議論に、今ここで立ち入る余裕はないが、少なくとも「成熟した市民社会」の含意についてだけは触れておこう。 市民社会とは、程度の差はあれ、個々人の自発性・自立性・自律性などを前提とする社会である。したがって、個人がそれぞれの差異や多様性のもとで、それらを自らのうちに育て、発揮することが、できる限り容易になるような条件が必要となる。ある限られたやり方でしかそれができないというのではなく、さまざまな道があることが、社会の 「成熟」を表す一端である。だが、あまりに特定の部門のみが突出した社会では、それは難しい。その意味で、成熟した市民社会とは、個性的でありながら、同時にバランスのとれた社会のことである。そこではまた、個人の自発性や自立性や自律性がバラバラにではなく、何らかの協働性に結実するような人と人とのつながりの場のなかで発揮されていく仕組みが、どれだけ多様にあるかという指標もきわめて重要である。 さまざまな要因によって、日本の社会は今、このような成熟した市民社会の実現を可能にする社会経済システムへの組み替えを内外から迫られている。戦後一貫して続いてきた経済成長とこれを支えてきた政治体制の終焉に伴い、これまでの中央集権的な社会体制への批判が、市民的な裾野を広げながら急速に拡大している。これまでの体制を推進してきた2つの社会的勢力、すなわち、第1セクター(政府・行政部門)や第2セクター(企業をはじめとする民間営利部門)に偏在している資源と力(「人」「もの」「金」「情報」「権限」など)を、第3のセクターとして浮上しつつある、市民を主体とするボランタリー・セクターにも的確に分散していく新たな社会経済システムを求める声が次第に顕在化しつつある。 具体的には、これまでほぼ第1セクターと第2セクターとで社会を運営してきたシステムから、市民が形成する多様な社会的・経済的主体のネットワークをも運営主体として含み込んだシステムへの組み替えであり、後述するように、実際、さまざまな市民の活動が地域で展開されている。先の阪禅・淡路大震災を契機として、こうした流れのもとにある諸活動に大きな注目が集まったことは記憶に新しい。これらは、現在の社会システム全体のあり様に対する問いかけであると同時に、個人の自立を前提とする本格的な「自治」のあり様にも迫るものと捉えることができる。 こうして現在、行政や企業をはじめとする既存の社会的・経済的主体とは異なる論理にもとづく、第3の社会的勢力としての民間非営利活動の充実と発展が、ますます期待されるようになっている。なかでも、市民による自発的な活動の重要性は、今後さらに大きなものとなっていくことが予想される。本調査研究では、そのような活動を「ボランタリー活動」と呼ぶことにする。本来、多様な活動ゆえに、一義的な定義は難しいが、とりあえず、ここで言うボランタリー活動とは、「個人の自発的意思による参加と運営にもとづいており、個別私的な関心・問題意識から出発しながらも、何らかの社会性・公共性を帯びた、民間非営利の、多様で一定の継続性をもった諸活動」のことである。 (以下省略) |
支援センターの役割について 資料:非営利団体と社会的基盤(JNC調査報告書)〜 第3節 支援組織試案〜市民社会の基盤づくりに向けて〜 1・「市民社会開発機構」の創設 ボランタリー活動団体を実務面で支援し、そのレベル・アップに寄与することを主たる目的とした機関(ここでは、「市民活動サポート・センター」と呼ぶ)、および個々の活動の成果や体験にもとづき、市民主導による、「知」の集約をリードしていくための機関(ここでは「市民社会開発研究所」と呼ぶ)の2つから成る「市民社会開発機構」を創設する。この場合、これを「事業型財団」)に準ずる性格として位置づけるが、社会的な独立性を保持するために、創設に際しては、自立運営のための最低限の資金(基金)とともに、市民・行政・企業等、幅広い理解と協力が得られるようなビジョンと仕組みが必要とされる。なお、運営に当たっては、あくまで民間ベース − ただし、いわゆる従来の「第3セクター」方式ではない−を前提とする。 1)「市民活動サポートセンター」の設置 ボランタリーな活動を行う団体の基盤強化および活動に携わる人材の力量アップの手助けになることを通して、こ の種の活動や団体の社会的認知と信用性を高めていくことに役立っ支援組織を、地域レベル・全国レベルにおいて 設置する。 <地域レベル> この場合、以下の項目(機能)を包含しながらも、それぞれの地域特性を踏まえたあり方が必要とされる。なお、ここで言う「地域」とは、必ずしも行政単位ではないことを前提とする。 (1)資金調達や財源開拓に関する情報およびノウハウの提供等 (2)組織運営(マネジメント)技術の向上や事業開発のためのプランニングに関する情報およびノウハウの提供等 (3)団体のリーダーおよび運営管理者(理事等)を対象に、持続的かつ有効なリーダーシップを開発していくための 研修・学習機会の提供等 (4)団体スタッフを対象に、資質と専門性を高めるための研修・学習機会の提供等 (5)団体およびスタッフ相互の交流と、これにもとづく「協働」のための機会の提供等 (6)専門性を活かした助言・協力を提供できる人材(専門家)の登録と派遣等 (7)共通課題への取り組みに向けた団体間のコーディネーション等 (8)活動団体と行政・企業との協働のための仲介等 (9)ボランタリーな活動全般に関する情報の収集・公開・提供、およびこれに伴う必要技術の獲得と向上のための機 会の提供等 (10)(希望者、募集団体双方に対する)ボランティア情報の提供等 (11)活動に伴う作業・ミーティングのためのスペースや機材の貸与等 (12)新生団体のための事務局代行、および、これに関連する業務等(各種契約、資金受取代行などを含む) (13)特に「登録」を希望する団体の受付およびこれらに対する社会的信用保証の供与(この場合、公開原則にもとづ き、活動内容や会計に関する情報の提供が一定の書式に則って要求される。) <全国レベル> , この場合、地域レベルにおいて設置された各サポート・センターのコーディネーションと、これに関連する内容が基本的な機能となる。換言すれば、地域サポート・センターの連合体として、各地域レベルのセンターがより効果的に、その役割を果たしていくための「触媒」となることが期待される。 (以下省略) |
資料:新しい市民社会の構築に向けた基礎調査』 三重県・財団法人三重社会経済研究センター 市民社会とは〜 「自己決定・自己責任の原則に則って行動できる自立した個人である市民が、自らの手で運営する社会である。そこでは、市民は横のつながりや関係を発展させることにより市民的公共性を生みだし、地域社会を形成する。市民の生活が社会、社会の運営ルールが民主主義であり、政府は市民によって一定の権限を委託されて行使するにすぎないと言える。つまり、市民社会とは「民主主義に支えられ、市民自治に基礎を置く多元的社会である」 |
市民とは・・・ 〜「市民自立の政治戦略」 山口定氏共著 「自立した人間同士がお互いに自由・平等な関係に立って公共社会を構成するという<共和感覚>に支えられ、そうした人々の自治を社会運営の基本とすることをめざして公共的決定に主体的に参加しようとする自発的人間型」 |
資料:市民公益活動の意義 〜『市民公益活動基盤整備に関する調査研究』 1.本来的に行政や企業に任すことのできない、あるいは行政や企業では出来ない活動を新しい時代に則して組織化すること。 2.多数の団体が多様な価値観によって行動することにより、行政や企業だけでは実現しにくい多元的な社会を実現すること。 3.行政や企業では取り組みにくい先駆的・冒険的な活動を行ったり、行政や企業の行動を第3者の立場で 監察し独自の問題提起を行うことにより、新しい社会状況を切り開き、自己変革できやすい社会にしていくこと。 4.金銭や名誉よりも自らの志や社会への貢献を大切にする人々にとっての、自己実現の機会となること。 5.行政や企業での就業システムとは異なる職務形態や就業形態を出現させ、活動に参加する人々を通じて新しい職業観ひいては人生観を生み出すこと。 6.以上のような働きを通じて、地域社会の再構築、日本社会のゆるやかな変革を可能にすること。 7.これらの活動を背景にして世界の人々からの信頼を得ることにより、国際社会での新しい立場を可能にすること |
コミュニティとは・・・ 〜国民生活審議会の報告書 「生活の場において、市民としての自主性と責任を自覚した個人及び家庭を構成の主体として、地域性と各種の共通目標をもった開放的で、しかも構成員相互に信頼感のある集団である」 |
***** 「行政とNPO」調査報告書 ***** 東京都発行 http://www.wnn.or.jp/wnn-v/book/tokyonpo/ndex.htmlより転載 5節 行政にとってのNPOのとらえ方 今日では、企業以外はおおむね非営利団体であるが、非営利即NPOというわけにはいかないことはもちろんである。しかし、日本のNPOは、アメリカのNPOのように存在感をもってイメージが確立しているわけではない。日本のNPO観が定着してくるのはこれからである。ここでは、日本的状況に即して、行政としてはNPOをどのようにとらえるべきかを検討する。 1.日本型NPOの定式化 (1)NPO像の今日と行政の視点 等しく市民活動団体とはいっても、これまでにみたように、欧米と日本ではその社会的背景も発展の経緯も異なる。また、検討の目的によっても、重点を置くべき性質事項が異なってくる。ここでは、「行政との関係」という視点から日本におけるNPO像の整理を試みる。 日本でいま一つNPO像が明確でない理由は、第一に、日本の市民活動団体が成熟しきっておらず、萌芽期ないし未分化の段階にある組織がかなりあることである。アンケート結果にもあるように、東京で活動する市民活動団体の多くはその設立が新しく、規模も小さい。第二に、非営利活動に関する包括的な法人制度がなかったため、いわゆるNPO的活動がそれを主目的とする組織ばかりでなく、多様な既存組織により副次的に進められてきたことがあげられる。このため「活動」と「組織」が混同されて論じられることが、しばしばみられた。 さらに、日本人的感覚からか、活動の無償性が過度に強調される傾向も認められる。これらの結果、アメリカ的NPO概念と日本のそれとの間にかなりのギャップが生じ、定義上の混乱を招いている。 例えば、民法法人はNPOかというと、行政主導型の法人は、NPOとはいえず、逆に民法法人はNPOではないかというと、実際にはNPOにふさわしい活動を行っていることもある。ひとくちに民法法人といっても、NPOとそうでない団体が入り交じっている。要するに、日本の既存の法人制度を基に、NPO概念をたてようとしても、今の段階では無理が生じる。 他方、行政の立場から重要なのは、市民のエネルギーと適切に結びついて地域社会を築いていくことである。その限りでは、NPOにかぎらず、個人ボランティアや企業市民なども視野に入れる必要がある。しかし、なかでもNPOが特に検討の対象となるのは、"市民のエネルギーの結節点"として、今後の市民活動発展の基盤となることが期待されるからである。 これからは、「NPO法」の成立などを契機として、日本的風土に即したNPOのスタイルが定着していくと考えられる。だが、それにはいましばらくの時間を必要とするため、行政の立場からは、日本的イメージも勘案しつつ、組織」そのものより具体的な「活動」にやや比重を置いて、NPO概念を整理することが必要になる。 (2)行政のためのNPOの6つの標準 実際に行政を進めるにあたって、NPOとは何か、ということは難しい問題である。社会的に明確なコンセンサスがあるわけではないから、行政としては判断に苦しむ。しかし、NPOとのパートナーシップを考えるためには、何らかの認識が必要である。ここでは、大事なことはNPOという名称ではなく、行政のパートナーとしてふさわしいかどうかであるという考えに立って、日本型NPOの標準といったものの整理を試みる。 1)目的とする価値の開放性、客観性 組織形成の動機(目的)は、不特定の人に及ぶ客観的な価値を増進することにある。開放的でかなりの人が納得する価値といってもよいだろう。主観的な価値を動機とする宗教団体は、これにより除かれる。また、めざす利益が開放的でない点で、業界団体なども除かれる。他方、介助サービスといった目的は、誰もが差別なく受ける機会が用意されれば、含まれる。もっとも何が客観的で、何が社会的価値かは、それ自体あいまいさを含んでおり、自然保護と開発利益のように、特定の社会的価値の追求が、それと相反する関係にある他の社会的価値の否定になるという微妙な問題を生じることもある。いずれにせよ、「社会をよくしよう」という動機に基づいて、社会の人びとに対し、実際に便益をもたらそうとするものでなければならない。 2)一定の規模と活動の拡がり、活動の有効性 組織の活動が客観的な社会的な価値として社会に作用を及ぼしている。端的にいえば、一定の規模と広がりをもって、現実に世の中の役にたっていなければならない。阪神・淡路大震災における一部のボランティアが結果的には有効に機能し得なかったことにみられるように、有益な「意図」が有益な「結果」を生むとはかぎらない。 3)意思決定の独立性 組織の意思決定が、一定のルールに基づいて行われており、企業、行政、政党や宗教団体など特定の主体の影響を受けないという保障がある。市民活動は、特定の人の呼びかけを核として生成・発展することが多いが、そこには何らかの合意形成のプロセスが保証される必要がある。組織におけるリーダーの役割を否定するものではないが、リーダーとは区分された組織の意思が確立していなくてはならない。 4)参加の自発性 参加が自発的な意志に基づいており、不特定の人に開かれたものである。ただし、目的に照らして一定の合理的な資格要件を求めることを妨げるわけではない。自発性という点からは、地縁関係を主とする自治会・町内会がどうかという問題がある。加入にあたって、自発性に基づくという原則が遵守されている限りはNPOに含める余地があろう。 5)活動の継続性 活動が継続的に行われていることを予定している。組織である以上当然ともいえるが、「実行委員会」といった一過性の目的による組織は、NPOから除いて考えることが適当であろう。 6)利益の非配当 非営利組織である以上、仮に寄付や事業収入が大きく増えて黒字を出すことがあっても、その余剰分は関係者の間で配分されることなく、目的とする活動のために再投資される。もちろん、経費として人件費は認められるが、しかし一般の勤労者からみて法外に高いものであってはならない。 なお、活動財源がどうなっているかは、ここでは捨象している。いわゆるヒモ付きでないかぎりは、活動の結果を重視するべきと考えられるからである。また、誰が組織したかということも同様である。行政や宗教団体が主導した組織であっても、その後に自律的な組織となっていれば、NPOとみてよいと考えられる。例えば、行政が主導して防災ボランティアを組織し、上の特徴をそなえた団体となったとき、それをNPOと考えても不自然ではないだろう。 上の整理を、第1章で述べたアメリカのサラモンの定義と比較すると、実質的に「形式性」が除かれている。任意団体が多いわが国の現状では、組織の形式性よりも実際の活動に着目した方が適当と考えられるからである。他方、動機とする価値と一定の効果が加えられている。 そのように理解することが、「世のために役だっている」という市民の感情にも即するし、行政としてもパートナーの基準として必要だからである。その他の項目も、行政の中立性や安定性という視点からのものである。 今回の調査団体のなかで、完全にこれらの性質をそなえている団体は多くはないであろう。 それぞれの項目も、明確な判断の基準があるわけでないから、団体のひとつひとつをみれば、微妙な点も出てくると考えられる。しかし、それぞれの性質の程度において、一応「NPO」らしさが認められれば、NPOと考えるべきであろう。「標準」と呼ぶのも、そのためである。 − 中 略 − 4.行政としての立場からの支援プログラムについて 行政が支援の対象とするNPOの要件として、1)目的とする価値の開放性、客観性、2)一定の規模と活動の拡がり、活動の有効性 3)意思決定の独立性 4)参加の自発性 5)活動の継続性 6)利益の非配当、が掲げられている。 地方分権の時代にあって、間近に迫った介護保険制度の施行や温暖化防止のためのアジェンダ策定など様々な活動分野におけるNPOの確立が必要とされているなかで、対等のパートナーシップによるまちづくりを推進していくためには、その人的・組織的基盤そのものを育成していく意識性をもつことがなければ、その地域や国家そのものが崩壊していくという危機感を行政側は持たなければならない。 その上で、行政システムとして支援プログラムを定式化するために、上記条件を実際に検証していく構造と同時に、有効性をもった支援のための施策を市民と共につくりあげなければならない。 − 中 略 − -第3章 第5節 2-- 2.日本の現状からみたNPOの区分 上で述べた6つの標準をそなえた活動をする団体が、行政のパートナーとしてのNPOである。 すなわち、社会的機能としては、不特定の人に対し実際に便益をもたらすことを意図し、一定の規模と広がりをもって、現実に継続して世の中に役立っている団体であること。また、組織的特性としては、参加主体が自発的な意志に基づき、意思決定が組織のリーダーとは区分されて確立している、非営利の団体ということができる。 こうした標準を満たすNPOは、さまざまな側面をもち、着目する視点により分類の仕方も異なる。しかし、今後、行政がNPOとの関係を模索するうえで、有効と思われる着眼点のひとつは、発展段階からNPOをみることにあると思われる。 (1)一般的NPOと萌芽的NPO 上記の6つの標準を満たす団体は、NPO的な社会機能特性、組織特性のいずれも兼ね備えた、ほぼ確立されたNPOとみなすことができる。これを、ここでは「一般的NPO」と呼ぶ。こうしたNPOは、行政施策過程である、計画、決定、実現、評価いずれの段階においても、NPO独自の機能を発揮できる可能性をもち、今後は行政施策を考えるうえで重要な存在である。 一方、現段階では6つの標準を満たさないが、一般的NPOに発展することが見こまれる集団ないし組織を「萌芽的NPO」と呼ぶことにする。この萌芽的NPOの具体的なイメージのために、次のようなモデル的な例を考えてみる。 行政が協力ボランティアを多数募った場合を想定する。集まったボランティアは当初は個別に行政とのみ接しているが、自然発生的に自分たちだけの集まりをもつようになる。それが定期化し、集団としての秩序と意思が生まれてくる。それがさらに進化して、行政とは独立した自主的な意思決定のメカニズムをもち、メンバー共通の目標が設定されるなど、組織としての安定度が増しつつある段階が萌芽的NPOである。人間にたとえれば、少年期といってよい。 さらに発展して、広域的なネットワークをもったり、政策提言をしたり、組織として業務の一部を受託することが検討されたりするようになれば、一般的なNPOということになる。 成熟した市民社会を形成する要素としてNPOが重要であるとの視点に立った場合、NPOがまだ未成熟であるといわざるを得ないわが国においては、この萌芽的NPOの存在もまた重要である。なお、第2章のアンケート調査で、任意団体の約3割を占めた「学習・サークル型活動」に分類された多くの団体が、この萌芽的NPOにあてはまると思われる。 (2)疑似NPO その社会機能および組織特性からみて、6つの標準をすべて満たしはしないが、広義にとらえるとNPO的活動を展開しているとみなすことができる場合があるため、これを「疑似NPO」と呼ぶ。 疑似NPOには、大きく3つの異なるタイプがあり、その第一は、公益法人のなかでも行政の外郭団体としての色彩が強い行政主導型組織である。自治体が設立した福祉や文化などの公社スタイルのものが多い。このタイプは、その設立事情からも、行政施策とは切っても切り離せないものである。 第二は、企業の外郭団体や業界団体などである。これらの活動は、企業活動とは切り離せない面もあるが、他方でNPO的な活動も行っており、その限りでNPOとして扱われるケースもある。 第三は、ふさわしいNPO法人格がないため、やむを得ず営利法人の形で活動を行っている場合である。今回の調査では、これらの団体は特にとりあげなかったが、文化分野や環境・まちづくり分野などにおいて、株主の間で一定の取り決めをして、非営利性を確保しようとしている団体もいくつか存在する。この種の団体は、中味はNPOでも、外形基準を重視する行政としては、NPOとして整理しにくい。NPO法などの制度の整備が待たれるところである。 また、「学習・サークル型活動」に含まれると思われる団体で、萌芽的NPOとの違いを明確に述べることは難しいが、活動する人たちの関心が内部にとどまり続けるような私的趣味団体は、NPOとしてはもちろん、疑似NPOとしても扱うことができない。 いずれにせよ、行政の視点に立てば、重要なのは組織のスタイルより、むしろ実際に社会に対してどういう価値を生み出しているかである。このようにみれば、NPO活動とは別の次元ではあるが、企業などの社会貢献活動にも、意を払いながら社会サービスの供給を考えていく必要がある。 − 中 略 − 上記分析のとおり、萌芽的NPOや擬似的NPOと「私的趣味団体」との見極める力が、支援する側に不可欠であり、その評価をする者の主体条件とは、本来の行政職員が持つべき「求めるべき市民像を体現する」というものだと考える。 |