朝日新聞天声人語



2000年1月18日  朝日新聞朝刊 より


 お金はお金だが、似て非なるものである。地域通貨と呼ばれる「もう一つのお金」が、広がるかもしれない。
 たとえば、滋賀県草津市で市民が自主管理する「草津コミュニティ支援センター」の事務局メンバーは昨年、「おうみ」という単位を考え出した。おうみは滋賀県の古名「近江」。1おうみを100円相当とし、1、5、10の3種類の紙幣を作った。パソコンで電子決済もできる仕組みだ。
 おうみを使いたい人は、自分ができることや、自分がして欲しいことを登録する。「保育します」「お年寄りの話し相手になります」「おふくろの味、わけて」「チラシを作って下さい」という具合。このリストをもとに取引が成立すると、おうみが対価として支払われる。

 円との違いは、地域限定という点にとどまらない。運営にあたる内山博史さん(28)によれば、できることを登録することは、その人が地域に「貸し」を持つことに等しい。「借り」から始めることも可。「先立つもの」は不要なのだ。中央銀行に代わり個人がそのつど通貨を発行していると考えればいい。

 第二。おうみには利子がつかない。だから宵越しの銭を持っても仕方ない。ためずに使え、である。

 第三。リストには価格が書かれていない。売る方ではなく、買う方が感謝とともに値決めする。経済的な「信用」よりも、社会的な「信頼」を尊ぶのだ。

 第四。従ってここでは投機が起こらず、バブルの心配もない。人々はもうけるためではなく、人の輪に積極的にかかわるためにおうみに参加すると、内山さん。「顔の見える市場」に集うのは50人。ゆっくりと育てるつもりだ。

 欧米では、世界市場の「強いお金」の猛威から地域経済を守り、文化の多様さを保つ役割が期待されて、つとに浸透してきた。民主主義の質を高めることにもつながるはずだ。2000円札よりは有望株である。








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